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バロンはなぜ死ななければならなかったのか

2016年06月10日 16時54分45秒 | 事件
昨日のyahooニュースに朝日新聞掲載記事よりほんの少し長い記事が載ったので記しておきたい。
新しい内容についてはアンダーラインを引いた。なお、写真は取り込むことができなかった。


【逃走シマウマ「バロン」は、なぜ死ななければならなかったのか? 明治から続く「動物商」の実態】
withnews 6月9日(木)7時0分配信
(写真)
逃走の末、死んだシマウマ「バロン」を囲む警察官ら=3月23日、岐阜県土岐市

 今年3月、逃走する姿がテレビ各局で中継され、注目を集めた1頭のシマウマ。最後は、岐阜県内のゴルフ場でおぼれ死んでしまいました。まだ1歳だったシマウマの悲劇の背景を探ると、管理責任があいまいな動物取引の実態が見えてきます。(朝日新聞文化くらし報道部記者・太田匡彦)

天王寺動物園生まれの「バロン」

 「残念な結果だ。我々にも反省すべきところがある」

 ゴルフ場から約200キロ離れた大阪市天王寺動物園の職員は、そうシマウマの死を悔やんでいます。死んだのは、前日まで同園で飼育されていたオスのグラントシマウマだったからです。

 名前は「バロン」。同園で2014年6月19日に誕生し、親子で飼育されていました。でも1歳を超えたころから、「次の行き先」探しが行われるようになりました。

メガネフクロウなどと交換

 その事情を、高見一利・動物園担当課長代理はこう話します。

 「オスは大きくなると父親と争うようになる。でもずっと別々に育てていくスペースは確保できない」

 ほかの動物園に打診を続けたところ、半年かかっても行き先が見つからなかったそうです。

 最終的に、バロンの運命が決まったのは今年2月1日でした。名古屋市中川区の動物商、坪井源幸(げんこう)氏と同園が「動物交換契約書」を締結、バロンは、同園が新たな展示動物として必要としていたメガネフクロウなど複数の動物と交換されることになったのです。

 そして坪井氏は、シマウマを求めていた愛知県尾張旭市の移動動物園を経営する男性にバロンを転売しました。

動物園「信頼するしかなかった」

 なぜ死に至ったのでしょうか。

 3月22日午前中、バロンは天王寺動物園から搬出されました。人馴(な)れさせる訓練のため、その日のうちに瀬戸市の乗馬クラブへ連れて行かれました。

 でも、動物園の外に出たのも、見知らぬ人が近づいてくる経験も初めてのことでした。パニックに陥ったのでしょう、約3.5キロ離れた岐阜県土岐市のゴルフ場まで逃走。翌23日、麻酔薬入りの吹き矢を受けて池に倒れ、死んでしまいました。

 乗馬クラブの柵は大型哺乳類なら容易に逃げられるようなつくりだったそうです。

 天王寺動物園は「動物商に対して指導監督の権限がなく、管理してくれると信頼するしかなかった」と反省。一方の坪井氏も、「受け入れ先の施設が聞いていたものと全く違った。判断が甘かった」と悔しさをにじませました。

もちつもたれつの関係

 不幸な死を除けば、バロンの身の上は、日本の動物園で生まれる動物にとって珍しいことではありません。業界内では、次の行き先を探さなければいけない動物を「余剰動物」と呼びます。

 受け入れ先探しに悩みながら新たな動物も迎え入れたい動物園。国内では簡単には手に入らない動物を仕入れ、売買したい動物商。もちつもたれつの関係が続いているのです。

 高見課長代理はこう説明します。

 「定期的に繁殖を行って動物を維持し、新しい動物も導入しないといけない。購入予算は確保できないので、繁殖した動物について、ほかの動物園や動物商との等価交換は常時行っている」

「売り先を見つけるのには困らない」

 ただ、動物園同士の交換と異なり、動物商が介在する取引の場合、動物の行き先を把握できないことも少なくありません。

 実際、今年4月に鹿児島市平川動物公園が動物商に渡したコツメカワウソ2頭も、静岡市内のペット店で販売されているのが発見され、動物愛護団体が問題視するというケースがありました。

 坪井氏も「法律違反でなければ、犬猫以外はどんな生き物でも取り扱う。複数の動物園や水族館と毎年約20件、動物数で計100くらいの取引がある。
ペット店やブリーダーが買ってくれるので、売り先を見つけるのには困らない」と、取引の実態を明かします。

明治時代から存在、欧米では自粛

 日大生物資源科学部の村田浩一教授(動物園学)によると、動物商は日本には明治時代からおり、動物園の発展を担ってきた存在だそうです。

 でも欧米の動物園は40年以上前から、不明朗な取引や野生動物を捕獲することによる自然環境の破壊につながりかねないとして動物商の利用を自粛。動物園内での繁殖、動物園同士の交換によって種の保存、維持に努めています。

 日本は手狭な園が多く、特に大型動物の場合は、種の保存のために繁殖しても群れで飼育していくのは容易ではありません。余剰動物問題の解決には、動物商に頼らざるをえない側面があるのです。

 村田教授はこう指摘しています。

 「シマウマの事件は、特定の動物園の問題ではない。日本のすべての動物園・水族館が抱える構造的な問題の結果だ。動物園は、他園に渡すにしろ、仕方なく動物商に渡すにしろ、余剰動物の行き先に責任を持つべきだろう」

yahoo ニュース/withnews
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160608-00000001-withnews-bus_all&p=1



これで「飼えないけど繁殖させても動物商がいるから大丈夫♪」という構図が浮き彫りになった。これからは、動物園はぜひ軽々しく動物を増やすことを自粛してもらえたらと思う。

このように、日本の動物園には動物商を頼るという「構造上の問題」があるとしても、バロンの死には直結はしていない。ここでは動物取扱業者として四者がバロンとかかわっているわけだが、彼らがそれぞれの動愛法上の義務を果たしたかどうかが問題だと思う。

譲渡サイドとしては、シマウマの生態や飼い方について、それぞれの譲渡先に詳しく説明してしていないのであれば、天王寺動物園または動物商、もしくは両方にも責任があるだろう。「シマウマは馬のようにはいかないよ。もうすぐ二歳だしね。頑丈な部屋を用意しておいてよ。」などと言っておいたならば、「ちゃんと説明しておいたんだけどね。」と自己弁護するだろう。そんな言葉が聞けてない以上、説明義務を果たしているのかは怪しい。一方で、受け入れ側の飼い主と乗馬クラブには同じく動物取扱業者として、バロンというシマウマについてよく調べる義務があった。

その上でもし、飼い主が動物商から十分に説明されていながら、あのポニー用の飼育環境を選び、用意したのであればなおさら、適切な設備を準備しておかなかった乗馬クラブと同等、もしくはそれ以上の責任は免れないと思う。「バロンはおとなしくて人に慣れているから、よっぽど大丈夫だよ。」などともし言われていたのだとすればまた話は違ってくるので、表に出て真相を話せばいいと思う。が、出てこれないには理由があるのだろう。

この事件の原因を調べて行くうちに、いろいろと気持ちが揺れ動いたこともあったが、突き詰めるとこう言わざるを得ない。

飼い主と乗馬クラブの無理解と考えの甘さがバロンを逃がし彼の死を招いたと言えるが、動物園が終生飼えないのがわかっていながら繁殖させたことが、この事件の大元なのだと。

動愛法第七条5  
動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

あの繁殖の仕方が「みだりに」なのか、そうではないのか、やはり「みだりに」が逃げ道になりそうだ。条文の曖昧な表現が動物たちの不幸な死を招いていることを、誰が否定できようか。法律は人を守るためにあるのではなくて、ずるがしこく逃げるためのものであるという言葉もあながち嘘ではないのでは?と残念ながら思ってしまうのだ。結果として大勢の人間がバロンを殺してしまったことを、決して忘れてはいけないと思う。

今、動物園は動愛法から切り離され、運営しやすいように独自の動物園法を作ろうとする動きがあると聞く。この事件がそれを阻止し、いい加減な繁殖や譲渡を抑制するきっかけになれば、バロンの死は無駄にはならない。


力なく対岸へ這い上がろうとするバロン
この後水中に崩れ落ちた
ロープを使いたいのならば今でしょ?
でも周りには誰もいない謎


Photo by 天王寺動物園




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
可愛かったバロン (はるな)
2018-08-19 03:37:31
樹音さま、初めまして。
はるなと申します。
バロンの事件の記事を、全て読ませて頂きました。
2年経った今も、バロンの事が忘れられず、このブログに辿り着きました。

こんなにも、丁寧に調べて下さり、本当にありがとうございます。

御礼申し上げたく、コメント残させて頂きました。
これからもブログ読ませて頂きます。
陰ながら応援しております。
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ありがとうございます。 (樹音)
2018-08-21 10:41:17
はるなさま、
嬉しいコメントありがとうございました。

悪気はなかったにせよ、結果的に長時間苦しめられて命を落としたバロンは本当にかわいそうでした。

その後も加害側はそれぞれ動物脱走事件、馬失踪事件を起こし、彼らにとって動物たちの命が軽いまま?!なのが悔しいところです。

公立の施設さえ愛護法が遵守されていない日本のレベル、何とかしたいものですね。

それには多くの人たちが声をあげ、事実を広めようとすることから始まると思っています。
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