昨日のお昼過ぎに、妻を車でチェンマイ大学病院まで送った。
3日も病院内で待機して撮影したCTの結果を聞きに行ったのだ。
悪い結果も予想されたので、私は車中無言のままだった。
担当医が再度CT検査をするのには、それなりの訳があった。
8月に検査したときは右の腋の下に、それらしい塊が映っていた。
触っても、2センチくらいのシコリが認められた。
それが乳がんの再発かどうかは、1回の画像診断では確定しない。
時間の経過とともに大きさが変化するかどうかが問題となるのだ。
先週のCT検査では、転移の可能性のある部位も撮影した。
私が一番恐れたのは、遠隔転移の兆候が発見されることだった。
結果がわかる時が迫ってくると、私は自然と無口になったのだ。
2時間後に「終わったよ」という電話があっても、結果は聞けなかった。
「いまソンテオに乗ったから、あと20分したら市場まで迎えに来て。」
妻はそう言って電話を切った。
その声からは結果が推し量れなかった。
ソンテオに乗ったということは、ひょっとして悪くないのではないか?
もし悪い結果なら、「病院まで迎えに来てよ」と言うに違いない。
いつも買い物に行く市場に着くと、妻もちょうど着いたばかりだった。
妻は私の顔を見てニッコリと微笑んだ。
私はこれまでとは打って変わって、単刀直入に結果を訊いた。
「前よりだいぶ小さくなったんだって。」
「でも、小さくなるということは、やっぱりガンだって証拠だって。」
「小さくなったんで、手術するとしても保険が使えないんだって。」
「抗がん剤も、小さいから保険が使えなくて、自費になるんだって。」
私はタイの30バーツ健康保険の真実のひとつを知って驚いた。
がんの手術も、抗がん剤も、放射線治療も保険が適応される。
でも、がんが一定の大きさになっていなければ保険が使えないのだ。
この夏、妻は25回にわたって2度目の放射線治療を受けた。
30バーツ保険を使えたので、お金は1バーツもかからなかった。
がんが小さくなると自費診療でしか治療が受けられないというのだ。
それは喜ぶべきことなのだと考えるのに、時間はかからなかった。
腋の下の再発がんが縮小した理由はいろいろ考えられる。
最も可能性の高いのは、放射線治療が奏功したことである。
放射線治療は即効性でなく、ある程度の時間を経て効果が出る。
だから治療直後の8月の検査では、がんはむしろ大きくなっていた。
もうひとつの可能性は、9月から服用し始めた抗ホルモン剤である。
当初妻の乳がんはエストロゲンに感受性のないタイプと言われた。
ところがチェンマイ大学病院は妻のがん細胞の検体を調べ直した。
手術したバンコク病院に保管されていた検体を取り寄せたのだ。
その結果レベルは低いがホルモン感受性が少しあることが分かった。
だからチェンマイ大学病院の医師は抗ホルモン剤の服用を指示した。
理由はともあれ、妻のがんは縮小した。
小さくなったがんを切除するか、それとも、また抗がん剤を使うか。
これからの治療にはいつかの選択肢がある。
妻は費用の事もあるので私と相談してから決めたいと医師に言った。
私は、妻の今後の治療についてはっきりと決めていることがある。
遠隔転移が認められない限り、もう抗がん剤を無闇に使わない。
これまで都合4種類の抗がん剤を再発転移防止のために使った。
それによって激しい副作用に苦しむ妻の姿を見てきた。
術後に使う抗がん剤は、効くかどうかは誰にもわからない。
いや、再発したという事実は薬が効かなかった証拠ではないか。
妻は先月初めから補助療法として健康食品の服用もはじめた。
日本だと高価な補助療法だが、タイではそれほど高くない。
効く保証は全くないが、本人がぜひやってみたいというので始めた。
身体中にがんがあって、もう10年生きているという女性が来た。
その女性は、その健康食品を買ってくれとは一言も言わなかった。
ただ、自分の体験を話して帰っていっただけである。
丁度そのころに、妻の再発が強く疑われる検査結果が出た。
薬でないものにも「プラセボ効果」というのがある。
効く薬だと信じて飲むと、一定の改善効果がみられるというものだ。
改善どころか病気の種類によっては完治したという実験結果もある。
まがい物でも、プラセボ効果が出れば儲けものだと私は思った。
ともかく、妻の闘病はまだまだ続くことは間違いない。
最後はがんと共生して生きていくという道も本当にあるかもしれない。
だがその前に、切除手術をするかどうか決めなければならない。
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タイに住む私にとっても、妻は、一番の理解者であり、頼りにしているからです。
どうぞ、これからも、今まで通り、いや、今まで以上に、奥さんを、労わってあげてください。
私にとって、妻が元気でなければタイでの楽園は存在不可能ですので(笑)、2人でがんばって行きたいと思います。
おやじさんも、これまで以上にご家族を大切にしてあげてください。
癌が小さくなっていることに光を感じました。
私の子もタイの国立病院を利用してますが、
日本人御用達の高級病院より
お医者様方は臨床数が多い分、
案外信用できるのかも!と思ってます。
もちろん、どの病院でも医師のレベル差はありますけど。
奥様の癌がどんどん小さくなることを願ってます。
医者のレベルは臨床経験がものを言うので、確かに患者の多いラタバーンの病院、しかも難しい患者が行く大きな病院が概して安心できます。
時間はかかりますけど、タイの大学病院の医師はとても丁寧に診てくれますね。チュラとチェンマイの2つしか知りませんが。
逆に言えば、免疫の力で「がんを細胞のレベルで死滅させることが出来る間はがんを発症しない」とも言えます。
ですから、食事療法であれ、漢方であれ、奥様の免疫力(自然治癒力)を高める方法を積極的に取り入れられて、可能な限り薬害を抑えながら健康な状態に戻られることをお祈りしています。
それにしてもタイの保険制度には、ちょっとびっくりしました。
妻の病状はかなり改善しているようで、当面手術の必要もないと今日言われました。
私はチェンマイしか知りませんが、北部タイはどこも自然環境に恵まれたいいところですね。数年後が楽しみですね。時間がたつのはあっという間です。もうすぐですね。