『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 村上春樹
1985年に書かれた小説。
二つの世界が描かれている事とそれぞれの世界のイメージだけしか覚えてなかったのに、一番面白かったと思ってた本です。
すっかり忘れていたので、再読というよりは初めて読むのと同じ感覚で読みましたが、やっぱりすごく面白かった❗️
「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」のそれぞれの世界が交互に語られます。
「世界の終わり」は僕、「ハードボイルド・ワンダーランド」では私が主役です。
このお話の登場人物には名前がないのも特徴かな。
「世界の終わり」は壁(塀)に囲まれた街の中に僕が入るところから始まります。
なぜこの街に来たか、以前は何処にいたのか、過去のことは忘れてしまっています。
街といってもある意味打ち捨てられたような寂しいところ。
草食動物が飼われているのだけど、その動物が謎の一角獣。
街に入った僕は色々と理不尽な決まりを経て、夢読みという仕事をするのでした。
この世界はグレー(モノトーン)なイメージ。
「ハードボイルド・ワンダーランド」以下「ワンダーランド」は私が謎のクライアントに会いに行くところから始まります。
こっちも謎だらけ(笑)
謎の建物の中で、謎の女の子に会い、ナルニア国の入り口のようなクローゼットの奥の扉出てくるし、謎の「やみくろ」とか、「博士」とか、滝の奥の研究所とか、読めば読むほど謎がたくさん出てくるし、状況説明も結構複雑ですが、スルスルと読めちゃうのは村上さんの文章力?
こちらの物語の中の私はこれから望まないのにどんどんとハードボイルドな展開に巻き込まれていきます。
この巻き込まれ方がスリルとサスペンスでまさにハードボイルド。
設定は結構複雑だけれど、どんどん引き込まれていきます。
『ロード・オブ・ザ・リング』のドワーフの洞窟から逃げるようなワンダーランドの危険な目にあってる場所の近くに馴染みの場所があるのが、凄い以外性が!
出てくる地名が千駄ヶ谷や絵画館前の銀杏並木や、地下鉄銀座線の青山一丁目など、東京に住んでた時に馴染み深いところが多くて戸惑う(笑)
この「ワンダーランド」はカラー冒険活劇って感じで進みます。
「世界の終わり」では僕が今いる場所で色々と悩み模索していきます。
全く異質な世界に思えるけど、お話が進むうちに「世界の終わり」と「ワンダーランド」の繋がりが徐々にわかってきます。
そして、どんどん面白くなって先が読みたくなるパターン。
以前読んだときは、とにかく加速度的に読んでいたので、読み終わった印象が面白かった❗️だけだったんだな、きっと。
今回は落ち着いてメモしながら読んでたので、読み終わった後に色々と考えることができました。
この本は村上さんの特徴である読みやすい文章と内容の奇想天外さとストーリーの面白さで、普通に読むだけで面白い本です。
ただ、それだけでなくて、人間の心ってなんだ?とか、深層心理などについての問題提起や組織と個人の問題などの色々なことが含まれていて、結末を読んだ後に色々と自分で考える要素が増えちゃう本でもある。
前回はストーリーを楽しんだんだなと思うけど、今回はある程度きちんと読んだので、その奥にあるものを少し考えることができたかなと思います。
それだけじゃなくて、村上さんらしい細部の面白さや音楽、女性も特徴的に描かれていて、なんかやっぱり凄い小説だな〜と思いました。
まだ語り尽くせないけど、長くなったのでまた書きます。
やれやれ(すっかり村上風)