
以下は【エレクトラについて】
俳優に送信したメールに加筆したもの
♦️水に触れることができない女性(僕の知人の婚約者)
その催眠治療のお話
医師の言葉に従い彼女は深い催眠状態へとゆっくり入る
最後に医師が彼女に問いかける。
「なにが見えますか?」
その時、彼女は水の中に居て、その水の中から頭上に広がる水面を見ていた
「…水面が見えます」と彼女
医師が言う
「そこから出てみましょう、なにが見えますか?」
彼女はゆっくりとイルカのように水面へ浮上してゆく
彼女は叫び声とともに催眠状態から一気に目覚める
彼女が目にしたもの
それは表情のないイビツナな、母の顔であった
彼女の母は、幼い彼女を水の中に強制的に浸けていた
彼女に、その記憶は、一切ない
♦️定期的に見る夢のお話
その夢の中で僕は常に幼い
10才前後だ
僕は懸命に埋めている
庭に空いた大きな、大きな穴を埋め続けている
穴の底には僕が殺した人間の死体が横たわっている
何故殺したのか、それが誰なのか、いつも夢ではわからない
でも殺人の事実は真実として夢を支配している
僕はただただ必死に穴を埋め続けている
目覚めてしばらく
人を殺した手応え、確信、恐怖、罪悪感
見つかった時の社会的制裁への怖れがありありと残る
♦️舞台について
構造上、エレクトラという戯曲世界を通ることで男は別の何かと繋がる
それはエレクトラと関わりのないもので構わない
しかしエレクトラだから繋がった何か
男の記憶の奥に眠る記憶
遺伝子に眠る記憶
人が宿命的に背負い続ける業
エレクトラという戯曲世界を通る男の経験は
上記、催眠を通り抜ける経験と似ている
僕が定期的な夢を見る経験とも近い
そう考えると割とわかりやすい
ずっとずっと彼方に眠るものとの対峙
意識の奥で、その世界と繋がる
♦️
鉄のような冷めた目線と頭脳で
憎悪や暴力のメカニズムを解きほぐす作家、政治家は沢山居る
すごいと思う
頑張ってほしいし、希望を抱いたりもする
でも、システムを否定するつもりはないのだけれど…
彼らの頭脳が示す新たなシステムが人間を幸福にすると、信じ切ることができない
僕らの細胞に染み付いた記憶は
如何ともし難くここにあり
これからもある
システムでそれを排除しようとしても無理があり
限界がある
それは消えないのだ
♦️
僕らが提出しようとしている舞台が、その身体が
それがたとえ希望になど見えず狂気にしか見えなかったとしても
希望を摑もうとする痕跡が残れば良い
兎にも角にも先ずは対峙する
その世界に眠るものと
ある明晰さの中で、明るく、静かに、絶望しつつ
鮮やかに孤独を飼い馴らし
そして考えてゆこう
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