萌えない建築 - （後）

建築専門誌を見ても　萌えない　のはなぜなんだろうか。。

もちろん自分の趣向とは違うという事はある。取り上げられる建築も、雑誌自体の編集・デザインも。。特に写真に魅力がない。多少なりとも写真に興味を持ってしまった今、余計にそう思う。　そうゆう「雑誌としての魅力」という部分についても大きいのだけど、それはおいておこう。

そこに取り上げられる最近の建築は・・・僕が萌えないだけで、実によくできている。昨今重要性がより高まっている設備・構造含め洗練されている。

大型建築は別にして、住宅建築で言うと、掲載される設計者は1970年代生まれが中心になりつつある。つまり30代。

「うまいなぁ～」と思ってしまう。「きれいにできてるねぇ～」と思ってしまう。

20数年前、雑誌の中にあった建築とは違ってどれもスマートだ。　明るく、健全で、ビジュアル的にもよく。。

でも・・・　心に引っかからない。。　サラ～っと流れる。　むむ？っと思う　泥臭さ　は、、もはやない。

＊＊

図面をシャーペンで書くのとCADで書くのと、、図面として違いはない。

しかし、CAD時代になってからの建築は、手書き時代の建築とはあきらかに違う。手書き時代の象徴とも言えるかもしれないが、象設計集団　という設計事務所があった。粘土で模型を作っていた。図面はもちろん　出来上がった建築も　どこか「ベタベタする」ような　「ザラザラする」ような　汗臭さがするような（・・よく言えば有機的な）　そんな質感を感じた。　もはや現代において「象設計集団が作っていた建築」は現れない。（＊象設計集団は現存してます）

手書きの時代、図面を書く以前に、紙を平らに張る事、水平垂直に張る事、ドラフターの調整をする事、手をきれいにする事、ペンの芯を整える事、筆圧に気を付ける事　などなど、たくさんの気配りがあった。それは、現場の職人が道具や作業に対する態度と同じものだったと思う。書き直しなんて簡単にできる事ではないから、図面を書く位置を決める事から始まり、線の引き方、強弱、書く手順、原図の取り扱い　など、図面というものに対して真剣だった。

それらはとても苦痛だった。CADに変わった時、それらから解放され、かつ　簡単にコピーができ、正直言って、本当に有難かった。が・・・

プリントした図面を見て、きれいだけど、スカスカ（な感じ）　で　「えっ・・・」　と思った（脳で感じた）感触　は、残っている。

図面が軽い。。　と感じた。

「CADで書いた（思考した）図面で出来上がった建築は　軽くなる」　とは言わない。

「手書きの図面がよかった」とも言わない。　なにしろ手で図面を書く事は、結構苦痛だったから、もう戻る気もない。

どちらがいいとか悪いとか言う事ではない。　しかし、思考の道具が違う以上、出来上がるモノが違ってくるのも当然だ。

ただ・・・

「多感期」　に　「手書きの思考」　で育った僕は、、、最初から「CADの思考」　の３０代の設計した建築を見て、、「（プリントした）図面が軽い。。」　と感じたのと同じように、なぜか　スカスカ感　を感じてしまう。（ものが多い）

それが　萌えない　理由なのだろうか・・・