ビル・ゲイツを興奮させた日本の次世代原子炉、原発事故で停滞 中国など猛追で「命取り」
2014.9.18 10:33 (1/3ページ)
「ワオ!」
興奮した米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の姿を、東芝関係者は鮮明に思い出す。平成21年11月9日、ゲイツ氏は原発の設計を行う「磯子エンジニアリングセンター」(横浜市)などを極秘で訪問した。ゲイツ氏は自らが出資する次世代原子炉開発のベンチャー企業「テラパワー」の会長として、東芝が開発する次世代原子炉「4S」の視察に訪れたのだ。
4Sは、1万~5万キロワットと小型だが、燃料交換なしで10~30年連続運転できるのが特徴だ。突然、電源が使えなくなった場合でも原子炉が自動停止し、自然に炉心が冷やされるなど安全性も高いという。東芝・電力システム社原子力事業部の尾崎章技監は「現時点でも実用炉の建設は技術的に可能だ」という。
テラパワーが開発を進める「進行波炉(TWR)」と呼ばれる次世代原子炉も、4Sと酷似した仕組みだ。最長100年間燃料交換せずに運転が可能なほか、炉内のメンテナンスがほとんど不要で、緊急時には原子炉が自然に停止する。ゲイツ氏らテラパワーのメンバーは「これまで原子力を勉強してきた中で最も革新的だったのは東芝の4Sだ」と絶賛した。
東芝とテラパワーは秘密保持契約を結んでおり詳細は不明だが、東芝関係者は「4Sの技術をTWRに転用することを検討している」と打ち明けた。
現在、世界では「第4世代」と呼ばれる次世代原子炉の開発計画が進んでいる。原発は開発初期の「第1世代」▽1960年代後半~90年代前半に建設された「第2世代」▽90年代後半~2010年ごろまでに運転を始めた「第3世代」-と、安全性向上などの進化を続けてきた。
第4世代は2030年代以降に実用化の見通しだ。テラパワーのTWRをはじめ、複数の次世代原子炉の研究・開発が進む。
日本で第4世代の“本命”と位置づけられてきたのは「高速増殖炉」だ。消費した以上の核燃料を生み出す高速増殖炉は「夢の原子炉」だが、研究段階である原型炉「もんじゅ」(福井県)はトラブル続きで長期停止状態にある。
東京電力福島第1原発事故後は先行きが見えず、もんじゅは与党内でも「完全撤退」との意見が根強い。
■ ■ ■
原子力に逆風が吹く中で、日本勢は高速増殖炉開発で培ってきた技術の維持に向けて取り組んでいる。日本原子力研究開発機構と三菱重工業などは、仏原子力大手アレバなどと次世代炉の開発協力で合意した。フランスが進める次世代高速炉の実証炉「アストリッド」の開発計画に参加し、日本が持つ技術を活用するという。
また、政府も東日本大震災以降滞っていた次世代原子炉「高温ガス炉」の研究炉を来年度にも運転再開し、研究開発を本格化する方針だ。
三菱重工幹部は「国内での次世代炉開発は不透明な状態にある。将来に向けて力を蓄える必要がある」と意義を説明する。同機構の佐賀山豊特任参与は「われわれにとっても技術の維持につながる」と強調した。
ただ、次世代炉をめぐっては、ロシアや中国、インドなどが実用化に向けて研究・開発を行っている。経済産業省の資料によると、高速炉でロシアが2025年に商用炉の運転を開始、中国が30年ごろに商用炉を導入する予定だ。日本が次世代炉の開発で手をこまぬく間に、技術的な優位が失われる恐れもある。
「数年の断絶が命取り」
原子力の研究者らはこう口をそろえる。エネルギーの安定確保と安全性の両立に向けた技術開発の灯を絶やさぬことが、日本の国際競争力維持には不可欠だ。経産省幹部は、次世代炉開発が日本のエネルギー政策に与える意義を強調した。
「日本としての選択肢を数多く持っておくことは、将来のために欠かせない」
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太陽光発電装置を何百万も投資して設置した人は残念でしょうね。