雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「プレーヤー」(連載77)



韓国ドラマ「プレーヤー」(連載77)

☆主なキャスト&登場人物


○ソン・スンホン➡(カン・ハリ(チェ・スヒョク))
○クリスタル➡(チャ・アリョン)
○イ・シオン➡(イム・ビョンミン)
○テ・ウォンソク➡(ト・ジヌン)
○キム・ウォネ➡(チャン・インギュ)
○アン・セホ➡(メン・ジフン 係長)
○ユ・イェビン➡(チュ・ヨニ)


 プレーヤー」第6話→(俺たちの妹)⑦


★★★


 その頃、メン係長はチャン検事にハリにまつわる情報を提出していた。
「詐欺師に関する情報です。また何かあったら報告します」
「おかしな点は?」
「特にありません」
「そうか。ごくろうさん」
 メン係長が引き下がった後、チャン検事に電話が入った。
 ハリからのメールだった。


―勘がいいから気をつけろ。


 慌てて携帯を閉じる。
「あいつ…どこかで見てるのか?」
 チャン検事は立ち上がり、ブラインドの隙間から外を窺う。誰も見当たらない。
 誰かにそれを尋ねた。
「外から誰か見てる者がいるか?」
「えっ?」
 とメン係長。
 女性職員がチャン検事に言った。
「3番に電話です」
「ああ、俺は何も見てない…?」
 あわてて話を中断する。
「ああ、はい。私がチャン・インギュですが…はい? 誰だって? メン係長? メン係長がなぜそこに…?」
 チャン検事はメン係長を見た。
 メン係長は手をあげる。チャン検事は彼を制した。
 何か複雑な事情が発生してるのに気づいた。相手に話を合わせだす。
「はい、私が行かせました。はい、ご協力をよろしくお願いします」
 チャン検事は受話器を置いた。
「成り清ますなと言ったのに…まったく、驚いたじゃないか」
 チャン検事は椅子に座り損ねて尻もちをつく。
「大丈夫ですか?」
 メン係長はびっくりして立ち上がる。 
 チャン検事は慌てて起き上がって答えた。
「いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」


★★★


 ハリたちは某公共機関の周辺に設けられた監視カメラの映像を巻き戻して確認させてもらう。
 映像を操作しながらビョンミンが言った。
「昨日の車だ」
「そうだ。間違いない」とジヌン。
 走ってきて止まった車から1人が車外に放り出された。
「何をやってるんだ」 
 ビョンミンは映像を停止させる。
「どこかで見た顔だ」
 停止画像を見ているうちに言った。
「運転手はアリョンじゃないか?」
「本当か?」
 ジヌンもモニタに目を近づける。
「まさか…違うだろう」

「違うかな…違う気もするけど…そんな気も…」
「もっと拡大できないのか?」
「できないよ」
「どうして?」
 ビョンミンは指先を広げたり縮めたりする。
「ならないだろう? スマホじゃないんだ」
 後ろで腕を組んで眺めていたハリは、壁に貼り付けられた拡大地図を指さして訊ねた。
「これには何が?」
 職員は答える。
「近隣住民も行かない場所です」
 特定地点に指をあてた。
「こっちは個人所有の別荘で、ここから南下すると児童養護施設があります」
 ハリは職員を見た。
「ヨンソンですか?」
「よくご存じで」
 ハリは小さく頷いた。




 3人は監視カメラの映像確認を終えた。車に向かって先を歩く二人にハリは言った。
「カメラに映ってたやつらを調べろ。ペク・ソンの手下だろう。後で会おう」
「どこに行くんだ?」とジヌン。
「確認したいことがある」
 ビョンミンはジヌンに向かっていう。
「調べろ…お前が調べろよ」
「そうだ」
 行きかけたハリは振り返る。2人に歩み寄る。
「アリョンのことをどう思う?」
「アリョン?」
「何かあったのか?」
「あるいはな…」




 離れた場所からいろいろと嗅ぎまわるハリたちをマークする車がある。
 ペク・ソンの指示を受けてナム社長の放った見張り役だった。
 男はハリたちを尾行してナム社長に細かく報告を続けた。
 


 アリョンはヨンジの前で見せしめの仕置きを受けた。
 ヤンテはアリョンをさんざん痛めつけてしゃがみ込んだ。
「おい」
 顔を近づけた。
「社長のお気に入りだからってなめるなよ。運転が出来なければお前もこいつと同じだ。わかるか?」
「分かってるからカッコつけないで」
 ヤンテは笑い出す。仲間を振り返る。
「おい聞いたか。だってさ」
 カラカラ笑う。
「頭のおかしい女め」
 思い切り平手打ちを食わせる。手を縛られて自由の利かないアリョンを床に身体を打ち付ける。痛みにこらえながら身体を起こす。
「だから、お前が嫌いなんだ」とヤンテ。「自分だけ、義理堅いふりをしやがって。お前といるとムカムカした気分にさせられるんだ」
 力づくでいたぶられてもアリョンは負けていない。
「あなたが嫌なやつだからよ」
「…」
「やることもないから若い子に手を出してる」
 ヤンテはにじり寄った。顔を突き出した。
「それがどうした?」
「…」
「言っておくが」ヤンテは後ろのヨンジを見た。「俺が呼んだわけじゃない」
 ヤンテはニヤリとした。
「何ですって?」
 思わずヨンジに目をやる。ヨンジはアリョンから目を背けた。




 あの日の朝―ヤンテに近づいたのはヨンジの方だった。
「アリョンを訪ねて来たんでしょ? 仲間にしてくれたら手伝うわ」
 アリョンに電話を入れて、アリョンを電話で呼び出したのは芝居だったのだ。 
 ”姉御、助けて! すごく怖いの。助けて!”と。
 電話の横でヤンテはにんまりしながら2人のやりとりを楽しんでいたのだ。
 ヨンジが叫んだ後、ヤンテは携帯を受け取った。
 ”もう、分かるな?”とやったのだ。
 アリョンは2人の芝居にまんまと乗せられたのだった。




 悔しがるアリョンを見てヤンテは笑った。指先を振って言った。
「いいか。現実のこの世界に義理なんてないんだよ」
 その時、舎弟分が携帯を差し出す。
「電話です」
「おお。何だろ」 
 ヤンテは携帯を受け取る。
「はい、社長」
「面倒なやつらがいる。静かに片付けろ」
「分かりました」
 ヤンテは携帯を返す。アリョンを見る。
「また、後でな」
 すごみを利かせて立ち上がる。舎弟らを促す。
「行こう」
 


 ヨンソン児童養護施設の箱型の小型トラックが走り過ぎる。
 ハリは横合いでそれをチェックする。
 接見した院長はアリョンを知っていた。車を運転してる女がアリョンだったなら、姿を消したアリョンはあの男とつながってる線が濃い。
  アリョンは近くにいる。
 ハリは横合いから車を出した。




 時間は過ぎた。




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