『サルデーニャの蜜蜂』
内田洋子さんの本は読んだ事あったかどうか定かでないのですが、この本はとても良かったです。
内田さんはずっとイタリアに住んでおられるジャーナリストと文筆業をしている方のようですが、イタリアに根を下ろしていらっしゃる感じが文脈からひしひしと伝わってきます。
この本はフィクションではなくて、内田さんが実際に行った所、会った人、起こった事を書かれています。ノンフィクションとは思えない凄いお話ばかり。ここに出てくる場所や人々は予想を超えたイタリアの深さを感じさせてくれます。
特にイタリア南部の島や山岳部に暮らし、自分たちの独自の生活を脈々と続けている人々の存在が日本のような中央集権的な国とは全く違うイタリアという国を感じさせられました。
ちょっと前にTVで見た、イタリアでは古くからたくさんの種類の羊がいたのだけれど、今では多くの地域的な特性のある羊は激減してしまった、というのを思い出しました。減ってしまったという話でしたが、それ以前に多種多様な羊がいたというのに、まず驚かされたのを思い出しました。
そして、この本の題名になっているサルデーニャの蜜蜂はなんとローマ時代!からずっと世襲で蜂を飼ってきた人達が出てきます。蜂が同一の花の蜜だけを集めるように移動しながら暮らしている人達。
色々な花の蜜がある中、古代ローマ皇帝もお気に入りだったというものまで!
それぞれのお話に意外性と地域性と深みがあって、しみじみとするものばかりです。
内容もすごく深いのですが、内田さんの出会いの力、取材の力、言葉の力の素晴らしさに驚いたエッセイでした。
そして、日本から見た表面的、印象としてのイタリアだけではなく、歴史や地理的なものに根ざしたイタリアの本当の姿をもっと知りたいと思いました。
この本はイタリアの書店員連盟からの「金の籠賞」を受賞したそうです。
イタリアは新型コロナの初期に感染拡大が激しかった国の一つですが、ここに出てきた地域でも影響は大きかったと思います。ご無事を祈るとともに、早くイタリアとも行き来できる日が来て欲しいと願いました。