楽園づくり ~わが家のチェンマイ移住日記~

日本とタイで別々に生活してきた私たち家族は、チェンマイに家を建てて一緒に暮らし始めました。日常の出来事を綴っていきます。

日本の奥様と電話がつながった!

2016-07-05 11:46:30 | タイの暮らし

昨日の続きです。

10数年前、日本の家族と別れてタイで暮らすようになった男性は、パートナーのタイ人女性に家族の連絡先を教えていませんでした。もちろん私たちにも。ただ、日本の奥さんと正式には離婚していないこと、社会人の子供がいることは彼女に話していたようです。

さて、チェンマイの総領事館から帰ってすぐ、私は男性のパスポートに書かれていた日本の電話番号にかけました。でも、ずっと留守電になっていました。夜になって、留守電がピーっと鳴った後、思い切って話しかけました。すると女性が出ました。

「○○○さんの奥さんでいらっしゃいますか?」

「はい、そうですけど・・・?」

「私はタイにおられるご主人の近所に住んでいる○○と申します。ご主人とは連絡をとっておられますか?」

「い~え。もう何年も連絡がないんですよ。今どこに居るかもわからないんです。大使館に消息を問い合わせているんですけど、まだ返事がありません。」

「そうでしたか。お知らせしたいことがあって電話しました。ご主人は末期のがんで、最近はほとんど食欲がなく、体重が20キロも減りました。1年半前に前立腺がんと分かって治療されたんですが、最近は病院へも行っておられません。医者の話だと、がんになったのは相当前で、すでに転移しているそうです。申し上げにくいんですが、このままだとかなり深刻なような気がします・・・・」

「そうですか・・・・主人を日本に戻すことはできますか?主人は日本に住民票もないので、最近はマイナンバーですか、それもないので、保険とか、いろいろな手続きができなくて困っているんです。」

「私は何とも判断できませんけど、かなり厳しいような気がします。ところで、奥様はご主人がタイ人の女性と一緒に暮らしておられることはご存知ですか?」

「いいえ、どんな暮らしをしているか、わかりません。」

「もう10年以上一緒に暮らしているタイ人女性がいます。その女性がすごく心配されていて、今日チェンマイの日本総領事館に一緒に行ってきました。もしもの時にどうしたらいいか聞いてきました。私からお話しすると間違ってはいけないので、明日の朝にでもチェンマイの領事館から奥様に電話してもらいますけど、よろしいですか?」

長くなるので会話はここまでにしますが、私は子供さんのことなども尋ねました。奥様は、勝手にいなくなったご主人のことを恨んでいないし、怒ってもいないと言われました。男性は以前は1年に一回か二回、日本に帰っていたのですが、海外への転出届を役場に出し、年金もタイの銀行に直接送金されるように手続きしてからは、帰国されていないようでした。

私が奥様に電話した翌日、事態は急展開しました。

その日ゴルフに行った私は、朝8時半に外から領事館に電話しました。担当の方に前夜の奥様とのやりとりを伝え、できるだけ早めに電話してくれるよう頼みました。奥様は家に居るときでも、いつも留守電にしていることも、念のため言い添えました。

午後、ゴルフ場から戻って暫くすると領事さんから電話が入りました。

「急な話ですが、明日土曜日の朝、○○○さんの娘さんと息子さんがチェンマイに来られることになりました。大変恐縮ですが、空港に迎えに行ってあげたりすることは可能でしょうか?」

急な話であっても、週末とくに予定がなかった私たちは、出来る範囲で手助けすることを快諾しました。車を出すだけでなく、男性と同居しているタイ人女性は日本語がほとんどできないので、私の妻が通訳の役割をしてあげることになったのは言うまでもありません。

実は、翌日チェンマイ空港に降り立つことになった娘さんは、今年の3月、日本の外務省に父親の消息を調べてくれるよう依頼していました。奥様が「大使館に問い合わせている」と言ったのはそのことでした。手掛かりは、住民票の除票に記されていた、「転出先=タイ」という1点だけでした。チェンマイという都市の認識はなかったのです。調査には通常6か月くらいを要すると外務省から言われていた娘さんは、チェンマイ総領事館からの突然の連絡に「ずいぶん早い」とびっくりしたそうです。

総領事館によると、私たちがタイ人女性を伴って領事館を訪問したとき、外務省からの調査依頼文書はすでに届いていて、調査開始寸前だったようです。おそらくバンコクの日本大使館を経由しているのでしょう。私たちの話を聞いた直後に文書の存在を知った領事さんは、数奇な巡り合わせに驚いたそうです。

さて、私たちが領事館に行ったのは木曜日です。男性の長女は、翌金曜日の夜に弟を伴って日本を出発したのです。電光石火と言うべき、何とも素早い対応ぶりでした。実は男性の子供たちは、もう10数年、父親に会っていなかったのでした。(続く)

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6 コメント

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感激しました (のり3)
2016-07-05 15:40:54
小説を読んでいるような出来事ですね、うさぎさんの親切がこの結果をもたらしたのです。
うさぎさん夫婦とその男性の家族にアッパレ!!
不謹慎ですが早く続きを見たいです。
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早い行動ですね。 (スモール明)
2016-07-05 16:56:12
ご家族の早い行動ですね。タイ訪問。
そして、温かい、貴殿・奥さまのサポートですね。
「生きているうちに、会わないといけない。死んでからでは遅すぎる」生きているときに、お父様からのお言葉を頂戴しないと、子どもたちは、この先、精一杯生きていけない、生かされていけない、と思います。
会えただけでもよし、でしょう。
生まれた以上、死に向かって生かされていますからね。
誤解を招く表現でしたら、申し訳ないです。
言いたいことは、生かされていることだけで素晴らしい、ということです。
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みな温かい方々なのですね ()
2016-07-05 20:30:16
久しぶりに良いお話をうかがいました。

特に女性であるお嬢さまがこうやって乗り出してくるなど、信じられないくらい心温まるお話です。(「娘」というものは、こうなった父親など相手にしないものと信じ込んでいました。)

とにかく、大兄には先にご注意を受けたばかりのところでもあり、ぼくももっと人を信じてみようかなああああ。

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のり3さんへ (うさぎ)
2016-07-06 10:14:22
コメントありがとうございます。
もし小説だったら・・・父親や奥さん、子供たちそれぞれの心理の襞、葛藤を想像して書き込むでしょうね。

チェンマイに移住してきた日本人には、それぞれに事情のある人が多いのです。私・・・?それは内緒です(笑)
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スモール明さんへ (うさぎ)
2016-07-06 10:20:28
コメントありがとうございます。
ご家族には、かなり重い病状だというふうに伝わったと思います。だから急いで来られたのかもしれません。

子供たちに会ってから、男性は少しですが元気が出てきたように私には思えます。同居しているタイ人女性の今後のことも気遣われるようになったみたいです。
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Sさんへ (うさぎ)
2016-07-06 10:28:43
コメントありがとうございます。
男性は家族を放り出してタイに来られたのかどうか・・・詳しいことは知りませんが、奥さんや子供たちが辛い思いだったことは確かでしょう。

子供たちは、重病の父親をいたわる優しい気持ちと、きちんとケジメをつけてほしいという厳しい気持ちが交錯して、きっと複雑な心境でいられると思います。
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