*** june typhoon tokyo ***

FC東京×横河武蔵野@味スタ【天皇杯】

■ 前回天皇杯王者、初戦で散る

 2012年1月1日、聖地・国立競技場で杯を戴いたFC東京。前回王者として迎える初戦は、東京都代表の横河武蔵野FC(JFL)との一戦。オープントーナメント、さらにその初戦ということでJ1勢にとっては思ったほど容易ではない戦いだが、実力差があるチームとの戦いであることも事実。国内トップリーグのチームとしての格も示さなければならないところだった。

 日本代表へ召集の高橋と権田が不在、連戦の疲労も考慮してルーカス、徳永、梶山らをベンチに置くFC東京。ネマニャ・ヴィチチェヴィッチを初先発させるなど多少の選手入れ替えはあったが、それでも主力選手を中心に据えた布陣で臨戦。
 横河武蔵野は1回戦でグルージャ盛岡に2-0で勝利。この日は5バックのような形でまずは堅守というテーマで戦うような意図が見て取れた。ちなみに、横河武蔵野の11、小林陽介は前所属が松本山雅(その時のチャントはマキシマムザホルモン「恋のメガラバ」)。久しぶりにピッチでの姿を見ることが出来た。

 シュート13本対4本、CK7本対1本。数字の上でもそうだが、東京がほぼ横河武蔵野陣内で試合を進める時間帯を占めた。ただし、決め切るための意識と集中力が足らず、横河武蔵野の普段着を捨てた5バック戦術でとにかく守って少ないチャンスで一矢報いるというスタイルの術中にハマった。

 東京は前半でヴィチチェヴィッチが交代するなど、連係やパスでのミスも多く、暑さも手伝ってか、やや散漫なパフォーマンスに感じられた。また、実力差ははっきりと見えていたので、「そのうち点は獲れる」という奢りも、選手やチーム、サポーターの中に少なからずあったことは否めないだろう。決定機もあったが、横河武蔵野GKの立て続けのファインセーヴ、身体を張ったDF陣の奮闘によって、延長戦へともつれ込むのかと多くが思っていたはずだ。3分のロスタイムも半分以上を経過した時、横河武蔵野のカウンターを防ごうとして不用意にFKを与える。そして、このFKが、ドラマティックなゴールへ繋がるミラクルの端緒となった。

 横河武蔵野は自分たちの力量を客観的に判断し、勝利するための僅かな可能性へ向けて意識を集中させていた。むろん、無欲がよく作用したとこもあるだろう。だが、後半は運動量も落ち、ほぼ東京の時間帯となる厳しい状況のなかで、ピッチ内の選手全員の意思が統一されていた。それが、値千金のゴール、そして勝利へを導いたのではないか。

 そのゴールを奪われた塩田のプレイについて、厳しく当たる人もいるだろう。確かに、この日(というかここ数試合)の塩田のパフォーマンスは、好プレイもあるにせよ、フィードが不安定さを見せるなど凡ミスも見られ、普段どおりの安定を欠いていたことは事実。それでも、あの場面で塩田がセーヴをしていたとしても、それで東京が勝利したということではない。サッカーはゴールを如何に奪うかのゲーム。殊に、天皇杯のような一発トーナメントの大会では、言葉は適切ではないかもしれないが、“勝てば官軍”の大会である。ゴールを奪えるシーンが複数ありながら、決めきれずに終えた攻撃陣、チームが、この結果を招いたのだ。

 実力差はあっても、その実力を半分も出せなければ、結果もついてこない。横河武蔵野は出来ることを100%近く、もしかしたらそれ以上をピッチの上でやり遂げた。東京が通常、勝てそうでも勝てない試合が多いのは、このあたりのメンタルな部分も大きい。タレントは豊富と言われながらも、その実力を出し切れないまま……というのは、当初からの課題でもあった。残念ながら(寧ろ情けないが)、今年の天皇杯は終わった。だが、これを最良の糧、反面教師として、残るリーグ戦やナビスコ杯へと繋げなければならない。相手が徹底してやれることを、東京もやれないはずはないのだ。

 余計なプライドや期待はもうどこかへ投げ捨てて、ガムシャラにゴールを奪う。そのために走り回ることを念頭に置いて、残るシーズンを戦い抜いてもらいたい。


◇◇◇


<第92回天皇杯 2回戦>
2012/09/09 味の素スタジアム

FC東京 0(0-0、0-1)1 横河武蔵野

【得点】
(横):岩田(90+2分)

観衆: 7,287人
天候:晴、弱風
気温:31.9度
 

≪MEMBER≫

GK 01 塩田仁史
DF 33 椋原健太
DF 03 森重真人
DF 05 加賀健一
DF 16 丸山祐市
MF 07 米本拓司
MF 08 長谷川アーリアジャスール
MF 18 石川直宏 → FW 49 ルーカス(56分)
MF 32 ネマニャ・ヴィチチェヴィッチ → MF 10 梶山陽平(46*分)
MF 27 田邉草民 → MF 22 羽生直剛(78分)
FW 11 渡邉千真

GK 21 廣永遼太郎
DF 02 徳永悠平
MF 37 橋本拳人
FW 23 林容平


監督 ランコ・ポポヴィッチ


◇◇◇


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前回王者が迎える天皇杯初戦。

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横河武蔵野ゴール裏にも熱心なサポーターが。

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選手整列。

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ピッチに散る横河武蔵野の選手たち。

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東京の選手も試合開始に備える。

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比較的静かな東京ゴール裏。

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「イノキボンバイェ」に似た天皇杯のアンセムが流れ、いざ試合開始。

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延長戦かと思われたロスタイム、横河武蔵野のFKがそのままゴールマウスへ吸い込まれる!

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試合終了間近に重い失点で0-1。

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試合終了。
怒号とブーイングと歓喜が交じり合う場内。

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歓喜に沸く横河武蔵野ゴール裏。

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バックスタンドへ挨拶へ向かう東京の選手。
塩田は一番最後にうな垂れて向かう。

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やっぱりうな垂れる塩田。

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バックスタンドへ挨拶する横河武蔵野の選手たち。

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一旦戻ろうとするも、東京サポーターから“来い!来い!”の声を聴き、東京ゴール裏へ向かう横河武蔵野の選手たち。かなり嬉しそう。

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横河武蔵野の大健闘に大きな拍手を送る東京サポーター。

◇◇◇


解説「いや凄いですよ、サポーターが」
アナ「サポーターが前に出てきました!」

アナ「(塩田は)前に出ていました」
解説「これは塩田、前に出るでしょう、これ」
 


失点シーン。
 


横河武蔵野のFKがゴール→試合終了。3分30秒過ぎから。
 


横河武蔵野の楽しそうなゴール裏。



◇◇◇

 2009年、アルウィンで当時地域リーグ(北信越)の松本山雅(当時の主力FWが小林陽介)が浦和レッズ(しかもエジミウソン、田中達也、ポンテ、鈴木、原口など主力の布陣)を2対0で破る大ジャイアントキリングを目の前にしたのだけれど、まさか味スタで同じようなジャイアントキリングを目撃することになろうとは。
 しかも、東京は一応前回王者。ま、貴重な体験といえば、貴重な体験なんだけれども……。
 
 
 
 
 






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