介護老人保健施設の体験記(3):
この施設に入所している老人たちは、一応患者さんと呼んでいいのだろ
う。みんなどこか悪いから入ってきてるわけだから・・。
どこか悪いわけだから、気分が爽快であったり愉快であるはずはない。
ぶすっとした表情の人が多い。
わけもなく敵意のある表情でこちらを睨みつけている患者がかなり居る。
なるべく目線を合わせないようにするしかない。
人数はざっとテーブルの数から計算すると全体で80人ぐらいは居そうだ。
完全にボケちゃってる人も数人は居るみたいだ。
一日中口を開けて寝ている人は植物人間みたいに見えるのだが、まさか
それなら病院に・・と思うが、病院もいまはコロナ騒ぎなので、永くは
入院できない。
赤ん坊爺さんクラスのボケた人たちの表情は、天真爛漫というか至福の
表情といえる。
その他のボケ気味の人たちは、自分で立って歩いたり、車椅子や歩行器
で移動したりしている。
ときどき「うわーっ!!」と奇声をあげる爺さんも居る。
テーブルをバンバン叩いている爺さん婆さんも居る。
神経のまともそうな人は20〜30人ぐらいだろうか?
気の合った人どうしで雑談しているから分かる。
辺りを見回せば、なんとも気分が滅入る光景だ。
でも、こういう環境に放り込まれたからには、開き直るしかないだろう。
何週間か過ごす内に、それぞれの人たちにはそれぞれの家族があり、
それぞれの人生があるのだろうと思うようになった。
今ここに共に過ごす80人は、言ってみれば80人の大家族ともいえる。
そう思うと、朝、出くわした患者に「やあ!」とか「おはよう」とか
言えるようになった。
「孫悟空」とは朝晩、敬礼を交わす。
「大工の松五郎」は気むづかしいので、タイミングがむづかしい。
「松五郎」の耳たぶは、まるで奈良の大仏のように立派な形なのだ。
財産家なのだろうか?
「ひょうたん鯰」と「カッパ爺さん」は、挨拶などしなくても気にし
ないタイプだから気が楽だ。
レッサーパンダは孫悟空としか挨拶しない。
「あぶない婆さん」は、もとキャバレーのホステスでもやってたのだ
ろうか?やけに色気のある目線でこちらを見つめる。
メガネのホールウオッチャー女史はテーブルの前に腰掛けて、ホール
中を見渡して観察するのが趣味らしい。いかにもクールな感じだ。
その隣のゴリラ似のお婆さんは、無心な表情をしているが、時折一瞬
ではあるが、童女のようなあどけない表情を見せる。
その前に腰掛けているメガネのお婆さんは、元学校教師という印象を
受けるのだが、聞いてみると毛糸編み機の講師をしていたそうだ。
その横のテーブルには、いかにも俳句の師匠という感じのお婆さんが
あまりキョロキョロせずに慎ましやかに座っている。
ところがこのお婆さん、夜中には痴女になって女性患者のベッドに
這い上がろうとするらしい。
その前に座っている「ペタペタ婆さん」はテキトーにボケていて、
歩くときに靴をペタペタ音を立てて歩く。
そしてテーブルの違う他のひとの席に座りたがる。
その都度、介護士さんに連れ戻されている。
こういった夢遊病者みたいに動き回る患者はけっこう居るもので、
我輩も自分の車椅子を操作しながら、こういった患者の車椅子を
押して移動させていた。
その都度、介護士さんから「危ないからやめてください」と怒ら
れた。
かみさんとはよく話をするが、それに刺激を受けたのか、「大工
の松五郎」が車椅子で「長屋のおかみさん」の席へ話し込みに
行くようになった。
さらにそれに刺激を受けたのか、ボケ気味の「飲み屋の赤鬼ババア」
までが「お手振り爺さん」(ボケている)の席へ話し込みに・・。
新しく入ってきたのが「体育会系女史」。
背が高くバレーボール部かバスケットボール部の顧問をやっていたか
のような印象。どこが悪いのだろうと疑問におもうくらい、スタスタ
歩いている。
この女史は「お手振り爺さん」の面倒をよくみる。
「飲み屋の赤鬼ババア」が「お手振り爺さん」との会話に間が持てな
くなると、この「体育会系女史」を手招きして呼んでいる。
女史の顔は父親似なのだろう、おじさん顔だ。
午前4時頃、朝早くからホールの周囲(100m以上はある)をスタスタ歩
中を見渡して観察するのが趣味らしい。いかにもクールな感じだ。
その隣のゴリラ似のお婆さんは、無心な表情をしているが、時折一瞬
ではあるが、童女のようなあどけない表情を見せる。
その前に腰掛けているメガネのお婆さんは、元学校教師という印象を
受けるのだが、聞いてみると毛糸編み機の講師をしていたそうだ。
その横のテーブルには、いかにも俳句の師匠という感じのお婆さんが
あまりキョロキョロせずに慎ましやかに座っている。
ところがこのお婆さん、夜中には痴女になって女性患者のベッドに
這い上がろうとするらしい。
その前に座っている「ペタペタ婆さん」はテキトーにボケていて、
歩くときに靴をペタペタ音を立てて歩く。
そしてテーブルの違う他のひとの席に座りたがる。
その都度、介護士さんに連れ戻されている。
こういった夢遊病者みたいに動き回る患者はけっこう居るもので、
我輩も自分の車椅子を操作しながら、こういった患者の車椅子を
押して移動させていた。
その都度、介護士さんから「危ないからやめてください」と怒ら
れた。
かみさんとはよく話をするが、それに刺激を受けたのか、「大工
の松五郎」が車椅子で「長屋のおかみさん」の席へ話し込みに
行くようになった。
さらにそれに刺激を受けたのか、ボケ気味の「飲み屋の赤鬼ババア」
までが「お手振り爺さん」(ボケている)の席へ話し込みに・・。
新しく入ってきたのが「体育会系女史」。
背が高くバレーボール部かバスケットボール部の顧問をやっていたか
のような印象。どこが悪いのだろうと疑問におもうくらい、スタスタ
歩いている。
この女史は「お手振り爺さん」の面倒をよくみる。
「飲み屋の赤鬼ババア」が「お手振り爺さん」との会話に間が持てな
くなると、この「体育会系女史」を手招きして呼んでいる。
女史の顔は父親似なのだろう、おじさん顔だ。
午前4時頃、朝早くからホールの周囲(100m以上はある)をスタスタ歩
いて歩行訓練をしている「健脚お婆さん」がいる。
ご本人によると92歳だそうだ。「あんたも頑張れ」と激励された。
もう一人健脚お婆さんがいるが、100歳になるそうだ。
周囲に手を振って「オッす!」といって歩いている。
周囲を無視して本ばかり読んでいる爺さんも二人いる。
「本の虫」と「大正時代の小説家」だ。
「本の虫」は夜になると痴漢に変身し、女性患者の病室に忍び込む
らしい。ときどき人気のないホールで大声で女性患者の名前を叫び
続けているので、精神科の病院に行った方がよさそうだ。
「大正時代の小説家」は度の強い丸い黒縁眼鏡をかけ、ニコニコ顔
で自席と図書コーナーを行き来するだけであとは本を読んでいる。
周りとは没交渉だ。時代が違うから合わないのだろう。