2011年のことだから9年前だ。改革指向の市民団体出身である朴元淳(パク・ウォンスン)「人権弁護士」がソウル市長に当選した。多くの人々は彼が普段主張していることをそのまま実践するだろうと期待した。誰もがそうするだろうと強く信じていた。地方自治体の中で初めて「性平等賃金公示制」を実施して、ソウルを「性平等都市」にすると公言した。「女性親和都市」からさらに一歩進んで「女性安心都市」を標ぼうした。
だが、今一つずつ明るみになっている実状には驚くばかりだ。被害者Aさんは「朴市長の喜び組のような役割を強要され、下着の世話までしなければならなかった」とし、秘書時代4年間の具体的なセクハラ経験を暴露した。朴氏が普段、弱者や女性の人権に格別の関心と支持を表明していたため韓国社会が受けた衝撃は大きい。
ソウル市庁で30年間勤務した元高位級公務員は今回の事件についてこのように語った。「根本的に朴氏の浅い性認知感受性に原因があると思うが、同質性と傲慢さによってこれをけん制するシステムが組織になかったことが最大の理由だ」。市長と懇意にしている外部の人々を親衛隊のようにそばに置いて秘書室をほぼ彼らで埋めたことから、彼ら政務ラインがソウル市人事を思うままに動かした。市長が事実上の帝王的リーダーに君臨したことで、組織のけん制システムが崩壊したということだ。「いつから市長を喜ばせることが行政職女性秘書の業務になったのか。過去のどの市長の時もこうしたことはなかった」と彼は嘆いた。
フェミニストを自任した市長らしく、ソウル市組織図を見ると、その名称も見慣れないジェンダー特別補佐官、ジェンダー政策チーム、ジェンダー諮問官など、組織は外形的に仰々しく盛りだくさんだった。だが、いざ事件が起きてみるとすべて無用の長物だった。むしろこのような問題を予防して解決するよう任命されたジェンダー特別補佐官は、被害者ではなく朴氏を優先した状況が明らかになっている。自身を任命した市長に対する忠誠心と個人的な繋がりが先立って、被害者の保護という公的職務を忘れたのではないか。
いま国民が知りたいのは事件の真実だ。ある世論調査で国民60%以上が真相調査が必要だと答えた。被害者に対する2次加害が飛び交い、オンラインでは各種憶測と論争でカオス状態だが、これは健康な社会の姿ではない。
黙認とほう助の疑いをかけられながら調査の対象になったソウル市庁公務員が調査の主体になるとは全く理屈に合わない。再発防止のためにも、客観的な第3の機関が公正に調査して実体的な真実と何が間違っていたのかを明らかにしなければならない。よほどでなければ女性団体がソウル市庁の調査に疑問を提起して反発したりはしないだろう。
警察が「公訴権なし」という結論を出すといっている罪がなくなるわけではない。徹底した真相調査のためには「フェミニスト大統領」を公約した文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこの事件に対して言及しなければならない。金学義(キム・ハクウィ)元法務部次官性接待疑惑事件時には「控訴期間が過ぎたが、真実を明らかにするべきだ」と言ったはずだ。
陣営論理で被害者を二分化するのではないなら、今回の事件も真実を明らかにするよう指示するのは当然のことだ。社会的弱者と女性人権保護においてだけは、与野党はもちろんのこと、理念や陣営の違いも貧富や地位による違いもなく公平無私でなければならない。
一部からは「潔癖の人だったので」「道徳心が強くて」「死で贖罪した」というような発言は、朴氏のセクハラに対する一方的な肩入れにすぎない。#MeToo(ハッシュタグミートゥー)運動を否定するような格好だ。
今回の事件を契機に権力者が権力を利用して弱者を性的に抑圧していないか、性暴行に脆弱な勤務環境はないか、徹底的に点検しなければならない。性暴行予防および被害者保護業務の主管部署である女性家族部はもちろん、地方自治体を担当する行政安全部が積極的に動かなくてはならない。徹底した真相調査とともに再発防止対策を提示しなければならないだろう。
イ・ボクシル/元女性家族部次官・世界女性理事協会韓国支部会長
だが、今一つずつ明るみになっている実状には驚くばかりだ。被害者Aさんは「朴市長の喜び組のような役割を強要され、下着の世話までしなければならなかった」とし、秘書時代4年間の具体的なセクハラ経験を暴露した。朴氏が普段、弱者や女性の人権に格別の関心と支持を表明していたため韓国社会が受けた衝撃は大きい。
ソウル市庁で30年間勤務した元高位級公務員は今回の事件についてこのように語った。「根本的に朴氏の浅い性認知感受性に原因があると思うが、同質性と傲慢さによってこれをけん制するシステムが組織になかったことが最大の理由だ」。市長と懇意にしている外部の人々を親衛隊のようにそばに置いて秘書室をほぼ彼らで埋めたことから、彼ら政務ラインがソウル市人事を思うままに動かした。市長が事実上の帝王的リーダーに君臨したことで、組織のけん制システムが崩壊したということだ。「いつから市長を喜ばせることが行政職女性秘書の業務になったのか。過去のどの市長の時もこうしたことはなかった」と彼は嘆いた。
フェミニストを自任した市長らしく、ソウル市組織図を見ると、その名称も見慣れないジェンダー特別補佐官、ジェンダー政策チーム、ジェンダー諮問官など、組織は外形的に仰々しく盛りだくさんだった。だが、いざ事件が起きてみるとすべて無用の長物だった。むしろこのような問題を予防して解決するよう任命されたジェンダー特別補佐官は、被害者ではなく朴氏を優先した状況が明らかになっている。自身を任命した市長に対する忠誠心と個人的な繋がりが先立って、被害者の保護という公的職務を忘れたのではないか。
いま国民が知りたいのは事件の真実だ。ある世論調査で国民60%以上が真相調査が必要だと答えた。被害者に対する2次加害が飛び交い、オンラインでは各種憶測と論争でカオス状態だが、これは健康な社会の姿ではない。
黙認とほう助の疑いをかけられながら調査の対象になったソウル市庁公務員が調査の主体になるとは全く理屈に合わない。再発防止のためにも、客観的な第3の機関が公正に調査して実体的な真実と何が間違っていたのかを明らかにしなければならない。よほどでなければ女性団体がソウル市庁の調査に疑問を提起して反発したりはしないだろう。
警察が「公訴権なし」という結論を出すといっている罪がなくなるわけではない。徹底した真相調査のためには「フェミニスト大統領」を公約した文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこの事件に対して言及しなければならない。金学義(キム・ハクウィ)元法務部次官性接待疑惑事件時には「控訴期間が過ぎたが、真実を明らかにするべきだ」と言ったはずだ。
陣営論理で被害者を二分化するのではないなら、今回の事件も真実を明らかにするよう指示するのは当然のことだ。社会的弱者と女性人権保護においてだけは、与野党はもちろんのこと、理念や陣営の違いも貧富や地位による違いもなく公平無私でなければならない。
一部からは「潔癖の人だったので」「道徳心が強くて」「死で贖罪した」というような発言は、朴氏のセクハラに対する一方的な肩入れにすぎない。#MeToo(ハッシュタグミートゥー)運動を否定するような格好だ。
今回の事件を契機に権力者が権力を利用して弱者を性的に抑圧していないか、性暴行に脆弱な勤務環境はないか、徹底的に点検しなければならない。性暴行予防および被害者保護業務の主管部署である女性家族部はもちろん、地方自治体を担当する行政安全部が積極的に動かなくてはならない。徹底した真相調査とともに再発防止対策を提示しなければならないだろう。
イ・ボクシル/元女性家族部次官・世界女性理事協会韓国支部会長
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