雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「プレーヤー」(連載76)




韓国ドラマ「プレーヤー」(連載76)

☆主なキャスト&登場人物


○ソン・スンホン➡(カン・ハリ(チェ・スヒョク))
○クリスタル➡(チャ・アリョン)
○イ・シオン➡(イム・ビョンミン)
○テ・ウォンソク➡(ト・ジヌン)
○キム・ウォネ➡(チャン・インギュ)
○アン・セホ➡(メン・ジフン 係長)
○ユ・イェビン➡(チュ・ヨニ)



 プレーヤー」第6話→(俺たちの妹)⑥


★★★


 見せたのはアリョンの写真だった。
 院長の表情は瞬間揺れたようだった。それをハリは見逃さなかった。
 ハリは出された飲み物を口にした。ひと口飲み終わっても返事はない。
 ハリは切り出した。
「ヤクザとつるんでいるようで、捜しているんです」
「さあ~、初めて見ますが…」
「そうですか」
「…」
「当直の先生は”昨日来た”とおっしゃってましたが」
「…」
「勘違いですかね」
「待ってください」
 院長は携帯画像を見直す。
 顔を上げた。
「写真と実物はだいぶ違ってみえますね。チャ・アリョンですよね」
「…」
「ただ挨拶に来ただけです」
 携帯が返される。
「そうですか」
「…」
「何か、おかしな点はなかったですか? 例えば事故に遭ったとか同乗者がいたとか」
「車は見たんですが、そこまでは…」
「車ですか? バイクのはずなんだけどな」
 院長はハリを見た。
 ハリは彼の視線を堂々と受けた。
 院長の口が重くなったところでハリは話を切り上げた。
「ご協力、ありがとうございました」
 ハリは疑念を深めながら施設の建屋を出た。 


★★★


 ジヌンとビョンミンは施設の子らに差し入れをし、交流を楽しんでいる。
「賢くていい子ばかりだ」
「ありがとうございます」
 女の子が訊ねた。
「おじさんたちの仕事は?」
「俺たちの?」
 ジヌンは返事に戸惑う。
「俺たちは…」
 ビョンミンも思案に沈み、辺りを見回した。
「何というか一種の、そうだな…諜報員みたいなものだ」
 ジヌンが満足そうに指を鳴らす。
「アベンジャーズ?」
「カッコいいアクションのヒーローみたいな?」
 ビョンミンは頷いた。
「その通りだ。わっはははは―最近の子は賢いな」
「ほんとに?」
「スゴイ!」
「ほんとにほんと」
「もちろんさ。俺たちが活躍して、この国も」
 得意げにまくしたてようとするビョンミンに水をさした子がいる。
「ウソに決まってる」
 ビョンミンは思わずその子を見た。辺りを見て立ち上がる。
 その子の前にいって頭をコツンと叩いた。
「子供のくせに口の利き方が生意気だな」
 ジヌンを見て言った。
「この人は格闘技で最強で、俺はネットに強いんだ」
 ジヌンはその子に凄んで見せる。
 その子も反発する。
「でも不細工じゃない」
 ビョンミンは一瞬うろたえ、言葉を失う。ジヌンを指さす。
「こいつのことか?」
 男の子はビョンミンを指さす。ジヌンは大笑いする。
「お前も不細工だ」
「不細工じゃないよ」
 ビョンミンは子供相手にムキになる。
「不細工だ!」
「おい、相手は子供だぞ」
 食べ物を与えながらいう。
 別の子がジヌンを見て言った。
「僕はこっちの方が不細工だと思う」
 今後はビョンミンが大笑いした。 
「お前は食べるな」
 ジヌンはその子から食べ物を取り上げた。


 そこへハリが出てきた。
「そろそろ行こう。性格の悪さも露呈してるようだからな」
 子供たちはハリを見ていっせいに叫んだ。
「あのおじさんはかっこいい!」
 ジヌンは慌てて否定した。
「みんな、あの人は整形したんだぞ」
 ハリに歩み寄っていう。
「ウソつきだらけだ。おい、行くぞ」
「みんな食べろよ。また来るからな。お前は食べるな」
 そう言い残してビョンミンも2人の後を追う。




 施設を後にする3人にペク・ソンは冷たい目を送った。
 振り返るとナム社長が立っている。
「刑事なのか?」
「はい、会ったことがあります」
「…」
「その時もアリョンを捜してやってきて」
 ペク・ソンはクールな声で指示を出した。
「しっかり監視させろ」




 施設から出て来ながらハリは2人に言った。
「周辺の防犯カメラを探そう。何かある」
 車に乗り込んで走らせた。
 車を運転しながらジヌンは言った。
「こんな所にあるかな…」
「そうだな。車でも止まってれば車載カメラを確認できるんだが…」
 とビョンミン。
「ともかく探すしかない」
 ハリが言った。
「車を止めてくれ」
「どうした? 何か見つけたか?」
「何だ? リスでも見つけたのか?」
 ジヌンは車を右に寄せる。
 車が止まるとハリはすぐ外に出た。
 ハリが見つけたのは車の黒い轍だった。ハリは手指で黒いモノに触れてみた。それから辺りに目をやった。
 このへんで車の乗り入れている場所があるようだ。それも公共機関の…。その着想から防犯カメラを見つけた。
 公務員は公共的に高い地位の人物に弱い。ハリは検事を名乗ってカメラに収録された映像を見せてくれるように頼みこんだ。

「本当に検事なんですか?」
 ハリは冷静な口調で言った。
「疑い深いですね。電話して確認してください」
 ハリの堂々ぶりにジヌンとビョンミンは顔を青くした。
 


 その頃、メン係長はチャン検事にハリにまつわる情報を提出していた。
「詐欺師に関する情報です。また何かあったら報告します」
「おかしな点は?」
「特にありません」
「そうか。ごくろうさん」
 メン係長が引き下がった後、チャン検事に電話が入った。
 ハリからのメールだった。


―勘がいいから気をつけろ。


 慌てて携帯を閉じる。
「あいつ…どこかで見てるのか?」
 チャン検事は立ち上がり、ブラインドの隙間から外を窺う。誰も見当たらない。
 誰かにそれを尋ねた。
「外から誰か見てる者がいるか?」
「えっ?」
 とメン係長。
 女性職員がチャン検事に言った。
「3番に電話です」
「ああ、俺は何も見てない…?」
 あわてて話を中断する。

「ああ、はい。私がチャン・インギュですが…はい? 誰だって? メン係長? メン係長がなぜそこに…?」
 チャン検事はメン係長を見た。
 メン係長は手をあげる。チャン検事は彼を制した。
 ハリに何か複雑な事情が発生してるのに気づいた。相手に話を合わせだす。
「はい、私が行かせました。はい、ご協力をよろしくお願いします」
 チャン検事は受話器を置いた。
「成り清ますなと言ったのに…まったく、驚いたじゃないか」
 チャン検事は椅子に座り損ねて尻もちをつく。
「大丈夫ですか?」
 メン係長はびっくりして立ち上がる。 
 チャン検事は慌てて起き上がって答えた。
「いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」



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