『ダーウィンが愛した犬たち』進化論を支えた陰の主役
エマ・タウンゼント 渡辺政隆訳
ダーウィンは1831年からのビーグル号の航海でガラパゴス諸島に寄り、そこでの観察をもとに進化論を考察したというのが有名です。
ガラパゴス諸島のフィンチという小さな鳥が地域によって少しずつ違いがある事などから、自然淘汰説というものを考えたと。
しかし、ダーウィンはビーグル号の航海から相当経ってから進化論の論文を書きました。この本でもダーウィンは慎重な性格だったと書いてあります。当時のキリスト教世界では全ての生き物は神が創造したものとされていたので、進化するという事自体が受け入れ難いものだったので、その表現の仕方は非常に難しかった。
そんな中で、生物は進化しているんだという事を理論的に整理したダーウィンはやっぱるたいした人だなと思います。
この本ではダーウィンがこの進化という物を考えた過程で、犬が大きな役割をしていたという事が書かれていました。
ダーウィンの生まれた家も自分の家庭も動物が好きで、特に犬を愛していてたくさん飼っていた。残された家族の手紙の中にも、家族のメンバーの事と同じくらい飼っていた犬の話題がたくさん出てきていたり、写真が残っていたりして、ほのぼのとした感じが伝わります。
ちょうど19世紀のこのくらいの時期にイギリスでは多くの家畜の改良が熱心に行われていた事。そして、犬も多くの犬種がブリーダーの交配によって確立されてきた時期だった事がまず犬が好きだったダーウィンに「種」とは何か?「受け継がれる形質」とは何か?という疑問を持たせたという事です。
その時点では遺伝子などの概念はまだなかったけれど、同じ犬という種の中でも色々な犬種が生まれる事、家畜の改良も同じ牛や馬などの種の中で人間が選択的に改良していくことが出来る事が進化論の下地になっていたとのこと。
ただガラパゴスの観察から得た発想だけで進化論を構築したわけでないのかと、すごく興味深く読みました。
人工的に淘汰する家畜に対しての自然界での淘汰という概念が出てきたのかというのも、なかなか説得力があります。
進化論の話も面白いのですが、ダーウィンの家族が犬を愛していることがひしひしと伝わって、とっても楽しい本でもありました。
そして、進化論のために色々な非難も浴びただろうし、そこから生前は利益を受けたわけではなかったということだったダーウィンが、とても満ち足りた老後を過ごしたという事を知って他人事ながら良かったな〜なんて思いました。
この本は2020年12月に発行された本で、県立図書館の新刊本のところにありました。こういう本はなかなかこちらの本屋さんの店頭には並ばない本だから、図書館で見なかったら読まなかったかもしれません。
図書館はありがたいなとしみじみ思いました。