韓国ドラマ「ただひとつの愛」第1話（エピソード②）

韓国ドラマ「ただひとつの愛」第1話（エピソード②）


〇主な登場人物　
イ・ヨンソ（シン・ヘソン）
キム・ダン（エル）
チ・ガンウ（イ・ドンゴン）
クム・ニナ（キム・ボミ）
チョン・ユミ（ウ・ヒジン）
フ（キム・イングォン）
チェ・ヨンジャ（ト・ジウォン）
クム・ルナ（キル・ウネ）
パク・グァンイル（イ・ファリョン）
キ・ジュンス（イ・ジェヨン）
他

第1話（エピソード②）



　ヨンソの悲鳴にイ家のメイドたちは緊張した。外から庭から厨房からヨンソの部屋に向かって走った。
　イ家の主であるヨンソがとんでもない癇癪持ちだからだった。
　飼われている犬までも犬小屋から顔を出した。そっちに向けて吠えたてた。
　ヨンソの世話に明け暮れるチョ秘書もびっくりして目を覚ました。


　メイドたちが集まるとヨンソは1人ずつ目隠しをさせて歩かせた。ヨンソが始めたのは自分の部屋に侵入したかもしれない人間の犯人捜しだった。
　前方に置いた台座に身体をぶつけると下がらせた。
「次」
「はい、次」
　そこへガウンを羽織ったチョ秘書が駆けつけた。
「待ちなさい」
　怖い顔で腕組みしてるヨンソを見た。歩み寄って言った。
「何事だ？」
「犯人捜しよ」
　顔を背けてヨンソは答えた。
「そこにあるのを浴室の隣に置いて私を転ばせようとした」
　チョ秘書は台座に目をやった。
「誰も名乗り出ない」
「…」
「目の見えない人が転んだら死ぬこともある」
　ヨンソはステッキを両手で持ち、立ち上がった。
　メイドたちを睨みつけて言った。
「やった人はいないの？」
　メイドたちは下を向いて答えない。
「幽霊がやったってこと？」
「…」
「分かった。全員、辞めさせて」
　ヨンソは冷たく言い放つ。
　メイドたちの前に立った。
　ステッキで床を突いて右の者から順に数え始める。
「イチ、ニ、サン、シ」
「私です」
　1人が泣くような声で答えた。
「分かってたわ。安物のラベンダーの匂いがしてたから」
「衣替えの使ったのですが、しまい忘れて…」
　メイドはグスグスした声で答えた。
「理由なんか聞いてない。そんなことはどうでもいい」
　ヨンソはステッキで床をついた。
「ラベンダーはクビよ」
　ラベンダーのメイドはうな垂れて引き下がった。


　そこに軽やかな声が響き渡った。
「グッドモーニング」
「おお、チョン執事か」
「執事がいないから部下がミスするのよ。ここに泊まるようにしたらどうなの？」
　チョン執事は天井を見やる。ため息をつく。
「ヒステリーに耐えられないわ」
「…」
「チョ秘書はお嬢様をお好きのようですが―私は」
「嫌なのね」
「その通り」
　顔を寄せ、耳元に向けて答える。　
「今日の郵便物です」
　ヨンソは手にした郵便物を数える。
「5通」
　ヨンソから郵便物を自分の手に戻し、チョン執事は送り主を読み上げる。
「大学と協会からと寄付の通知なので不要ですね…」　
　おしまいの郵便物でチョン執事の手は止まった。
　”ファンタジア文化財団”となっている。
　チョン執事は微妙な間合いでチョウ秘書を見やった。
　チョ秘書は一瞬ためらった。
「ああ、水道代のお知らせか…」
　ヨンソはすかさず手を伸ばした。チョ秘書に渡った郵便物をつかみ取った。

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