10年前の話になるが、私はタイでの生活にすっかり溶け込んで普通の日常を送っていた。
タイに行くまでは友人と呼べるのはごくわずか・・・対人関係をうまく築く事が非常に困難だった。
が、タイに行くと案外、外国人達とはうまく仲良くなれた。
きつくハッキリものを言う性格が役立ったみたいだ。
そんなだから毎日、西にホームパーティあれば誘われ、東にタイ人の華道教室が開かれると言えば冷やかしに・・・気が付くと路上でニューハーフのお姉さんたちとランチしてる、なんて暮らしを満喫していた。
・・・だから、日本へ帰国するとたちまち私の心は病気になった。
道を歩いていても頭の中では、タイでの近所の道を描いていたし。。。
下駄箱とザルと言う単語がどうしても思い出せなくて少しどもったりした。。。
決定的に「自分がおかしい」と気づいたのは近所の公園を一人歩いている時だった。
全ての景色がモノクロに映った。
一年中、原色の花が咲き乱れ香り豊かな実を付ける木々がココソコにあったんだもの・・日本はまだ春だし・・そう考えたが、私には公園の木も花も沼の水も色が見えなかった。
自分の目で見ている現実と受け入れられない心とが折り合いつかなかったのだ。
そんな時、以前からブログに登場している謎の外人
じぃさんM氏は
「時間が経つのを待ちなさい。いいから寝て待ちなさい」と何度も言った。
「ただダラダラ過ごしていれば何も考えなくてもちゃんとうまく動くようになる。
だって、アナタは、な~んにも悪いことしてこなかったもの」
「がんばらなきゃ、がんばらなくっちゃ」その頃の私は、年中そう言っていた気がする。
今も彼が言った「がんばる、はダメよ」の言葉を思い出す。
-----2007年-----
新年の挨拶に久し振りに電話した。
「やっぱりアナタね~」と嬉しそうに話すM氏だが、じつはここ数年、鬱病を患っていた。
辛い思いのたけをポツリポツリと語るM氏・・
今まで一生懸命病気を隠して“元気じぃさん”を演じていたんだろうな。。。
「Mジィ、がんばるはダメよ」
-----無言になってしまった。
「今までさ、な~んにも悪い事してこなかったんだから大威張りで寝てていいんだよ」
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「昔、私が病気だった時、Mジィがそう言ったんでしょっ。私だって治ったんだからさ。絶対、がんばる、はダメよ」
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電話が切れた。
私は、元お坊さんの彼から救われる事が度々ある。
もちろん厳しく叱られることもあるが全てにおいて正しい。
こんな“役に立たない、おバカな私”一人でも頼りにしてると言う事が通じて、少しでも彼の心の安らぎや自信になってくれると嬉しいな。