『風の歌を聴け』
村上春樹再読第三弾は村上さんのデビュー作
有名な冒頭の文
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
この本を初めて読んだのが何時だか忘れましたが、2000年代になってからこの講談社文庫を買ってるようなので、書かれてからだいぶ後ですね。
長編小説では『羊をめぐる冒険』と『ノルウェイの森』は単行本で買ってあるけど、他は後から文庫で買ったのだな〜。
2007年発行の版なので、多分12〜3年前の村上春樹マイブームの時に読んだのかな。
そして、この本も鼠という友達が出てくるのと、行きつけのバーがあるのくらいしか覚えてなかったし、前回読んだときはあまりピンと来なかったような記憶がありました。
しかし、今回再読してみたら、これは凄い小説なんじゃない!と思いましたです。
世の村上ファンに今更かい!って怒られそうだけど、これがデビュー作ってやっぱり村上さんすごいわ❗️
YouTubeで本の解説してる30代の男性が、学生の時に読んだときはピンと来なかったけど、今読むと良かったって言ってたのですが、私なんて今になってやっと良さがわかったという(笑)
私の精神年齢が相当低いってことか〜、でも考え方によっては精神年齢が若いってことかとポジティブに考えることにしたのだった。
村上さんがこの小説について、自分の書きたいことは最初の章に全部書いちゃったと思うというような事を言っているそうですが、この本にはここから村上さんの著作が始まり、そしてここから今まである意味一貫している主題のようなものがあるように思いました。
ただね、それをわかりやすく語ってはいないので、私にはさらっと読むとよくわからなかったんですね。
主人公の僕とその友人の鼠の話ではあるけれど、大事なことは脇役であるラジオのDJやバーの主人ジェイ(唯一名前がついてる人)などに語らせていて、僕はなんだか淡々と語る。
そんなところも、これからの村上さんの本に通じるものがあるように思います。
あと、鼠が小説を書くのだけど、その中にはセックス描写が無く人も死なないっていうのが、村上さんの小説との対比になってたのかなとかも。
そしてなんと言っても最初から最後まで主役級に出てくるアメリカの作家「デレク・ハートフィールド」
本当に居そうなアメリカの作家。
私は最近まで実在の作家かと思ってたよ〜。
出版された時に同じように思って図書館で盛んに検索されたらしいです。
アメリカ文学については代表的な人しか知らないけど、ある意味典型的なアメリカの小説家って感じがした。
この本の中でのこの作家が書いたとする言葉がこの本の中で重要な役割を果たしています。
この本が書かれたのは1979年、本で描かれているのは1970年の夏。
思えば50年以上前を舞台にしてるけれど、全く古さを感じない。
もちろん、携帯が無いとか、みんながどこでもタバコ吸ってるとか、飲酒運転に甘かったとか、色々と時代は感じるけれど、物語としては新鮮に読めました。
物語の構成の意外さは今でもすごいなと思うけど、出版当時は相当なインパクトがあったんだろうなと思います。
そして、私は今になってやっとこの本の底辺に流れる絶望と、その淵を足を取られずに歩くための灯りのようなものを少しだけ感じることができたように思います。
これから何回も読み返してみようかなと思うようになりました。
この『風の歌を聴け』に続く『1973年のピンボール』と『羊をめぐる冒険』が僕と友人の鼠の物語で、鼠三部作って言われています。
早く次が読みたい病にかかってしまったけど、なるべくゆっくり読もうと思います。