皆さんご存じの通り、一昨年JALは債務超過に陥り、経営破たんした。
その後企業再生支援機構に救済され、会社更生法の適用を受けながら、
更に公的資本を3,500億円も注入されるという莫大な支援を受け再生。
既に東証に再上場することも承認されている。
しかし、そのことと、今回のJALの再生のあり方が適当であったかどうか
という点は全く別問題だ。
法人税法では、会社更生法の適用によって欠損金の
繰越が認められ、
JALのケースでもそれにより4,000億円の法人税が免除される。
今日の国会審議で改めて明らかになったことは、こうした法的更正・破
綻処理の恩恵を受けながら、
更に公的資金もプラスして受け取る、言うなれば
「二重恩恵」を与えられたケースは、世界を見渡してもJALを除いてない、
ということだ。
注入した公的資本3,500億円は上場等により市場から回収できるというのが
国土交通省の言い分だ。
しかし、それも例えば注入から再上場までの間の期待
運用利子(1%換算でも約90億円)や、JALに対する過剰・二重の恩恵に
より、弱ってしまった同業他社の納税額減少分などは考慮されていない。
これらは再上場しても永遠に国民に返ってこない。
今日国会で羽田国土交通大臣も、
「(返ってこない)国民負担はある」と明言した。
消費増税法案の採決を目前に、看過できない論点のはずだ。
EUでは、国が民間企業に公的資金支援を行うに際し、厳格なガイドライン
が設定されている。2004年に策定されたそのガイドラインの第31条には、「公
的資金による再生支援は、競争相手に不公平な負担と社会的・経済的犠牲を強
いる」とはっきり明記されている。それだけの覚悟とリスクを認識しているの
だ。
羽田大臣は、今回のJALへの公的資本注入の理由について「ネットワーク
維持のため」と答弁したが、それではとてもじゃないが理由にならない。それ
だけの理由ならば、今後あらゆる企業が公的資本注入を受けられることになっ
てしまう。欧米では公的資本注入が許されるのは、本当に限定的な、システミ
ックリスクケースと、too big to failケースのみ。日本政府の、市場を捻じ
曲げてまで行なった自らの公的資本注入に対する危機意識のなさが伺える。
独占禁止法の執行者として、公正かつ自由な競争市場の番人を任ずるのは公
正取引委員会だ。今日の質疑でも竹島公取委員長は、国の支援であっても公正
な市場を歪めうること、日本には諸外国のような公正競争と公的資金のあり方
に関する哲学が欠けていること、そして公取にはそれを是正する法的権限が与
えられていないが、それさえあればしっかりやることを、はっきり主張してく
れた。なければ議員立法で作ればいい。
日本のこれまでの縦割りの「業者行政」を改め、「市場のルール」と「競争
政策」という横串を通した、全体としてのあるべき原則論を打ち立てる必要が
ある。それをまず確立しなければ、いつまで経っても日本に対する外国からの
投資は増えないだろう。この問題は日本経済全体の成長戦略にも通ずるのだ。
やすひさの独り言より (衆議員 塩崎恭久氏)
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