本日は火力演習最終日(一般公開日)。
最悪の天候だった「総合予行」のリベンジにやってきました!
一般公開日は観客の出足が早いため、いい席を確保するためには早朝から会場入りする覚悟が必要です。いたっきいたち6名のパーティーはクルマで現地入りしましたが、まず先遣隊2名が会場後方で下車し先に陣地を確保、本隊はクルマを駐車場に入れた後に会場に向かうことにしました。
先遣隊は0540に会場到着、Eスタンド中段を確保します。
本隊は駐車場でシャトルバスに乗り換え、0615に合流しました。
ちなみに23日にご一緒したN氏からは、なんと0245に「我、現地展開セリ0220。視界劣悪ニテ詳細不明ナルモ、一個小隊以上ノ人員展開ノ気配アリ」との連絡を受け取っていたので、気合の入っている人は前日から会場に来ているようです。
点検射が始まる0620にはスタンド最下段まで埋まります。
シート席も、演習開始直前にはビッシリと埋まり、まさに立錐の余地がない状態になります。
演習開始を待つ2万4千人の観客
1010、陸将や富士学校長などのVIPが会場入り。
1015、風前の灯の小池百合子防衛大臣が入場します。
小池防衛大臣。辞任2日前の笑顔・・・
まさか来るとは。。。
観客の多くが驚きました。
1120、前段演習開始。
トップバッターは航空自衛隊第3航空団(三沢基地)のF-2A×2機。
航過にあわせて予め地上に設置してあった爆薬を起爆、模擬爆撃を展示します。
吹き上がる爆煙と、その上空を航過するF-2A
三沢から直接飛んできたF-2Aは、フェリー用大型燃料タンクを2本吊った、食いすぎの象より重いスタイルで登場、会場北東から南西に向かって進入します。例年はここで左に水平旋回して会場南側に抜けるのですが、今回は会場南側にある雲を避けるため直進してポップアップ、右上昇旋回して雲の切れ間から離脱しました。普段戦闘機を見ることのない多くの観客から、背中を見せてパワフルに急上昇するF-2の編隊に感嘆の声が上がります。
間髪いれず、特科部隊の射撃展示。
155mm榴弾砲FH-70、203mm自走りゅう弾砲、99式自走155mmりゅう弾砲が会場に進入します。
203mm自走りゅう弾砲 (M110A2)
99式自走155mmりゅう弾砲
特に99式は最新の国産火砲です。89式装甲戦闘車の車体がベースで、52口径という長砲身を持ち、射程距離は30km以上もあります。自動装填装置を搭載し毎分6発以上の発射速度を誇るため、これ1両で従来の火砲数門に匹敵する榴弾砲です。
これらの榴弾砲は、砲弾の着弾と同時に起爆する瞬発射撃、砲弾に内蔵するレーダーにより、砲弾を空中で起爆する曳下射撃をそれぞれ行います。仕上げに、起爆高度を細かく調整した砲弾により、富士山型曳下射撃を実施します。
富士山型曳下射撃
この射撃は、砲弾の飛翔速度が違う何種類かの火砲を同時に弾着させる必要があるため、高い練度が求められます。
つづいて迫撃砲の射撃展示。
81mm迫撃砲(L16)と120mm迫撃砲(RT)が射撃を行います。
120mm迫撃砲に砲弾を装填中
これらは軽車両で牽引でき、少人数で運用できるため、戦場で最も活躍する火砲の一つです。発射から目標への命中まで30~40秒かかるため、発射後素早く撤収して移動できます。敵に発射地点を突き止められて報復射撃を受ける前に陣地変換するわけです。
次に、近距離火力のひとつとして、歩兵携帯型のロケット弾、84mm無反動砲(84RR)と110mm個人携帯対戦車弾の射撃が始まります。
96式装輪装甲車。内部に兵士10名と各種ロケット弾を搭載
84mm無反動砲は、カール・グスタフと呼ばれるスウェーデンのロケットをライセンス生産しているものです。開発は1948年と、実に60年にもわたって使用されている兵器ですのでさすがに古さは否めず、後継の01式対戦車誘導弾に順次置き換えられつつあります。
110mm個人携帯対戦車弾は、ドイツ製のパンツァー・ファウスト3のライセンス生産品。そのルーツはナチスドイツ下のパンツァー・ファウストやパンツァー・シュレッケにまでさかのぼることができます。
110mm個人携帯対戦車弾の射撃
(拡大画像には、飛翔する2発のロケットが写っています)
続いて各種ミサイル。
64式、79式、87式、96式、01式と、40年前の旧式ミサイルから配備開始間もない最新のミサイルまで、一つずつ紹介され、射撃が行われます。
(新)73式小型トラックに搭載される64式対戦車誘導弾
この車両はパジェロベースで、平成13年度以降は「1/2tトラック」の名称で調達されている
64式対戦車誘導弾(MAT)はその名のとおり、正式採用から43年が経過している初期の有線誘導対戦車ミサイルで、1980年に製造が終了しています。飛翔速度が85m/sと遅く発射時のブラストも大きいため、発射位置やミサイルが敵に発見されやすいと言われており、後継の87式に順次更新されつつあります。自衛隊内にもそう多くは残っていないようですが、ミサイルがはっきりと視認できる「低性能」ぶりは観客からもよく見えるためウケがよく、火力演習では常連のミサイルです。
射手の位置を盛大に露呈しながら飛び出すMAT
79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)は、赤外線半自動誘導方式で、飛翔速度は200m/s。
87式対戦車誘導弾(中MAT)は、セミアクティブ・レーザー誘導方式で、飛翔速度は非公開ですが、音速前後かと思われます。
79式対舟艇対戦車誘導弾
96式多目的誘導弾システム(MPMS)は、光ファイバTVM赤外線画像誘導方式で、射程は10km以上。尾部から光ファイバを繰り出しながら飛翔し、操作員はミサイルの弾頭につけられたカメラから光ファイバを経由して送られてくる映像をモニタしながら誘導します。この方式はいくつかの国で開発が進められていますが、実用化したのは日本のみ。強力な弾頭を、敵車両や構造物、艦艇の上部から叩きつける仕組みで、世界でも最強の部類に入るミサイルです。
高機動車に搭載される96式多目的誘導弾システム発射機
地上誘導装置や射撃指揮装置など、数両の車両で1ユニットを組む
01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)は、84mm無反動砲を更新するものとして普通科部隊に配備が進められているものです。世界初の非冷却型赤外線画像誘導方式対戦車ミサイルで、シーカーの冷却が不要なことから即時交戦性が高いとされています。ちなみに、「マルヒトシキ」と発音します。
01式はFire & Forget、いわゆる撃ち放しができるミサイルで、発射後射手がミサイルを誘導する必要がありません。攻撃は、目標にまっすぐ向かう低伸弾道(ダイレクト)モードと、いったん上昇し上空から目標に向かうダイブ(トップアタック)モードを簡単に切り替えることができます。
01式をダイブモードで発射
いたっきいは過去十数回火力演習を見に行っていますが、そこで発射されたミサイルの数は優に100発を超えているはずです。それでも、たったの1発もマトを外したのを見たことがない。。。射手の腕もたいしたものですが、こういった精密誘導兵器が100%動作するのは文字通り「ありえない」ことです。モノにもよりますが、野戦誘導兵器の命中率なんて30~80%くらいなんです。
陸上自衛隊は魔法でも正式採用しているのでしょうか???
ついで航空部隊。
攻撃ヘリ、AH-1Sコブラが800m先の目標に20mm機関砲を射撃します。
前席のガンナーが照準器を覗き込んでいる
後席のパイロットは、機体が安定するよう細心の注意をはらっている
そして前段演習を締めくくるのは、陸の王者、戦車の射撃です。
74式戦車
相変わらず、いつまでも慣れない音と衝撃です。わざわざ演習のトリに戦車を出してくるのも、他とは違う強烈なインパクトを残したいからでしょう。砲声が殷々と響き渡り、観客が半ば唖然としている間に、前段演習は終了します。
20分のインターバルをおき、後段演習開始。
前段演習は各装備の射撃実演を行いましたが、後段では戦力を総合的に組み合わせて敵を撃破するというシナリオに基づいて行われます。
まずは航空偵察。
新型観測ヘリ、OH-1がその機動性を生かし、敵情を偵察します。
軽量小型でヒラヒラと舞うOH-1
OH-1はループ(宙返り)やロール(横転)、後方宙返りなど、これまでのヘリではできない動きもこなせる機動性があります。観測ヘリがでてきたら、次に出てくるのは当然。。。
AH-1Sが超低空飛行で進出
対戦車ヘリコプター、AH-1Sの登場です。
対戦車ヘリコプターの戦闘は、観測ヘリ1機、攻撃ヘリ2機を最小単位として行います。OH-1の観測結果に基づき、AH-1Sが機関砲で目標を攻撃します。なお、TOW(対戦車ミサイル)は3年ほど前の演習からいっさい発射しなくなりました。
続いて、ヘリボーンによる偵察部隊の進出。
UH-1Jがオートバイ斥候を降着させます。斥候を降ろしたUH-1Jは素早く離脱します。
偵察隊員を降ろし、離脱するUH-1Jのキャビン
身軽になったUH-1Jは、5.56mmMINIMIで援護射撃を行う
UH-60JAとCH-47Jが進入、ブラックホークからはレインジャー隊員がリペリング降下、チヌークからは高機動車が下車し展開します。
チヌークのカーゴドアから降機する高機動車
強力なパワーで軽快に上昇するチヌーク
いよいよ総火演もクライマックス!
矢継ぎ早に戦力が増強され、テンポの速い動きに観客席のテンションも次第に高まります!
朝からハイテンションのいたっきいには
何の関係もありませんが。。。
F-2の写真、感動です!自分はF-2しか見ていなかったのか(爆)、全体的な光景がまるでわかっていませんでした。
来年は私もこのような写真を撮りたいな☆