妻の闘病の軌跡を記すのはこのブログの本旨ではないのですが、もう少し続けます。
その前に、昨日のニューヨークタイムスに気になる記事がありました。タイの総選挙についての詳細な分析記事です。今度タイの首相になるインラックは労働者の最低賃金を引き上げると約束していました。もしそれが実行に移されると、
賃上げについていけない中小企業が危機に直面し、タイ経済が大混乱に陥るというものです。
今のタイの最低賃金は詳しくは知りませんが、一日180バーツ(500円)くらいでしょうか。妻の妹夫婦がタイ中部のカンペンペットという田舎町で暮らしていて、2人とも建築屋さん(家づくり)で働いています。旦那さんは一日250バーツくらいで、奥さん(妻の妹)の方はもっと安く、190バーツしかもらえません。
タイ貢献党の公約どおり賃上げされるとすれば、労働者にとってはいいことです。でも経営者はたまったものではありません。
ごろごろと倒産に追い込まれる会社が出てくるというのがニューヨークタイムス紙の分析です。
さて、1年前に話を戻します。
お金がかかることで有名なバンコク病院で2回の乳がん手術を受けた妻でしたが、抗がん剤治療は費用のあまりかからない国立病院を選びました。
知人の推薦もあり、タイで最も医療水準が高い?と言われている国立のチュラロンコーン病院(大学病院)に行くことにしました。
バンコクに住んでいる人で、チュラを知らない人はまずいないと思います。BTSのサラデーン駅から徒歩5分もかかりません。ルンピニ公園の隣りですし、有名なデュシタニホテルの斜め向かいにある大きな病院です。
でも意外と日本人で行った人は少ないのではないでしょうか。
昨年私は妻の件で何度も行きましたが、一人の日本人も見かけませんでした。患者は全部タイ人ではないかとすら思えました。バンコク病院とはえらい違いです。
案の定、抗がん剤治療はすぐには始まりませんでした。1か月近く待たされました。
そして7月の中旬から「AC」と呼ばれる抗がん剤治療が開始されました。ドキソルビシン100mgとシクロフォスファミド1000mgを混ぜて点滴するのです。日本の病院でもこのACが多いのではないかと思います。3週間の間隔で4回投与します。
タイの医療はアメリカ流なので日本よりも1回の投与量が多いのが気になりました。3割は多いのではないでしょうか。副作用が心配です。
この3週間隔の4回の点滴が終わると、今度はパクリタキセルという薬(もちろん劇薬)を毎週1回、12週にわたって点滴します。これは「ウイークリーパクリタキセル」と呼ばれています。この組み合わせは乳がんにおける標準的な抗がん剤治療のひとつです。
費用は、はじめの4回分で約12,000バーツ(35,000円くらい)、パクリタキセルは少々お高くて1回4000バーツ、12回分だと14万円くらいです。
バンコク病院の使う薬とは種類が違いますが、100万円もかかる向こうの費用とは文字通り桁が違います。同じ自費診療でも圧倒的にチュラロンコーン病院が安いのです。
ところが、この途中、この抗がん剤治療の途中で、妻は別の重大な病気になってしまいました。詳しく書いているときりがないので端折りますが、「E型肝炎」という珍しい病気になったのです。
10月になって、突然肝臓の検査値が急上昇し、全身に黄疸があらわれたのです。医者は最初は抗がん剤の副作用か肝臓への転移の可能性を疑ったのですが、GOT、GPTの値が正常値の100倍を軽々と越えていきました。肝臓のCTをとりました。異常なしです。 とすれば急性肝炎です。Aから始まってEまで種類がたくさんあります。
医者は「劇症肝炎」の恐れがあるとして、それに備えた対症療法を始めながら精密検査を続けました。命にかかわるかもしれないのです。もう乳がんどころではありません。ただちに抗がん剤治療は中止となりました。
これにはさすがに即日入院させてくれました。さまざまな検査の結果、Eと判定されました。
「E型肝炎」は日本では珍しい病気ですが、実はタイでも珍しい。チュラロンコーン病院では、これまで3例しか確認されていなくて、そのうち2名が死亡しているというのです。
原因として考えられるのは、生の豚肉です。生の豚肉を使う料理はイサーン地方を中心に食べられているのですが、それでもE型肝炎の報告例はごくまれです。妻はそんな恐ろしい病気に突然なってしまったのです。
実は7月の末、実家のカンペンペットに行った折、生肉を食べたというのです。みなさんもタイに行かれた時は、豚の生肉には十分お気をつけください。やめたほうがいいです。タイ政府も食べないようにずっと呼びかけているようですが、イサーンや北部の食文化なので、簡単にはやめられないようです。
またまた仕事を放り投げてバンコクに駆け付けたのは言うまでもありません。今度こそ命の危機だったからです。なぜか乳がんなんて屁でもないと思えてしまうのが不思議でした。それほど今度の病気は深刻だったのです。
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