見出し画像

身体の景色 (karada no keshiki)

2012.9.17 エレクトラについて

過去の演出ノート、論考等、随時こちらのブログにアップしてゆきます。
以下は【エレクトラについて】
俳優に送信したメールに加筆したもの



♦️水に触れることができない女性(僕の知人の婚約者)
その催眠治療のお話

医師の言葉に従い彼女は深い催眠状態へとゆっくり入る
最後に医師が彼女に問いかける。
「なにが見えますか?」

その時、彼女は水の中に居て、その水の中から頭上に広がる水面を見ていた
「…水面が見えます」と彼女

医師が言う
「そこから出てみましょう、なにが見えますか?」

彼女はゆっくりとイルカのように水面へ浮上してゆく
彼女は叫び声とともに催眠状態から一気に目覚める

彼女が目にしたもの
それは表情のないイビツナな、母の顔であった

彼女の母は、幼い彼女を水の中に強制的に浸けていた
彼女に、その記憶は、一切ない


♦️定期的に見る夢のお話

その夢の中で僕は常に幼い
10才前後だ

僕は懸命に埋めている
庭に空いた大きな、大きな穴を埋め続けている
穴の底には僕が殺した人間の死体が横たわっている
何故殺したのか、それが誰なのか、いつも夢ではわからない
でも殺人の事実は真実として夢を支配している
僕はただただ必死に穴を埋め続けている

目覚めてしばらく
人を殺した手応え、確信、恐怖、罪悪感
見つかった時の社会的制裁への怖れがありありと残る


♦️舞台について

構造上、エレクトラという戯曲世界を通ることで男は別の何かと繋がる
それはエレクトラと関わりのないもので構わない
しかしエレクトラだから繋がった何か

男の記憶の奥に眠る記憶
遺伝子に眠る記憶
人が宿命的に背負い続ける業

エレクトラという戯曲世界を通る男の経験は
上記、催眠を通り抜ける経験と似ている
僕が定期的な夢を見る経験とも近い

そう考えると割とわかりやすい

ずっとずっと彼方に眠るものとの対峙
意識の奥で、その世界と繋がる

♦️
鉄のような冷めた目線と頭脳で
憎悪や暴力のメカニズムを解きほぐす作家、政治家は沢山居る
すごいと思う
頑張ってほしいし、希望を抱いたりもする

でも、システムを否定するつもりはないのだけれど…
彼らの頭脳が示す新たなシステムが人間を幸福にすると、信じ切ることができない

僕らの細胞に染み付いた記憶は
如何ともし難くここにあり
これからもある

システムでそれを排除しようとしても無理があり
限界がある
それは消えないのだ

♦️
僕らが提出しようとしている舞台が、その身体が
それがたとえ希望になど見えず狂気にしか見えなかったとしても
希望を摑もうとする痕跡が残れば良い

兎にも角にも先ずは対峙する
その世界に眠るものと

ある明晰さの中で、明るく、静かに、絶望しつつ
鮮やかに孤独を飼い馴らし

そして考えてゆこう
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「演出ノート/論考等」カテゴリーもっと見る