バンコクの洪水は全く予断を許さない情勢になってきたようです。これまで、16日をピークとする大潮の影響でチャオプラヤ川の水位が上がり、バンコク都市部が冠水することが懸念されてきたのですが、北部から流れてくる水が想定以上に大量だということが分かってきたと、今頃になって当局が言い出したからです。バンコク都知事もそう断言しました。
これからは、私のように新聞の報道ばかり見ていては、バンコクの洪水の実態はつかめないような気がします。私が12日以来参照してきたタイの洪水マップも、もはや時差が生じてしまい、リアルタイムの実情把握には役に立たないかもしれません。現地の人が目にするものだけが真実という事態に入ってきたような気もします。
私の妻は、昨日午後の段階で、タクシーで通ったオンヌット・ソイ70のあたりの住宅地がひどく冠水しているというのです。膝のあたりまで。またシーナカリン通り近辺の水路があふれ始めていると言っています。シーナカリン通りは、バンコク東部といえば東部ですが、都心からそんなに離れてはいません。それらは洪水マップにはまだ現れていません。
またタイにお住いの方は、今朝のニュース番組から、「これからどうなるか分からない」という報道が繰り返されているのをご覧になっているでしょう。土曜日に、ちょっと知り合いの某タイ政府機関のトップの方に、お見舞いのメールを出したら、「どうなるか、さっぱり読めない状況になりました。」「この48時間が勝負で、もしそれをやり過ごせても、月末にまた、もうひと山、来ます。」という返信が今朝になって来ました。
さて、今日はバンコクの新聞各紙はもとより、ロイターなどの国際メディアは、今回の洪水の損害額を見積もるタイ政府の動きを伝えています。日本でも。
インラック首相は1000億バーツという割と控えめな数字を述べたようです。これより先に財務大臣は、今回の洪水のGDPへの影響をマックスで1.7%と、これまた控えめに発表しています。これらの数字は、GDPの40%を占める首都バンコクは大きな被害が出ない、という前提に立って算出されたものと思われます。同時に、インラック首相の率いるプゥアタイ党が選挙公約として掲げた、「最低賃金を300バーツに引き上げる」課題について議論が行われ、バンコクやプーケットなどの6つの地域について、来年1月からの実施を4月に延期する方向で決着したようです。
こんな事態になっても、インフレを加速しかねない政策をやはり本気で進めるのでしょうか?というより、本当に実行できるのでしょうか?
夕方のバンコクポスト紙によりますと、これまでにタイの20の都市で、14,000の工場が被害を受けました。それは66万3千人余の労働者の生活に深刻な影響を与えています。昨日浸水が始まったナワナコン工業団地だけでも227社、17万5千人が働いています。バンパイン工業団地とロジャナー工業団地にある会社に対して行われた調査によると、この状況下でも、これからも給料を払うという会社は、たったの30社だけなのです!ほとんどの会社は、従業員を解雇せざるを得ないのです。アユタヤだけでも、少なく見積もっても10万人がいっぺんに失業することになります。
こうした失業問題が待ち構えているというのに、インラック政権は、最低賃金を300バーツに引き上げられるのでしょうか?確かにアユタヤは賃上げの対象となる6つの地域に入っていないと思いますが、もしバンコクがセーフとなったとして、アユタヤでは大量の失業者、バンコクでは(失礼な言い方ですが)猫も杓子も50%の賃上げ。タイ政府はそんなことをやるのでしょうか。来年の春までに、水没した工場群の大半が操業再開できるなら、別の話になります。そうあってほしいと祈るべきなのでしょうね。
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