雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「プレーヤー」(連載66)




韓国ドラマ「プレーヤー」(連載66)

☆主なキャスト&登場人物

○ソン・スンホン➡(カン・ハリ(チェ・スヒョク))
○クリスタル➡(チャ・アリョン)
○イ・シオン➡(イム・ビョンミン)
○テ・ウォンソク➡(ト・ジヌン)
○キム・ウォネ➡(チャン・インギュ)
○アン・セホ➡(メン・ジフン 係長)
○ユ・イェビン➡(チュ・ヨニ)






 プレーヤー」第5話→(仲間とは何か)⑦


★★★


 ハリが姿を消した後、ヨニはしばらくその場所を動かなかった。
 半年前の記憶に浸っていた。
 ハリはいつもふいに姿を現した。
「まったくもう、来るなら先に連絡してよ」
 しかし、その日のハリは顔にケガをしてて様子がおかしかった。
「ハリ、どうしたの?」
 ハリは自分を見ると安心したように身体を預けてきた。
「ハリ、大丈夫? しっかりして」
 意識朦朧のハリは腹部に大量の血を滲ませていた。何とか診察ベッドに連れて行った。
 衣服を脱がせると左腹部に刃物の裂傷があった。幸い、内臓に損傷はなく裂傷部を縫って命は取り留めた。
 その時、上着の中の持ち物を見てハリがどんな人生を送っているのかを知った。偽りの名刺を幾種類も作り、危ない橋を渡って生きていたからだ。
 あの日もトラブルを引き起こし、大けがにつながったのだ。
 意識を回復したハリはベッドをおり、ヨニのもとに顔を出した。ヨニはハリの名刺を並べて涙に暮れていた。
「私はあなたが怖い。あなたは誰なの? うちの父を捜すために私を利用してるの?」
「…」
 ヨニは声を振り絞って叫んだ。
「どうなの? 違うなら何とか言ってよ」
 ハリは何も言えなかった。黙っていることしかできなかったのだった。


★★★


 洗濯物のパタパタ鳴る音でアリョンは目覚めた。
 見るとヨンジは洗濯物を干している。
 アリョンは身体を起こした。
 部屋も片付けたらしい。
「どおっ、使い物になった?」
 食事まで用意してある。
 アリョンはヨンジのいじらしさにため息をつく。
 しかし、鬼になってヨンジを外に追い出す。


「わかったよ。もう行くってば」
「いいわね。施設にもどるのよ」
「分かってる―でも、たまに連絡してもいい?」
「しないで。出るつもりないから」
 アリョンはそう言って中に入り、ドアをロックした。
 ヨンジはやむなくアリョンの部屋を後にした。


 しかし、階段をおりると昨日の男の姿がある。
 彼はヨンジを見てニヤリとした。


 部屋に戻ったアリョンは昨夜のヨンジの寝言を思い起こした。それは施設時代の自分の記憶と重なるものだった。
 ヨンジは母親を恋しがる夢に魘されていたのだった。


 テーブルの上に携帯が乗っている。ヨンジが忘れていったものだ。
 アリョンは携帯を握って部屋を出た。
 階段まで歩いて辺りを窺うが、ヨンジの姿はみあたらない。
 アリョンはため息をつく。
「面倒を賭けるわね…」
 アリョンは着替えるために部屋に戻った。




 パソコンのモニタを付けたまま寝ているビョンミンの携帯が鳴った。
 アリョンからだった。
「何だよ」
 面倒臭そうな声で応接する。
「…お前のせいで徹夜なんだぞ―声が変だって? 事務所が乾燥してるから」
「…」
「それで? 誰だって? ピョン・ヨンジ? その子を捜してやったら俺には何を…」
 電話は切れた。
 ビョンミンは携帯を放り出す。
「わがままなヤツだ。日に日にひどくなってる」
 身体をおこしかけてやめる。
「いや、やらないやらない」
 ビョンミンは椅子に身体を沈めた。




 アリョンはヨンジを捜してオートバイを走らせた。
 ヨンソン児童養護施設だった。アリョンは施設の院長に話を聞いた。
 ヨンジの話に院長は答えた。
「僕も2年くらい会ってないんですよ。あなたにはここに戻ると?」
「はい」
「ヨンジとは―どんな関係なんですか?」
「ただの知り合いです」
 院長はコーヒーをひと口飲んだ。
「いなくなった後―捜索願いも出して、ずいぶん捜しました。問題を起こすこともなく、”パパ”と懐いていたので」
「他の子もそう呼んでますよね」
「そうなんです。他の施設もたぶんそうでしょう」
「私たちは違ったわ」
「私たちですか…?」
「いいえ、別に…」
「ひょっとして…あなたも施設で?」
 アリョンは小さく頷く。
「だから、心配なんですね」
「私も9歳の時に逃げたんです。外の世界は違うと思って」
「そうですか…心配いりません。ヨンジは戻って来ます」
 院長はマグカップに手をやった。
 アリョンは施設を出た。



「ハリ、ちょっと見てくれ」
 ビョンミンは言った。
 雑誌に見入ってハリは返事しない。
 ビョンミンはハリの手から雑誌を飛ばした。
「ちょっと見てくれって」
「どうだ、カッコいいか?」
 ビョンミンはスーツ姿でくるっと回転した。
「キャバレーにでも踊りに行くのか?」
「もうっ、お前は分かってないんだな。お前こそまるで鳩だ」
「…」
「いつも白ばかりでファッションを分かっていない。お前に聞いた俺がバカだったよ」

 そこにジヌンがハムと野菜の炒め物を作ってやって来た。
「おお、来たか。食べ過ぎで卵を産みそうだよ」とハリ。
「今日は油をつかった」
「アリョンにメールするよ」とビョンミン。
「そうか」
「来る時にトンカツを…と」
「おい」
 ジヌンは怒った。
「味見くらいはしろよ」
 箸につまんで差しだす。
 ビョンミンはジヌンんの手を払った。
「人間の食べ物じゃない」
 その時、アリョンも姿を見せた。




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