狭い登り坂の頂上付近に、子供の後ろ姿が見えた。
子供は反対側の方へ駆けて行った。
ちょっと僕!待って!
相田が大きな声で叫んだが、子供は止まらなかった。
歩き続けてクタクタになった体にもう一度力を込めて、相田は坂を登って行った。
少年は茂みの方を見てしゃがんでいた。
あっ!トカゲ!
大きな声で少年が叫んだ。
青黒く光るトカゲが、茂みの方から相田のほうへ向かってきた。
朦朧とする意識の中で . . . 本文を読む
ボートはある島に漂着した。
島は木々が生い茂り、浜辺には白い砂浜が広がっていた。砂浜にはごみがあちらこちらにあり、浜辺の向こう側には岬の上に立つ灯台が見えた。人工物を見つけて、人がいることを想像して相田は少し安心した。
相田は水が入っていた空のペットボトルを持って外に出た。一体ここはどこなんだろう。
とりあえず、人を探して聞いてみる必要がある、と思った。
浜辺を抜けて道路へ歩いて行った。
日 . . . 本文を読む
朝目覚めると、彼女は漂流したボートの中にいた。
ボートの中には十分な食料、そして飲水が積んであった。彼女は空腹と喉の渇きに耐えきれず、誰が用意したもわからないそれらを口に入れてしのいでいた。
彼女の名前は相田さやか。結婚適齢期の29歳。バレーボールを趣味としていて、週に一度はサークルに参加していた。
昨夜は会社のOL仲間と、女子会で盛り上がって、それから別れて、帰路について、、、というところだっ . . . 本文を読む