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日本の政治と社会、日本のリベラル、沖縄の「基地問題」、東アジアの外交・安全保障、教育などについて述べていきます。

香港の悲劇:習近平指導部の暴走と日本リベラルの体たらく

2020-07-08 05:49:21 | 日本の政治・社会
香港国家安全維持法が6月30日の中国全人代常務委員会で決定され、翌7月1日に執行された。香港の一国二制度は根本から覆された。平和的なデモを禁止し、公立図書館からは民主派が書いた書籍を撤去し、令状なしで強制捜査を可能にするなど、習近平指導部による強権発動は露骨である。しかも、一国二制度の破壊は、世界が新型コロナで混乱している真っ只中に、国際社会からの批判をせせら笑うかのように断行された。

人権問題などで海外からの非難を中国政府が撥ねつける際に、必ず使う常套句が「内政干渉するな」である。かつて、日本や欧米列強の武力侵攻を許した歴史が、中国人のトラウマになったことは理解できる。だが、中国指導部は過去の屈辱を逆手に取って、自らの強圧的な体制を正当化し、海外からの非難を封じ込めようとする。しかし、中国は責任ある大国として国籍に限らず基本的人権を守る義務を負う。さらに、香港の一国二制度は単に中国の国内問題ではなく、香港返還時の国際公約でもあったはずだ。

この事態に対し、日本の各政党は懸念や憂慮の意を表明したが、その中国指導部批判は弱々しいものである。中国を強く批判すれば日中関係が悪化しかねないとの危惧があるからだ。だが、人権抑圧を黙認して得られる良好な日中関係とは一体何なのか。

「今日の香港、明日の台湾、明後日の日本」と言われる。国際社会が中国政府の香港政策を指弾している今、日本が及び腰の態度で臨めば、やがて中国からの強烈な圧力を日本自身が直接受けることになる。尖閣周辺でその動きは既に始まっている。

奇妙なことに、リベラル系、特に護憲派と呼ばれる文化人や言論人たちは、香港問題で見事なほど皆沈黙している。沖縄基地問題などに関しては積極的に発言する人たちも、中国の表現の自由の問題には口をつぐむ。憲法9条の理想主義を崇める人々は、なぜ香港問題に無関心でいられるのか。

自民党の国会議員たちが、習近平主席の国賓としての訪日を中止せよと、党本部と安倍政権を突き上げている。彼らの一部は、反中国の排他的なナショナリストである。もし、リベラル勢力が香港問題で中国に厳しく抗議しなければ、日本の中国批判はタカ派の色彩を帯びるであろう。しかし、中国指導部への抗議はあくまで「人権」をめぐるものであり、民族主義とは一線を画すべきものだ。だからこそ、リベラル勢力が声を上げることが重要なのである。

世界はおろか、お隣の香港で起きている悲劇にすら目をつぶるのであれば、日本のリベラルは、世界がどうなろうと日本が平和であれば良しとする「一国平和主義」、「平和ボケ」と呼ばれても仕方あるまい。今こそ日本に、抑圧体制に対して果敢に抗議し行動する、まともなリベラリズムが求められているのではないか。


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