一方のエディとはいうと、彼はこの時70代の後半で、酸いも甘いも噛み分けた歳だ
あらゆる艱難をくぐり抜け、(いや、艱難を作り出していたのは彼かもしれないが、) それ相応の地位につき、人からも尊敬されていた
事業では多少失敗したこともあったが、彼は別に気にしてはいなかった
生まれた時から金持ちの御曹司で父の会社を継いだだけだから、金は浴びるほどあった
晩年は息子に会社を譲り任せたが、この息子がちっとも本業に熱心でなくてね、趣味に走っていた
娘2人はどうしようもない無軌道で、問題ばかり起こしている
親戚にも問題を起こす男がいた
…いや、一番の問題児はエディ自身だったろうがね、彼は世の中を泳ぐのがうまくて、おまけに術も心得ていたから、こわいものなしだった、彼としてはね……この時までは
それで、新しい目標物というか、珍しいものこわいもの見たさで彼は取り組んだのだが、ちっとも手応えがない
柔らかいのだ、反応が
こっちが憎しみをぶつけても、返ってくるのはひらりひらりとした、蝶のような優しい心ばかり、決して彼を憎まず、むしろさとすようなやり方だ
一度、つかわした邪霊が気の剣をとり、離れて彼女と術でやりあったことがあった
邪霊が失敗して剣を取り落としたら、彼女は術を使わずに、しばらく邪霊が剣を拾うまで待った
これにエディは驚いた
海の果ての、アジアの女が、騎士道を知っている………?!!
翠さんとしては外国映画が好きで、テレビで昔見た剣劇の騎士道精神を真似して、相手が落とした武器を拾うまで待っただけなのだが、元々彼女はフェアが大好きで、勝とうが負けようが、公平に判定してほしい、というのが願いだった
負けても、公平な判定なら、文句はない
反対に、ひいきされたりずるをして勝つのは、嫌だった
で、驚いたエディは気を取り直して立ち向かった
この女、何者、いや、何を考えている……?
なぜ、俺の放った邪霊をすきを見てたたきつぶさない?
いや、たたきつぶすどころか、毎回相手をかばうようにして祓って、皆天国へやってしまう……なんて女だ………!
舌を巻いた
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