真衣歌の心~蛸壺の中で

生きているとあれやこれやあるわねえ

あるOLの会話

2021-02-28 09:43:20 | ショートストーリ~
私のお友達は大きい会社の社長令嬢なの。
一人娘でね、短大を卒業した後、お父様の会社に就職したわ。
そして、就職と同時におうちを出てアパートをを借りたの。
自活してみたかったんだって。
そのアパートから自転車通勤を始めたの。
職場の部署は庶務課で、
この会社では部署により着る制服が違うのね。
庶務課、総務課は青い上っ張りで、
営業はベストスーツ、秘書課は制服がないの。
何と言っても秘書課は花形で、女子社員の憧れの部署だそうよ。


庶務課に配属されたお友達は
毎日会社の制服のままで出勤していたの。
彼女は、そこそこの美人だけど、お化粧もせず、
長い髪を黒のゴム輪で一つにしぼっていたわ。
ありふれた苗字だから
会社の誰もが社長令嬢だとは気が付かなかったそうよ。
おとなしい人で、
なんでもきちんとやり遂げる人だったわ。

その彼女が同じ庶務の独身男性とお付き合いするようになったの。
会社ではそれらしい素振りも見せなかったんだけど、
少し離れた喫茶店で二人がいるのを目撃されたらしいわ。
どこまで進んだお付き合いだったか知らないけど、
お付き合いを始めてから半年ぐらいの時
その彼が、電撃結婚しちゃった。
相手は部長さんの娘で、秘書課にいる人だった。

彼は、無神経にも程が有って、結婚式に彼女も招待した。
出席しようかどうしようかさんざん悩んだ末、
彼女は結局彼の結婚式に出席する事にした。

仲人は社長さんご夫婦でした。
社長さんのながーい祝辞が終わって
そのあと、社長さんは一言付け加えた。
『この野郎、わしの可愛い娘を振りやがって…・おめでとう』


あれから彼女は他の会社に移ったわ。
心配していたけど、爽やかに答えたわ。
『あれは、あれで良かったのよ。』




最新の画像もっと見る