雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(46)




韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(46)


「病気か? 自信過剰だ」
 ジェヒは訊ね返した。 
「・・・」
「行為をすべて愛情だと思うのか?」
 クムスンは突っ張った。
「じゃあ、そんな大金をなぜ私に?」
「・・・」
「正直言って――おじさんは善良で親切でもないじゃないですか」
「・・・」
「違うの?」
「・・・じゃあ、一つだけ約束しろ。訴えないと」
「訴えるって・・・何をですか?」
「約束したら話す」
「約束するって、訳も知らずに何を約束するの?」
「じゃあ、するな。俺も話せない」
「わかったわ。話してみて」
「実は・・・スクーターと接触した時、全治4週だった」
「・・・?」
「骨折は小指だけで、他にはひびが入ってなかった。しかし、俺が言い方を間違い、後輩が――誤った診断書を書いてしまった」
 クムスンの顔は厳しくなってきた。
「俺はそれを知らなかった。知ったのは次の日だった。それはすぐ警察署に連絡されてしまった。申し訳なかった」
 クムスンは眉間にしわを立てた。ジェヒを睨み付けて言った。
「それが謝ってすむことなの?」
「故意じゃなかったさ。俺もそれを知ってとても驚いた。だから・・・示談金と治療費は俺が持った。もちろん罰金も払ったし・・・」
 クムスンは叫んだ。
「それで要求なんかしたら、医者の資格なんてないわよ」
 ジェヒは下を向いた。
「確かにそうだ。俺が悪かった」 
「あの日、警察で――孤独で怖くて・・・辛かったのに・・・」
 クムスンは怒りと哀しみの混じった目をジェヒに向ける。
「どうしたらいい? もしも許せないなら訴えてくれ。公文書偽造で・・・その方法がいちばん気持ちが晴れるはずだ」
「おじさん、それがどうしたっていうの! まずは心から謝るのがさきでしょ?」
 クムスンは怒りに唇を震わせた。
「ほんとの気持ちだ。だから、正直に話したんじゃないか。一生、隠せるのに――こんなことをして何になるのだ?」
「・・・」
「俺も人間だ。自分の過ちを認めたくなんてないさ」
 クムスンは恨めしそうな目をジェヒに向け続ける。
「そんな風に見ないで・・・俺をどうしたいか決めてくれ。それに従うから」
「・・・わかったわ」
 クムスンはジェヒをキーッと睨み付けて行こうとする。
 ジェヒは呼び止める。
「白菜、どこに行く! 何か言えよ」
 クムスンは足を止めた。
「訴えに警察へ行くのよ」
「警察? 本当にそのつもりか?」
「決ってるじゃない」
 クムスンは口を結び、憎しみを覗かせてからジェヒに背を向けた。
「おい!」ジェヒは叫んだ。「一度くらい許してくれてもいいだろうよ」
 
 ジェヒは気分をムカムカさせながら部屋に戻った。イスに身体を落ち着かせると大きく息を吐いた。

 気持ちを落ち着かせながらクムスンはエレベーターを待った。
 ほどなくエレベーターはやってきた。
 ドアが開き、ヨンオクがおりてくる。
 ヨンオクをやり過ごしてクムスンはエレベーターに乗った。
 二人はまだお互いについて知らない。

 クムスンはキジョンの部屋のドアを叩いた。
「来たか、いらっしゃい」
「遅くなってすみません」
「そんなことはない。座って」
 クムスンは長椅子に腰をおろした。
「おばあさんの検査結果です」
 キジョンはクムスンに検査票を見せた。
「特に問題はなく良好だよ。ただ、血圧だけが少し高めだ」
 大した問題ではないとキジョンは説明した。しかし、再検査は必要だ、と続けた。
「再検査を受ければ薬が処方される。薬は必ず飲み、定期的に検査を受けていれば問題はないよ」
 キジョンの説明を耳に入れ、クムスンが席を立とうとしていたらドアが鳴った。
 部屋に入ってきたのはヨンオクだった。
 妻と知ってキジョンはうろたえた。クムスンが来ているからだった。
「あら、お客様だったのね」
「ああ・・・どうしたんだ?」
「ごめんなさい。あなた一人だとばかり・・・ご迷惑だったかしら?」
 クムスンは首を振った。
「もう、帰るところでした。奥様ですか?」
 動揺を見せながら、キジョンは頷く。
 ヨンオクには夫のその態度が解せない。
 クムスンに挨拶され、ヨンオクは会釈を返す。
 キジョンにも丁寧に挨拶を残し、クムスンは部屋を出て行こうとする。
 ヨンオクの傍らを通り過ぎてから、クムスンは振り返る。ヨンオクのそばに立つ。
「あの・・・とてもきれいな方ですね」
 ぺこりと頭を下げて部屋を出ていった。
 そんなクムスンを印象に残したヨンオクは夫に訊ねる。
「誰? 学生じゃないわよね」
 キジョンはうまく答えかね、話題をそらした。
「どうしたんだ、急に?」
「誰かって聞いてるのに、話をそらすなんて変な人ね・・・誰なの?」
「偶然、知り合った子だ。健康診断の結果が出てここへ来たんだ」
「そうなの・・・薬がなくなったので取りに来たわ」
「それなら俺に電話すればよかったのに」

 クマはカフェルームで物思いに耽った。
 このところずっと悩みを引きずっている。いや、悩みというよりはためらいを引きずっている。
 その店はテワンが仕事を始めた店だった。
 テワンが出勤してきてマスターに挨拶する。
「来たか。10分遅刻だぞ」
「分かってます。10分長く働きます。着替えてきます」
 この時、窓辺で座ってるクマがテワンの目に止まった。テワンは首をかしげる。見たことのある女だがどうしても思い出せない。
「どこで会ったんだっけ?」
 思い出せないので店を歩いていきだすと、店に来ている女たちがテワンを見て話題にした。
「ね、あいつ、けっこうよくない?」
「すごくハンサムね」
「あいつ、何歳かな?」
 テワンは女たちを振り返った。
「あいつじゃなくてさ・・・お兄さんは26歳だ」
 女たちは手を叩いて喜んだ。
「カッコいいわ~」
「気絶しそうよ」
 テワンはにんまりしながら奥に入っていった。

 ピルトが帰ってくるとジョンシムは掃除をしていた。
 ジョンシムは3ヶ月分の汚れがたまっているとピルトにいう。
 一度に無理するなとピルトは応じる。
 ジョンシムはシワンがクムスンに大金を貸した話を知ってるかどうかも訊ねる。
 自分だけ除け者になっているのかと考えて訊ねたようだが、ピルトにも預かり知らぬ話だった。
 ピルトは足も治ったことだし、映画でも一緒に見に行こうと誘う。
 二人は映画を見に出かけた。久しぶりに手をつないで歩いた。
「あら、いい匂いだこと・・・」
 辺りにはライラックの匂いが立ち込めていた。

 仕事の帰り、クムスンは靴屋に立ち寄った。
 ジョンシムにプレゼントするためだった。

 仕事から帰ってきたスンジャはきつかった仕事の愚痴を並べた。給料が多いだけのことはある、と疲れた顔で言った。
 やがてクムスンが姿を見せた。
 ジョムスンは彼女に、うっかり口をすべらせ、シワンに大金を借りた話をジョンシムに知られたのを話した。
「お前がちゃんと話しておいてくれなかったからそうなった」とジョムスンはクムスンに言った。

 シワンとソンランは寄りを戻し再びデートを重ねるようになっている。
 しかし、二人の恋愛観には少々ずれがある。
 シワンは二人の関係に結果を結婚に結び付けようとしている。しかし、ソンランは違っている。結果よりは今を大事にしようとしていた。
 二人の議論は平行線をたどり、なかなか収まりがつかない。

 映画館に入ったピルトとジョンシムは一人で映画館にやってきたオ・ミジョを見つけ、二人で悦に入った。
 
 
 仕事の帰り、テワンはクマを取り囲んでカツアゲをやっている少年たちにきついお灸を添えた。
 少年たちを行かせた後、テワンは気取った言葉をかけ、行こうとする。そんなテワンにクマは声をかける。
「フィソンの叔父さん?」
 テワンはびっくりしてクマを振り返る。体裁が悪いので知ったか振りで通そうとするが、クマはそんなテワンを見抜いて愉快そうにした。
「私はクムスンの従姉妹のクマです」

 クムスンはジョンシムに靴のプレゼントを買ってきた。ジョンシムは嬉しそうにするが、気に入ったかどうかはわからない。顔を出したテワンはその靴を見てセンスが悪い、という。

 ウンジュはジェヒを呼び出し、ワインを一杯飲んで切り出す。
「ジェヒさん、食事の後映画でも見る?」
「家に帰る」
「それじゃあ・・・私と結婚、それとも婚約?」
 ジェヒは手を止めた。
「私と結婚しよう。私はあなたと結婚したい」
「おい。俺は当分結婚する気はない」
「それじゃあ・・・結婚は私とするよね。だったら婚約しよう」
「先のことはわからな」
「それじゃあ、私と結婚しようとは・・・一番」
「お前との結婚以前に、結婚を考えたことはない」
「じゃあ、日曜日までに考えて」
「突然、どうした?」
「突然じゃないわ。そう聞こえた・・・? そろそろ家族の距離を考えてみるわ」
「・・・」
「私の考えてる最高の独立は――あなたと結婚して家を出ることなの」
「・・・」
「ダメならアパートでも借りるわ」
「本気で言っているの。真剣に考えてほしい」



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