ミケマル的 本の虫な日々

『人とミルクの1万年』 人類の叡智が詰まってる


連日の新型コロナの情報はじわじわメンタルも攻めてきますが、読書による逃避という技で精神安定を得ようとしているのか、2月、3月は11冊ずつ読んだようです(読書アプリのビブリアによる)

3月の最後に読み終わったのは『人とミルクの1万年』です。

岩波ジュニア新書の人類がどのように家畜のミルクを利用し糧としてきたかという本です。

東アジアは酪農文化圏ではないそうなので、日本人にとっては身近になったのは近代になってからだけれど、家畜のミルクを利用するということは1万年の歴史があるのか❗️

まず、本の題名に感動してちょっと前に買った本です。

とても興味深い内容でした。






著者の平田さんはユーラシア大陸の各地でフィールドワークされた方で、主に遊牧民の乳文化の調査研究の第一人者のようです。

 実際に経験され、観察された事をもとに書いているので、学術的な中にも遊牧の民への尊敬の気持ちや温かみがあって、とてもいい本でした。

 羊や山羊からミルクを取って(搾乳)利用するという事を始めたのは、西アジアの乾燥地帯の人々。

今でも遊牧民が家畜を移動させながら暮らしている地域です。

乾燥した草原で暮らすために、ミルクを利用するというのがとても有用だったというのは、想像できますが、その西アジアの遊牧民の人々の中には、ほとんどの栄養をミルクとその副産物から取っている人達がいるそうです。

 日本ではミルクというと牛乳がほとんどですが、多くの遊牧民は羊や山羊が主だそうです。

遊牧民が家畜の肉を食べるよりも家畜を減らす事なく長期間得ることのできる栄養源として搾乳という方法を見出したのは、1万年前の大きな産業革命と言えます。

 考えてみれば、自分の子供にしかあげない母乳を人間に絞らせるようになるというのは、すごいことです。

 羊や山羊は繁殖期が決まっているので、出産後のミルクを出す期間も決まってきます。

なので、ミルクを絞った後に、ミルクを得られない時期のために様々な保存のための加工をする技術もまた西アジアで始まったようです。

 基本的には
ミルク→加熱してヨーグルトに→振盪によりバターとバターミルクに分離
→バターはさらに加熱して保存のきくバターオイル
 バターミルクは加熱脱水してチーズとホエイに

バターオイルとチーズは長期保存ができる。

 ヨーグルトやホエイは水分補給のためにも利用されている。

また、ミルク→リンネット(子畜の第四胃)を加えてヨーグルトに
→静置脱水してチーズとホエイに分離
→チーズはさらに乾燥させて保存のきくチーズに

 
 西アジアから南アジア(インドなど)、冷涼な気候の北アジア(モンゴルなど)、にそれぞれ伝わり、気候に合わせた特徴を持った加工が行われるようになりました。

私が好きなフランスなどヨーロッパの熟成チーズも西アジアから搾乳やその加工が伝わったあと、湿潤なヨーロッパで生まれたものだそうです。

 ヨーロッパではそれぞれの地域で特徴を持った乳製品が作られるようになり、特にチーズはたくさんの種類が作られています。

 
世界を見渡すと、ミルクを栄養として利用していない地域もあり、日本を含む東、東南アジアや南米、オセアニア、アフリカの赤道直下の地域などが非乳文化圏とも言うそうです。

 非乳文化圏である日本では栄養の補助となる食品やデザートなどの嗜好品として乳製品が利用されているわけで、日本にいるとミルクの重要性が体感できにくいです。
 
 でも、日本でも牛乳は戦後の食糧難で栄養が十分取れなかった時期に給食に利用されて、子供の栄養の補給に役立ったということもありました。

 今では、日本では乳製品は脂肪分などの問題であまり推奨されない感じもありますが、人類にとっては搾乳によって得られるミルクとその製品は生きるための叡智の賜物なんだなと知ることができ、とても興味深かったです。


 
 

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事