たんぽぽ舎のメルマガから、以下転載させていただきます。
┏┓
┗■1.東京電力福島第一原発の憂慮すべき現実 (上)
| 規制委員人事案に見る福島への悪影響
| 凍土壁の問題点
└──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)
汚染水(トリチウム)とサブドレン再稼働
2013年8月21日、ある報告書がひっそりと原子力学会から出された。
その内容は『福島第一原発の滞留水循環冷却で発生する汚染水で、課題となっているトリチウム処理に関する対応策』というものだ。原子力学会が出すからとても画期的と思いきや、『海洋希釈放出が「現実的」』などと陳腐なものだった。それが理由か、あまりニュースにもならなかったが、これをまとめたのは『日本原子力学会・福島発電所事故調査委員会』その委員長が田中知(さとる)東京大学教授だった。
現在、汚染推対策については規制庁も東電の打ち出す方式に問題が無いとはしていない。特に凍土方式遮水壁(いわゆる凍土壁)については、着工を「黙認」はしているが「認可」しているわけではないという中途半端な状態だ。
東電に対して20数項目にわたる質問を出し、一定の回答はあったものの、信頼性が確保できるかなど課題はまだ多いと見ているようだ。
その中心にいるのが更田委員だが、田中知教授が入ることでトリチウム汚染水が大量放出される危機が迫っている。
もともと規制委員会も「基準以内の水は放出してもかまわない」というスタンスではある。しかし「放出水が本当に基準内であるのか、もし基準を超える放出が起きそうな事態になったらどうやって止めるのか」などの安全対策に重大な欠陥がある福島現地の状態では、簡単に放出を認められない事情があった。
福島で起きている危機を代表するかのようなタンクからの汚染水漏れ、大雨が降ったら簡単に決壊する堰、今も3年前の原発汚染水が溜まっているトレンチが何時破損するか分からない4m盤の惨状、こういったこと一つ一つをとっても、基準内であることを「担保不能」な現場の実態を知るにつけ「基準以内の水」であると確認する術があるのかどうか不安になるのは当然である。
しかし新しい規制委員は、おそらくそんなこと知ったことではないのだろう。
自ら主張してきた「基準に達しない水」は、東電に対して「排出せよ」と言い出すに違いない。
この場合、トリチウムの排水中法定基準は「1リットルあたり6万ベクレル」である。
しかし東電は、これを十分達成するための「安全率」的な下駄を履かせ、「1リットルあたり1500ベクレル」と四十分の一の自主基準を設けた。これに基づき地下水バイパスは5月21日から反対の声を押し切って実施されているが、田中委員は、これにどのような意見を出していくかが大きな問題だ。
そして東電の汚染水対策のうち、もう一つ重要な設備の再開がある。
それは「サブドレン再稼働」である。
1~4号機周辺には約60本の井戸が掘られており、3.11以前にはフル稼働で日量850トンの地下水を汲み上げて放出していた。しかし地震と津波で壊滅的打撃を受け、今に至るも稼働不能状態である。この井戸が動かないため、原発周辺の地下水は、以前は地上から12m以上の深さ(おおむね原子炉建屋の最底部)に止まっていたのに、今では地表に溢れんばかりになっている。
この地下水を食い止めるために凍土方式遮水壁が建設されているのだが、サブドレンが働くことで、さらに地下水を下げることが出来、建屋内部の汚染水を抜く作業に着手できるという計画だ。
問題は、汲み上げた水をどうするのかだが、原発から数百メートル離れた上流部分で汲み上げているパイパス地下水と異なり、原発の間際で汲み上げれば当然原子炉建屋やタービン建屋内の汚染水も吸い出すことになる。この中には高濃度の放射能を含むと考えられるが、セシウムなどは現在建設中の別の処理建屋で取り除く計画だ。ALPS2号のような設備なのだろうと思われる。
しかしトリチウムは除けない。そのため、現在のところ東電はサブドレン水をどうするかを「未定」としている。
だがタンクの増設計画を見る限り「サブドレン水用の貯水タンク」が建設されるようには見て取れない。
結局またしても、汚染水の海洋放出になってしまうのではないかと強く危惧するが、それを後押ししそうなのが、新たに委員に就任した田中知氏である。
福島第一の今後にとっても、とんでもない人事になっているのではないだろうか。(下につづく)
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┗■1.東京電力福島第一原発の憂慮すべき現実 (上)
| 規制委員人事案に見る福島への悪影響
| 凍土壁の問題点
└──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)
汚染水(トリチウム)とサブドレン再稼働
2013年8月21日、ある報告書がひっそりと原子力学会から出された。
その内容は『福島第一原発の滞留水循環冷却で発生する汚染水で、課題となっているトリチウム処理に関する対応策』というものだ。原子力学会が出すからとても画期的と思いきや、『海洋希釈放出が「現実的」』などと陳腐なものだった。それが理由か、あまりニュースにもならなかったが、これをまとめたのは『日本原子力学会・福島発電所事故調査委員会』その委員長が田中知(さとる)東京大学教授だった。
現在、汚染推対策については規制庁も東電の打ち出す方式に問題が無いとはしていない。特に凍土方式遮水壁(いわゆる凍土壁)については、着工を「黙認」はしているが「認可」しているわけではないという中途半端な状態だ。
東電に対して20数項目にわたる質問を出し、一定の回答はあったものの、信頼性が確保できるかなど課題はまだ多いと見ているようだ。
その中心にいるのが更田委員だが、田中知教授が入ることでトリチウム汚染水が大量放出される危機が迫っている。
もともと規制委員会も「基準以内の水は放出してもかまわない」というスタンスではある。しかし「放出水が本当に基準内であるのか、もし基準を超える放出が起きそうな事態になったらどうやって止めるのか」などの安全対策に重大な欠陥がある福島現地の状態では、簡単に放出を認められない事情があった。
福島で起きている危機を代表するかのようなタンクからの汚染水漏れ、大雨が降ったら簡単に決壊する堰、今も3年前の原発汚染水が溜まっているトレンチが何時破損するか分からない4m盤の惨状、こういったこと一つ一つをとっても、基準内であることを「担保不能」な現場の実態を知るにつけ「基準以内の水」であると確認する術があるのかどうか不安になるのは当然である。
しかし新しい規制委員は、おそらくそんなこと知ったことではないのだろう。
自ら主張してきた「基準に達しない水」は、東電に対して「排出せよ」と言い出すに違いない。
この場合、トリチウムの排水中法定基準は「1リットルあたり6万ベクレル」である。
しかし東電は、これを十分達成するための「安全率」的な下駄を履かせ、「1リットルあたり1500ベクレル」と四十分の一の自主基準を設けた。これに基づき地下水バイパスは5月21日から反対の声を押し切って実施されているが、田中委員は、これにどのような意見を出していくかが大きな問題だ。
そして東電の汚染水対策のうち、もう一つ重要な設備の再開がある。
それは「サブドレン再稼働」である。
1~4号機周辺には約60本の井戸が掘られており、3.11以前にはフル稼働で日量850トンの地下水を汲み上げて放出していた。しかし地震と津波で壊滅的打撃を受け、今に至るも稼働不能状態である。この井戸が動かないため、原発周辺の地下水は、以前は地上から12m以上の深さ(おおむね原子炉建屋の最底部)に止まっていたのに、今では地表に溢れんばかりになっている。
この地下水を食い止めるために凍土方式遮水壁が建設されているのだが、サブドレンが働くことで、さらに地下水を下げることが出来、建屋内部の汚染水を抜く作業に着手できるという計画だ。
問題は、汲み上げた水をどうするのかだが、原発から数百メートル離れた上流部分で汲み上げているパイパス地下水と異なり、原発の間際で汲み上げれば当然原子炉建屋やタービン建屋内の汚染水も吸い出すことになる。この中には高濃度の放射能を含むと考えられるが、セシウムなどは現在建設中の別の処理建屋で取り除く計画だ。ALPS2号のような設備なのだろうと思われる。
しかしトリチウムは除けない。そのため、現在のところ東電はサブドレン水をどうするかを「未定」としている。
だがタンクの増設計画を見る限り「サブドレン水用の貯水タンク」が建設されるようには見て取れない。
結局またしても、汚染水の海洋放出になってしまうのではないかと強く危惧するが、それを後押ししそうなのが、新たに委員に就任した田中知氏である。
福島第一の今後にとっても、とんでもない人事になっているのではないだろうか。(下につづく)