真衣歌の心~蛸壺の中で

生きているとあれやこれやあるわねえ

新型コロナウイルスさん4

2020-05-06 12:52:53 | ショートストーリ~
そうしているうちに厳しい冬が去ってゆきました
春の息吹が世界の雪景色を次第に消し去って行きました
様々な春の野花が道端に溢れてゆきましたが
行き交う人々の数は次第に少なくなってゆきました
こんな筈じゃなかったとコロナは思いましたが
それでも行く場所はどこにでもありました

病院に行けば沢山の仲間に逢えました
死体とともに消滅する仲間はしっかりと分身を残してくれていました
「クラスターだってよ、へええ、」
世界のどこにでも病院は在りましたから
コロナは手っ取り早く仲間を増やしてゆくことができました
コロナは人間がどうしようが全く気に留めていませんでした
色んな施設にも行くことができました
「施設ってのは姥捨て山だからいくら殺しても恨まれないよ」
「恨まれないのも面白くないけど、
老人はまあ、この世の邪魔ものだからいいだろう」
確かに施設の老人は病院の入院患者より無視されがちでした
病院で死亡した患者はカウントされましたが
施設で死んだ老人はカウントされないほうが多かったのです
国の厄介者扱いの障害者や生活保護家庭の人間も
なかなか病院では死ねませんでしたし
カウントもされない国が多かったのは事実です
「ああいうところの人間は殺しやすいけど面白みがないよ」
文句を言うコロナもいました
「殺したいのは現役の人間だ、殺し甲斐がない」
まあ、そうあせるな、誰かがなだめました
時間はいくらでもあるさ

「それにしても、人間ってやつは本当に行動範囲が広いなあ」
お陰でコロナは人間に取り付いていろんなお店巡りができました
何処の酒がうまかったか、どこのパチンコやの出玉がいいか、
何処の女がきれいかったか、いつも話題に事欠きませんでした

しかし、コロナにとって良いことは長く続きませんでした
人間たちはロックダウンを始めました
人間たちが町から姿をけしてしまいました
コロナは仕方なく色々な場所に移動せざるを得ませんでした
人間が多い所へ、取り付きやすい人間を探して
コロナは手っ取り早く安易に取り付くことが難しくなってしまいました
「なあに、世界は広い」
「それに何時までもロックダウンできるわけがない
俺たちが死んだふりしていればいずれ解除するに決まってる
何しろ金がかかるからな、持ちこたえるわけがない
それまで犬にでも猫にでも取り付いてじっと我慢だ」


* 一切合切フィクションですよって


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