著者のおおぎやなぎちかさんは、私の俳句の先生、北柳あぶみさんのペンネームです。
俳人であり児童文学作家としての、真骨頂といえる作品でした。
小学3年生の子どもたちが、俳句をつくる設定なのですが、さすが俳人であるおおぎやなぎさんの作品です。
さくらから声がきこえてくるみたい
私は、この本で詠まれる俳句のなかで29ページにある俳句、これが一番、好きです。
子どもごころが、すごく感じられる。
後藤竜二氏が、『おにいちゃん』という幼年物を出版されたとき、私は「60も過ぎたおっさんが、よく6歳の子どもを描けるね〜」と言ったら、後藤さんは「60歳が6歳になれなかったら児童文学の作家じゃないよ」と笑ってましたが、本当に、そうです。
この俳句がまさに、小学3年、9歳か10歳の女の子、そのものを感じます。
物語の展開は、俳句をめぐって、紆余曲折があります。
その紆余曲折の展開の仕方が、これまた作家おおぎやなぎさんの児童文学作家としても世界観がよく表れているのだと思いました。
いわゆる盗作問題が生じるのですが、読んでいる私は、この問題をどう解決するのかなと、大人の下世話感満載で、気になるのです。
ところが、
盗られた子、意図せず盗んでしまった子、二人の対峙は、それぞれの言葉が率直で、真っ直ぐなのです。
物事の解決というのは、本当に、手練手管はいらない。
率直であり、真っ直ぐに向き合うことなんだと、実感させられます。
二人を見守っている大人の薫子さんの立ち位置も、とても良いです。
このコロナ禍の閉塞状況のなかで、読後、今は秋の始まりなのに、まる春のような、心がポッと明るくなる思いがしました。
そして、最近の若い人たちの俳句でも感じるのですが、俳句にも手練手管は無用で、率直な真っ直ぐな言葉で詠まれる俳句が多いように思います。
俳句が好きな大人にとっても勉強になること間違いないです。
後書きに、俳句のコツの伝授がおまけに記されています(^_^)v
薫子さんの俳句
死ぬときは再会のとき花いかだ
これは、ここ10年以来の私の心境と、まったく同じでした。