真衣歌の心~蛸壺の中で

生きているとあれやこれやあるわねえ

新型コロナウイルスさん9

2020-05-10 19:45:49 | ショートストーリ~
各地に散らばっていった仲間を見送って
発生地点に踏みとどまったコロナもおりました
彼らは強烈な迫害の網を搔い潜り、家の中から出られない人間たちに取り付いて
ほそぼそと活動を続けていました
「どこへ行っても同じだよ、のんびり此処でやってるほうがいい
いろんな情報も手に入るしね」
確かにコロナが耳にする情報は大量でした
情報が交錯して正誤の見境が付かないほどでした
何が正しくて何が誤った情報か、コロナには判断が付きませんでした

「言えることは、俺達は相当量の人間に感染して殺している筈なのに
死者はたった2500人か?嘘つけえ、桁が違うぞ」
世論に負けて政府は一気に1000人上乗せして報告しました
「たった3500人か?文句を言っても仕方ねえな」

この都市には7か所の火葬場があって
朝から晩まで人間を焼く煙が絶えませんでした
「1日に焼く人間の数X7X日数だぞ」
暇なコロナたちはせっせと計算しましたが、
なかなか納得できる答えが出てきませんでした
火葬場には燃やす限界が有りました

「余った死者が多すぎる、どういう事だ?」
「穴掘って埋めるんじゃねえか?
この国では穴掘りは得意だぜ、
豚も埋めたぜ、億という数字だぜ
転覆列車だって碌な調査せずに土をかぶせちまうんだから」
「だったら遺族に骨壺が渡せせねえじゃないか?」
「骨壺ぐらい、適当に骨を融通して入れるだろう、遺族だって居るかどうか」
まさかなあ」
「それなら、一度ダムが決壊したら、人間や豚の骨がわんさか出てくるなあ」
想像するだけでコロナは気持ちが悪くなりました
此処には世界最大のダムが有って、地盤が緩んで変形していて
決壊がいつ起こってもおかしくない状態でしたから
コロナも気が気ではありませんでした

「早くここを離れて北の地を目指そう」
此処のコロナも重い腰を上げました


* 一切合切フィクションですよって 

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