雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載191)

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 韓国ドラマ「病院船」から(連載191)




「病院船」第18話➡医療空白④


★★★ 


 船長を含め、病院船のスタッフはすべて船からおりた。彼らは桟橋に残ったまま岸を離れていく病院船を見送った。 
「船はどこへ行くんですか?」
 事務長の質問に船長は答えた。
「官用船のドックで点検を受けるんだろ」
「点検した後はどうなるんですか?」とジョンホ。「修理して他の用途に使うんですか?」 
 この質問に船長は答えられなかった。
「私たちはここへ戻って来られるのかしら」とアリム。「もう一度、病院船に乗って―島を回りながら、患者を診療することができますよね?」
 ウンジェを見た。
 ウンジェも答えられない。だが、それを諦めるつもりはない。
 ヒョンはじっと病院船の航路を目で追い続けた。
 ウンジェも病院船を和らいだ表情で追い続けた。


― 島の人たちのためだけでなく、自分らしく生きるために私はここへ戻って来たい。


★★★


 船長、事務長、ゴウンの3人は道庁の前に立った。断固たる思いで道庁を睨みつけた。
 課長に談判して何としても病院船の存続を勝ち取るつもりだった。
「病院船の運航中断は不当です! 知事との面談を求めます」
 3人の訴えにいつかの課長が出てきた。
 船長は言った。
「なぜ、面談を拒むのですか。拒む理由はなんですか?」
「出張中なんです」
「さっき、姿を見ましたよ」とゴウン。
「見間違いでしょ」
「それはないでしょ」と事務長。
「どうぞお引き取りを。しつこいと警備を呼んでおいだしますよ」
 この時、事務長の携帯が鳴った。
 かけてきた相手は”ソンヒ”だ。顔を上げると知事の姿が見えた。
「あそこにいるぞ」

「知事!」
 船長らは駆け出そうとする。
 課長らに阻まれるが声は知事に届いた。
 知事は船長らを振り返る。
 ゴウンらは叫ぶ。
「病院船の運航を許可してください!」
 しかし知事は3人を一瞥して歩き去る。 
 事務長らはその背に向かって叫んだ。
「話し合って~、我々に非があれば諦めます~っ!」
「知事~っ!」
「どうか、お話を~っ!」
 3人の必死の祈りも通じなかった。
 相手にされなかった3人は、階段に座り込んだ。
「これから、どうしますか?」
「会ってくれるまでまつしかないさ」と船長。
「ダメなら座り込みだ」と事務長。
 事務長の電話がまた鳴った。
 ”ソンヒ”からだった。
 事務長は一瞬、目をつぶった。
「私だが、今は話せない。かけなおす」
「何の話? 話せばいいのに」とゴウン。
「電話してる場合じゃないだろ」
 3人はほぼ同時にため息をついた。
「まいったな…」




 ウンジェは新生児室へやってきた。
「どうですか?」
 付きっきりの産科医に訊ねる。
「昨日とは違って、今日は辛そうにしてるわ…」
 ウンジェは指を入れた。乳児はその手に握りかけてくる。
 母親が入ってきて言った。
「そこで何を?」
 母親は産科医を睨みつけた。
「この人のせいで娘は苦しんでるんです」
 産科医は言った。
「お母さん、なぜソン先生を責めるんですか。彼女のミスで重体になったとは断言できません」
「では、あなたのせいですか?」
「いいえ、私が言いたいのは…」
「いいんです」
 ウンジェは説明を続けようとする産科医を制した。
「すみません」ウンジェは頭を下げた。「お邪魔しました。私は失礼しました」
 ウンジェは産科医に軽く会釈して出ていった。
 母親は複雑な表情で我が子の前に立った。




 新生児室を後にしたウンジェの携帯が鳴った。
「今、どこだ?」
「救急室です」
「院長室へ来てくれ」


「今、何とおっしゃいましたか?」
 院長の話にウンジェは訊ね返した。
「この病院を辞めろと言った」
「どうしてですか?」
「最近、君のことがマスコミに取りざたされて―悪評が飛び交っている」
「ですがそれは」
「悔しいのは分かる。先方がどう出るか分からないが、法廷で争えば、ソン先生の勝つ確率はかなり高い。医者や専門家の多くはそう考えている」
「でしたら、なぜ…」
「大衆はマスコミを信じる。治療を受けるのは医者や専門家でなく一般人だ」
 ウンジェは目を落とした。
「つまり、私に退職を促す理由は―病院のイメージを守るためだと?」
「……ああ」
 キム・スグォンは席を立った。封筒を取り出した。
「3か月分だ。3か月後には人々も忘れる」
 ウンジェは顔を上げた。
「噂が下火になったら、他の病院にでも就職しろ」
「…」
「君なら引く手あまただ」
 ウンジェは立ち上がった。
「これは院長のご意向ですか?」
 キム・スグォンは振り返る。
「なら、誰の意向だと?」
 そう答えて目を背ける。
 ウンジェは頷いた。
「決定に従いますが、後任が見つかるまで勤務を続けさせてください」
「…」
「急患が押し寄せ、カン先生だけでは手に負えない状況です。ですから」
「心配は要らない。後任はもう決まった」
 この時、カン・ドンジュンが誰かを連れてやって来た。
「院長、ミョン・セジュン先生です」
「ようこそ」
 ウンジェは彼を見て言った。
「後任はミョン先生ですか?」
「ミョン先生に引き継ぎをして―君は今日付けで辞めてくれ」
 
 ウンジェと一緒に部屋を出て来ながらミョン・セジュンは言った。
「強がってたくせに病院船も守れないのか」
「…」
「再開の見込みは? 俺はいつまでここに?」
 2人は椅子を見つけて座った。
「それは私じゃなくて、ドゥソンに聞いて」
「見込みはないだろうな…遠隔診療法案を通過させるのに、邪魔となる病院船を会長が放置するわけない」
「…」
「だが、救急室まで辞めさせるとはひどいもんだ」
「…」
「行く当てはあるのか?」
「探して見ないと…」
「キム・ドフン科長が君を心配して―チャン・ソンホ本部長に君を呼び戻すよう働きかけてる」
「ドゥソンが嫌がる…でしょ?」
「いや、歓迎するはずだ」
「…」
「君が地方に飛ばされた時、本部長が科長を叱ってた。”商売人は敵も抱き込むべきだ”なので、”裏切者も抱き込め”だ」
 ウンジェは鼻を鳴らして笑った。
「君は病院船側の人だから遠隔診療の敵だろ。歓迎されるさ」
 ウンジェは呆れてセジュンを見た。
 セジュンはウンジェの気持ちにお構いなく言った。
「敵を側近にしたいはずだ」
「…」

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