家族や知り合いがタイに居る人をのぞいて、おそらく、ほとんどの日本人にとって、バンコクの洪水は遠い世界の出来事だったと思われます。つい数日前までは。
今日職場で、「バンコクの洪水は大丈夫ですか?なんか大変な洪水になってるそうですね。」と、初めて言われました。「いや、バンコクの中心部は今のところ問題なさそうですが、アユタヤが水没しているので、ホンダなどの日系企業は大変です。」
昼間、そんなやりとりをして帰宅したら、テレ朝の報道ステーションでバンコクの今の様子と、水没しているアユタヤの工業団地をリポートしていました。
例によって、テレビはごく一部の、インパクトの強い映像ばかりを切り取って、さも全体がそうであるかのような印象を人々に植え付けます。それはテレビ報道の習性です(功罪両方ありそうですね)。アユタヤは空撮で見せていましたから、それなりのリアリティがありますが、バンコクの洪水については何のデータも示さず、チャオプラヤ川の岸辺のところを見せて、今にも街全体が水没してしまいそうなリポートだったので、少々あきれ返ったのは私だけでしょうか?
またコメンテーターの鳥越氏が、「今回の洪水によって、空洞化が言われている日本企業の海外進出の実態をはじめて知りました」という趣旨の発言をされたことには、正直唖然としました。日本を支え、アジア諸国を支え、世界を支えている産業界の実態は、誰もが知っておくべきです。もちろんその背景にあるグローバル競争の真相も。
↓さて、バンコクの現在の浸水地域は、大体このようです。馬鹿の一つ覚えみたいですが、毎日この洪水マップを眺めています。バンコクの洪水が、わが家に迫っていないかどうか、確かめているのです。
http://apps.arcgis.com/hosted/OnePane/azuretwitter/index.html?appid=34d713d7671045779c7c0acb4a4b8b6c
昨夜(14日夜)までのところ、MCOT(チャンネル9)などタイの各報道機関は、周辺の一部の地域をのぞいて(周辺部の犠牲のうえに)、バンコクの大部分は洪水を免れるであろう、との政府見解を一斉に伝えています。
しかし、その根拠は、素人の私などから見ると、とてもとても危ういものです。バンコクポスト紙から政府関係者の考え方を引用すると、「チャオプラヤ川の水位上昇は、15日~16日の段階でも、2.3~2.4メートルであろう。一方、チャオプラヤ川の洪水壁の高さは現在2.5メートルである。よってバンコクは安全なのだ。」
う~ん。たった10センチの違いで安全と言えるのかどうか・・・・???????14日現在の水位は、通常より2.15メートル高いそうです。昨年の最高記録2.1メートルをすでに上まわっています。
またインラック首相は昨日、上空からバンコク周辺を視察した後の記者会見で、「今はよくコントロールされていて、水は引き始めている。バンコクの中心部で洪水の恐れはない。」と語っているそうです。
ただ、バンコク都知事だけは、避難計画の重要性を強く意識しているようで、「水位が2.3メートルを超えれば、人々は家にとどまれないので、避難させなければならない。」「高速道路上に住民の車を駐車させ、いざという時には、それを使って避難できるようにしよう。」と奇策を提案しているそうです。これが現実的なものかどうかは別にして、人々を安全に避難させることがいかに大変かを、都知事がよく認識している表れだと思います。
日本でも、行政の「避難勧告」の遅れが、多くの人命を失わせることがあります。タイ政府の安全宣言?に異議申し立てをするつもりもありませんが、一抹の不安でも残っている以上、絶対に警戒を緩めてはならない。それが自然災害に際したときの、行政の鉄則だと思います。
さて、これまでにバンコクを襲った洪水の歴史です。調べた範囲で、ごく簡単に触れておきましょう。
1785年 200年以上前のことで、記録の信ぴょう性のこともありますが、
何と4.25メートルと、津波のような洪水が押し寄せたそうです。
1819年 3.2メートルだったそうです。
1831年 「家の壁の一番上まで」といいますから、3メートル近いでしょうか。
1917年 バンコク内の全部の道路が冠水し、水が引くのに、1か月かかりました。
1942年 1.5メートルという記録ですが、それでも水が引くのに2か月かかっています。
1975年 毎秒4000立方メートルの水が押し寄せました。地盤沈下の影響がはじめて
指摘されたようです。
1983年 何と3か月以上たって水が引きました。66億バーツの損害。
1995年 今回の洪水の引き合いに出される、16年前の洪水です。
毎秒5400立方メートルという大量の水が押し寄せ、チャオプラヤ川の水位は
2.25メートル上昇し、大きな被害をもたらしました。
これを教訓に、2.5メートルの防護壁が築かれたものと思われます。
この時のバンコクの被害額は30億バーツ、バンコク以外の被害額は
500億バーツと桁違いの大きさでした。水が引くには2か月間を要しました。
今年のタイの洪水は、「50年に1度の洪水」などと表現されているのをよく目にします。でも、それは何を元に言われているのか、私には分かりません。治水工事や洪水防護壁も、年ととも進歩してきましたから、昔と比べると被害の広がりや人命の損失が少なくなってきたのは間違いないと思います。
ただ、確かに人命の損失に関しては、昔に比べれば減少しているのかもしれませんが、問題は、今回の洪水はアジアの大切な産業基地を直撃していることです。
すでにホンダは、代替する工場を検討しはじめたという報道もあります。日本にあった工場が海外に移転して、日本の産業の空洞化が進んだと言われてきました。今度は、タイの工場が別の国に移転して、タイの空洞化が進んだと言われることがあれば、それはタイにとっては、とても大きな損失だと思います。(正確に言えば、日本企業の海外進出によって産業の空洞化が進むという議論は、まやかしの議論です。
進出企業の方こそよくご存じと思いますが、日本の本社機能がしっかりしていなければ、海外進出などありえません。企業が日本から逃げ出したりしたのではありません。これについてはまたの機会に。)
ところで、一昨日バンコクのわが家で買った土嚢は、たった20個だということが分かりました。ひとつ60バーツで1200バーツ。加えて、運んでくる人件費に800バーツも取られたそうです。その2000バーツの、20個の土嚢を、日本で言う「玄関」前に積んだそうです。悪どいとは申しませんが、どんな時でも、どこの国でも、「商売商売」という人はいるもんですね。近所に600個も買った人がいるというのですが、一体どんな広い家なんでしょうか?土嚢に埋もれてなければいいんですが・・・・・・
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ご家族のご無事をお祈りしています。
土嚢そのものも人件費も高すぎるのです。市民の不安につけ込んで、荒稼ぎする輩だと私は思っています。世の中、常に機を見るに敏な人間が儲かるようになっているみたいです。