読了。
詩のようでもある独特の文体と、独特のストーリーだった。
言葉を失った女性と、光を失いつつある男性との、静かで長い物語でした。
二人の過去と現在を、それに伴うそれぞれの思いが綴られる。
二人は、既に失われた言語古代ギリシャ語の、教師と生徒である。
しかし主題は、喪失感ではない。
その回復譚でもない。
時間が動いているということを、実感はするのだけれど、雨も降り、風も吹くのだけれど、なぜか、とても静かで長く感じる時間の、物語なのです。
いわば、違和感と親和感が、表裏なのではなく、まさに同一な場所にあるのです。
内容にも惹かれ、文体にも強く興味を抱き、あっという間に読んでしまった。
韓国の文学の根っこにあるものは、詩文なのだろうか。
和歌や散文、それと日記文学の日本文学とは異なる文学的な経験値があるような気がする。
<追記>
印象的だった文章。
P.208 1行目
雪が空から降りてくる沈黙なら、雨は空から降りてくる終わりのない長い文
章かもしれない。