あれは真夏の暑い盛りの頃だった。いつもの道を
蝉の大群のミーンミンミンという音に囲まれ
私はBBCを聴いていた。その時話していたのはドナルド・トランプ、
その頃から、彼に興味を持っていた。そして
なぜだか少しずつ好印象を抱くようにすらなっていた。
あの蝉達の激しい泣き声に囲まれて
トランプは聴衆に語りかけていた。そして彼らの
激しい拍手と叫び声が耳中に鳴り響く。
イヤホンの隙間から聞こえる大量の蝉達の鳴き声と
彼らの熱狂が混ざり合った中、目の前の道はまばゆい光に照らされて
まるですべてが彼を祝福しているかのような錯覚におちいった。
何故こんなにも 彼の言葉に聴衆は熱狂するのだろう?
私はもう1年近く、ほぼ休むことなくBBCを聴いていた。
その中でいつも思わされたことがある。
ヒラリーとトランプに対する聴衆の熱狂度合いは全然違う。
ヒラリーに対して大きな拍手があったとしても、それは
コンサートの通常の拍手とあまり変わらないような印象だけど
トランプが何かを言うたびに、聴衆の歓声はまさに熱狂的で
「そうだ!よくぞ言ってくれた!!まさにその通りだ!」と
いう彼らの思いがラジオを通して伝わってきた。
相変わらずNHKを観ていない私は一般的な日本人が
トランプに対してどういう印象を抱いているかは感覚でしかわからない。
ただ何か「トランプ」というたびに、皮肉をこめた
アイロニカルな笑いに出会った。その侮蔑的な表情が
どれほどの情報によって成り立っているのか私は知らない。
けれども実際彼が声高に語ったように、相当な程度に
大手メディアは偏っており、その差を埋め合わせたのが
実際の市民が行った、今回の選挙だったように思う。
偏りを極力避けようとする姿勢のBBCはトランプでもヒラリーでもほぼ
対等に扱ってきた。ところが私が夏から購読しているアメリカのTIMEは
けっこうひどい。ひどいにもほどがある、とすら言いたくなり、
思わず「これってどう思う?」と8歳の息子に聞いたほど。
数ヶ月前の表紙はトランプを摸した顔の形が溶けようとするものだった。
はっきりいって侮辱じゃないか、ということをシャルリーエブドのような
批判精神だけを売りにした小さな雑誌がやるならともかく、
フランスのルモンドやイギリスのBBCに相当する、アメリカを代表する
世界的メディアのTIMEがこんなことをしていいのだろうか?
そして10月24日号の表紙は、その明らかにトランプを摸した顔が
だらりと溶けて、口からよだれすら流している。タイトルは
「Total Meltdown」まだ選挙の結果すら決まっていないのに
(しかも最終的には「トランプ大統領」になったのに)
こういう描き方の表紙を全米どころか世界中で売り出していく、
その姿はあまりにも非中立的だ。
私が購読をはじめた夏以降、表紙で明らかにヒラリーを侮辱したような
ものは一度も登場しなかった。そのかわりにあからさまにTIMEが
ヒラリーを推そうとしているのが痛いほど伝わってくる。
ヒラリーのことももう少し知らないと、と思って特集を一生懸命
読んでみたものの、印象に残ったことは「彼女は中を覗こうとしても
覗こうとしても同じ顔が現れるロリアのマトリョーシカのような人」という
ことだった。知ろうとしても、何を伝えたいのかわかろうとしても
なんだかそれが伝わらない。私だってかなり彼女の話に耳を
傾けたつもりだけれど、結局私に伝わったのは「私は女性初の
大統領になりたい」ということだけだった。
そんな中、またトランプ批判のTIMEの記事の中で、トランプが
こう言っていた。「ヒラリーが持っている唯一のカードは女性としての
カードだけだ。もしヒラリーが男性だったら、5パーセントも票を
とれないんじゃないかと思う。」これにはちょっと笑ってしまった。
確かにそうかもしれない・・・私は女性だから本来はヒラリーを
応援したほうがいいのだろうと思いながらも、最後まで何も
共感できるポイントが見出せなかった。
それに対して個人的にはトランプはヒラリーよりも1枚も2枚も
上手だなあと思っていた。「彼女はプーチンが嫌いなんだ。それは
プーチンが彼女よりインテリジェントだからだ。」と彼は言う。
確かにそうだ・・・日本でプーチンがどう思われているかはこれまた
微妙なところだけれども、彼の冷徹な眼差しと世界におけるロシアの
覇権を本気で取り戻そうとするその姿勢は(いいか悪いかは別として)
世界の指導者の中でも群を抜いていると思う。確かに彼は恐ろしいほど
頭がいい。そしてトランプ氏が次期大統領に決まった時に
かなり早い段階で祝電を送ったのは他ならぬプーチン大統領だった。
(彼はそういうことに対する行動力はトップレベルで早い。
もちろん今回も日本の首相より早かった。)
アメリカとロシアが再び冷戦になろうとしてた今、
トランプ大統領が誕生することで関係はかなり変わるだろう。
それに彼は私たちが思っているほど世界に干渉したがる危険人物ではなくて
もっと本気で自国の産業と労働者たちを心配しているように思う。
だから正直これまでのアメリカが世界で行ってきた外政干渉にも
あまり興味がないと思う。彼はただ、自分にとって我が子のように
思えてしまうアメリカ人の普通の労働者たちを守りたい、
そして再びアメリカンドリームが実現できる国にしたい、
そんな気持ちで、自身でまさにそのアメリカンドリームを
体現しながら語りかけているのではないだろうか。
私も以前はトランプが大嫌いだった。彼の声が
BBCから流れてくるたびに、生理的に気持ち悪いと思っていた。
ところが彼の声色はこの数ヶ月で別人のように変化した。
以前の気持ち悪く適当な発言を繰り返す方法から、
もっと落ち着きがあって深みのある声に変わっていったのだ。
そして彼は時折言っていた。「I AM the president of the United States of America!」
大統領として確定する以前から、彼はそう現在形で言っていた。
彼はあまりにその未来を信じきれていたからこそ、
「もし当選しなかったらその結果を受け入れますか?」
という質問に対してまともな返事をしなかったのではないかと思う。
本気で信じきる人は、できる、そうなるという道しかなくて
他の選択肢を考えた瞬間にそれが実現できなくなってしまうこと、
それを身をもって知っていたからではないだろうか。
彼は確かにビジネスマンだ。政治のエリートとは違う。
でも私たちが思っているほどただのバカではないと思う。
ただのバカを大統領に選ぶほど、アメリカ人は馬鹿なのだろうか?
本当にそんな人ばかりの国だったなら、英語を必死になって
勉強しているのもそれこそ馬鹿馬鹿しくないか?
ただの馬鹿が、あんな壮大なトランプタワーを作れるのだろうか?
私の友人や知人には一人もあんなビルを建てた人はいない。
それに政治のエリートから馬鹿にされている彼を応援し
守ってきたのは彼の家族たちだった。しかも彼の子供は皆が
彼と血のつながりがあったわけではないが、それでも
必死でパパを応援していた。自分だったら?
近親者がいきなり大統領選や選挙に出馬すると言いだして
そんな風に本気で応援できるだろうか?
「何言ってんだこのバカ!」と思って見向きもしなくなるのが
ありそうな結末なのに、そこまで応援できるというのは
それだけ信頼しているからだろう。しかも彼は従業員からも
かなり慕われていたという。自分の勤めている会社の社長が
選挙に出るとなったとき、自分は心から応援できるだろうか?
そんなの義務でも仕事でもなんでもないのに?
それはひとえにその人への忠誠心や恩がある、と思っているから
できることではないのだろうか・・・
ヒラリーに比べて脆弱な彼の選挙陣営マップを読んだ時
私にはそう思えてしまった。彼は政治エリートが嫌いだろう。
私もその気持ちはよくわかる。私は国際的な政治エリートの
卵が集まるパリ政治学院に在籍していたことがあるけれど、
生粋のエリート達は世界のことなど気にしていない。
気にしているふりをするだけだ。でも必死になって守ろうとするのは
自分の家族と自分のキャリア。アメリカ人の多くが感じ、
嫌気がさしていた政治エリートたちの偽善的なあり方に
旋風を巻き起こしたのがドナルド・トランプだったのだろう。
彼はアメリカを変えるのだろうか?
彼なら変えるかもしれない。
なぜなら誰しもが鼻で笑った、「は?大統領選に出馬?」
ということを、出馬だけでなく本当に選ばれるところまで
やってのけてしまうほどの人だから。
(それは誰にでもできることではない)
リーダーに必要なのはリーダーシップと決断力。
今日BBCで誰かがそう語ってた。それは彼にはあるのだろう。
(でなければ億万長者にはなれないのでは?)
もちろん彼は突拍子もない発言もしているけれど、
私にはそれらすべてを彼が無理やり行えるとは思えない。
彼はあれほど声色を変えたように、きっとどうにでも政策も
変えていくだろう。でも譲れないものはただ一つ。
それはアメリカの人たちの暮らしに再び夢を持たせることだ。
行き過ぎたグローバリゼーションの中、それを謳歌しきった
エリート達とその子供達。でもどこの国でもその恩恵を
ほんの少ししか受けていない人たちがいて、激しいグローバリゼーションによって
彼らの選択肢や未来の希望は狭まっていく。
エリートが決めていく社会のあり方。それにNOといったイギリス。
そしてアメリカがそれに続いた。
エリートだけが恩恵を受けられるグローバリゼーションという形ではない
もっと違う世界のあり方を、これから本気で模索しなければならないだろう。
どうやって?誰が?どのように?
世界はまさに変化しつつあり、イギリスでもアメリカでも国民の多くが
これまでの方法を変えることを望んでいる。
でも、それをどうすれば?
異なる形のグローバリゼーション。私たちに
オルタナティブはあるのだろうか?
自国の文化を大切にしながらも、世界に対して開いていくこと。
開国以来そんなことをやり遂げつつある日本は世界の中でも
わりと珍しく、意外と注目されているらしい。
イギリスともアメリカともEUともまるで異なる環境の中
独特に発展していった日本の何かが
世界の未来の1つのヒントになるのなら、
日本人がそれを真剣に考えてみるのも
世界に役立つかもしれない。
蝉の大群のミーンミンミンという音に囲まれ
私はBBCを聴いていた。その時話していたのはドナルド・トランプ、
その頃から、彼に興味を持っていた。そして
なぜだか少しずつ好印象を抱くようにすらなっていた。
あの蝉達の激しい泣き声に囲まれて
トランプは聴衆に語りかけていた。そして彼らの
激しい拍手と叫び声が耳中に鳴り響く。
イヤホンの隙間から聞こえる大量の蝉達の鳴き声と
彼らの熱狂が混ざり合った中、目の前の道はまばゆい光に照らされて
まるですべてが彼を祝福しているかのような錯覚におちいった。
何故こんなにも 彼の言葉に聴衆は熱狂するのだろう?
私はもう1年近く、ほぼ休むことなくBBCを聴いていた。
その中でいつも思わされたことがある。
ヒラリーとトランプに対する聴衆の熱狂度合いは全然違う。
ヒラリーに対して大きな拍手があったとしても、それは
コンサートの通常の拍手とあまり変わらないような印象だけど
トランプが何かを言うたびに、聴衆の歓声はまさに熱狂的で
「そうだ!よくぞ言ってくれた!!まさにその通りだ!」と
いう彼らの思いがラジオを通して伝わってきた。
相変わらずNHKを観ていない私は一般的な日本人が
トランプに対してどういう印象を抱いているかは感覚でしかわからない。
ただ何か「トランプ」というたびに、皮肉をこめた
アイロニカルな笑いに出会った。その侮蔑的な表情が
どれほどの情報によって成り立っているのか私は知らない。
けれども実際彼が声高に語ったように、相当な程度に
大手メディアは偏っており、その差を埋め合わせたのが
実際の市民が行った、今回の選挙だったように思う。
偏りを極力避けようとする姿勢のBBCはトランプでもヒラリーでもほぼ
対等に扱ってきた。ところが私が夏から購読しているアメリカのTIMEは
けっこうひどい。ひどいにもほどがある、とすら言いたくなり、
思わず「これってどう思う?」と8歳の息子に聞いたほど。
数ヶ月前の表紙はトランプを摸した顔の形が溶けようとするものだった。
はっきりいって侮辱じゃないか、ということをシャルリーエブドのような
批判精神だけを売りにした小さな雑誌がやるならともかく、
フランスのルモンドやイギリスのBBCに相当する、アメリカを代表する
世界的メディアのTIMEがこんなことをしていいのだろうか?
そして10月24日号の表紙は、その明らかにトランプを摸した顔が
だらりと溶けて、口からよだれすら流している。タイトルは
「Total Meltdown」まだ選挙の結果すら決まっていないのに
(しかも最終的には「トランプ大統領」になったのに)
こういう描き方の表紙を全米どころか世界中で売り出していく、
その姿はあまりにも非中立的だ。
私が購読をはじめた夏以降、表紙で明らかにヒラリーを侮辱したような
ものは一度も登場しなかった。そのかわりにあからさまにTIMEが
ヒラリーを推そうとしているのが痛いほど伝わってくる。
ヒラリーのことももう少し知らないと、と思って特集を一生懸命
読んでみたものの、印象に残ったことは「彼女は中を覗こうとしても
覗こうとしても同じ顔が現れるロリアのマトリョーシカのような人」という
ことだった。知ろうとしても、何を伝えたいのかわかろうとしても
なんだかそれが伝わらない。私だってかなり彼女の話に耳を
傾けたつもりだけれど、結局私に伝わったのは「私は女性初の
大統領になりたい」ということだけだった。
そんな中、またトランプ批判のTIMEの記事の中で、トランプが
こう言っていた。「ヒラリーが持っている唯一のカードは女性としての
カードだけだ。もしヒラリーが男性だったら、5パーセントも票を
とれないんじゃないかと思う。」これにはちょっと笑ってしまった。
確かにそうかもしれない・・・私は女性だから本来はヒラリーを
応援したほうがいいのだろうと思いながらも、最後まで何も
共感できるポイントが見出せなかった。
それに対して個人的にはトランプはヒラリーよりも1枚も2枚も
上手だなあと思っていた。「彼女はプーチンが嫌いなんだ。それは
プーチンが彼女よりインテリジェントだからだ。」と彼は言う。
確かにそうだ・・・日本でプーチンがどう思われているかはこれまた
微妙なところだけれども、彼の冷徹な眼差しと世界におけるロシアの
覇権を本気で取り戻そうとするその姿勢は(いいか悪いかは別として)
世界の指導者の中でも群を抜いていると思う。確かに彼は恐ろしいほど
頭がいい。そしてトランプ氏が次期大統領に決まった時に
かなり早い段階で祝電を送ったのは他ならぬプーチン大統領だった。
(彼はそういうことに対する行動力はトップレベルで早い。
もちろん今回も日本の首相より早かった。)
アメリカとロシアが再び冷戦になろうとしてた今、
トランプ大統領が誕生することで関係はかなり変わるだろう。
それに彼は私たちが思っているほど世界に干渉したがる危険人物ではなくて
もっと本気で自国の産業と労働者たちを心配しているように思う。
だから正直これまでのアメリカが世界で行ってきた外政干渉にも
あまり興味がないと思う。彼はただ、自分にとって我が子のように
思えてしまうアメリカ人の普通の労働者たちを守りたい、
そして再びアメリカンドリームが実現できる国にしたい、
そんな気持ちで、自身でまさにそのアメリカンドリームを
体現しながら語りかけているのではないだろうか。
私も以前はトランプが大嫌いだった。彼の声が
BBCから流れてくるたびに、生理的に気持ち悪いと思っていた。
ところが彼の声色はこの数ヶ月で別人のように変化した。
以前の気持ち悪く適当な発言を繰り返す方法から、
もっと落ち着きがあって深みのある声に変わっていったのだ。
そして彼は時折言っていた。「I AM the president of the United States of America!」
大統領として確定する以前から、彼はそう現在形で言っていた。
彼はあまりにその未来を信じきれていたからこそ、
「もし当選しなかったらその結果を受け入れますか?」
という質問に対してまともな返事をしなかったのではないかと思う。
本気で信じきる人は、できる、そうなるという道しかなくて
他の選択肢を考えた瞬間にそれが実現できなくなってしまうこと、
それを身をもって知っていたからではないだろうか。
彼は確かにビジネスマンだ。政治のエリートとは違う。
でも私たちが思っているほどただのバカではないと思う。
ただのバカを大統領に選ぶほど、アメリカ人は馬鹿なのだろうか?
本当にそんな人ばかりの国だったなら、英語を必死になって
勉強しているのもそれこそ馬鹿馬鹿しくないか?
ただの馬鹿が、あんな壮大なトランプタワーを作れるのだろうか?
私の友人や知人には一人もあんなビルを建てた人はいない。
それに政治のエリートから馬鹿にされている彼を応援し
守ってきたのは彼の家族たちだった。しかも彼の子供は皆が
彼と血のつながりがあったわけではないが、それでも
必死でパパを応援していた。自分だったら?
近親者がいきなり大統領選や選挙に出馬すると言いだして
そんな風に本気で応援できるだろうか?
「何言ってんだこのバカ!」と思って見向きもしなくなるのが
ありそうな結末なのに、そこまで応援できるというのは
それだけ信頼しているからだろう。しかも彼は従業員からも
かなり慕われていたという。自分の勤めている会社の社長が
選挙に出るとなったとき、自分は心から応援できるだろうか?
そんなの義務でも仕事でもなんでもないのに?
それはひとえにその人への忠誠心や恩がある、と思っているから
できることではないのだろうか・・・
ヒラリーに比べて脆弱な彼の選挙陣営マップを読んだ時
私にはそう思えてしまった。彼は政治エリートが嫌いだろう。
私もその気持ちはよくわかる。私は国際的な政治エリートの
卵が集まるパリ政治学院に在籍していたことがあるけれど、
生粋のエリート達は世界のことなど気にしていない。
気にしているふりをするだけだ。でも必死になって守ろうとするのは
自分の家族と自分のキャリア。アメリカ人の多くが感じ、
嫌気がさしていた政治エリートたちの偽善的なあり方に
旋風を巻き起こしたのがドナルド・トランプだったのだろう。
彼はアメリカを変えるのだろうか?
彼なら変えるかもしれない。
なぜなら誰しもが鼻で笑った、「は?大統領選に出馬?」
ということを、出馬だけでなく本当に選ばれるところまで
やってのけてしまうほどの人だから。
(それは誰にでもできることではない)
リーダーに必要なのはリーダーシップと決断力。
今日BBCで誰かがそう語ってた。それは彼にはあるのだろう。
(でなければ億万長者にはなれないのでは?)
もちろん彼は突拍子もない発言もしているけれど、
私にはそれらすべてを彼が無理やり行えるとは思えない。
彼はあれほど声色を変えたように、きっとどうにでも政策も
変えていくだろう。でも譲れないものはただ一つ。
それはアメリカの人たちの暮らしに再び夢を持たせることだ。
行き過ぎたグローバリゼーションの中、それを謳歌しきった
エリート達とその子供達。でもどこの国でもその恩恵を
ほんの少ししか受けていない人たちがいて、激しいグローバリゼーションによって
彼らの選択肢や未来の希望は狭まっていく。
エリートが決めていく社会のあり方。それにNOといったイギリス。
そしてアメリカがそれに続いた。
エリートだけが恩恵を受けられるグローバリゼーションという形ではない
もっと違う世界のあり方を、これから本気で模索しなければならないだろう。
どうやって?誰が?どのように?
世界はまさに変化しつつあり、イギリスでもアメリカでも国民の多くが
これまでの方法を変えることを望んでいる。
でも、それをどうすれば?
異なる形のグローバリゼーション。私たちに
オルタナティブはあるのだろうか?
自国の文化を大切にしながらも、世界に対して開いていくこと。
開国以来そんなことをやり遂げつつある日本は世界の中でも
わりと珍しく、意外と注目されているらしい。
イギリスともアメリカともEUともまるで異なる環境の中
独特に発展していった日本の何かが
世界の未来の1つのヒントになるのなら、
日本人がそれを真剣に考えてみるのも
世界に役立つかもしれない。