リーグ最終戦。FC東京は勝利すれば自力で残留が決定という大一番。仙台にも降格の可能性はあるが、実質的に東京と神戸との争い。神戸は勝てなかった時点で降格が決定。東京は負けたとしても神戸の試合結果によっては残留の可能性がある。
神戸は勝つしかない展開。相手は浦和。点を取るという熱い魂を前面に出した結果、アウェイで4得点をもぎ取り、東京の結果を待つことになった。一方、東京は前半にドゥトラにゴールを決められ失点。引き分けさえもなくなった状況で焦りだけが増長し、後半にカウンターを防ごうとした権田がPKを獲られて万事休す。東京が昇格以来初めての降格を味わう結果となった。
石川が怪我で出場出来ず、羽生も万全ではない。ゴールゲッターの大黒を控えにして、梶山をトップ下に配す。これ以外にも疑問符を打たざるを得ない起用や采配……言い出したらキリがないが、それを含めての敗戦だ。そして、これはこの試合だけではなく、シーズン通しての結果だ。ホームである味スタで開幕戦の1勝だけでは、このような結果を招いても致し方あるまい。
ピッチでの涙、駆けつけたサポーターの涙がモニターから伝わる。だが、それを感傷的なものとしてのみで捉えてはいけない。全てはこの結果を受け入れ、反省し、首都・東京に相応しい強いチーム作りをするための新たなスタートとしなければならないのだから。
2010年12月4日は屈辱の日であると同時に、新しい東京の出発(たびだち)の日でもある。今後さまざまな苦難が立ちはだかるだろうが、強き精神力を持って、再びJ1の舞台へ、さらにはJの頂点を目指すべく、精進しなければならない。
◇◇◇
Jリーグディビジョン1 第34節
2010/12/04 西京極総合運動公園陸上競技場
京都 2(1-0、1-0)0 FC東京
【得点】
(京):ドゥトラ(34分)、ディエゴ(90+1分)
観衆:12,697人
天気:晴、弱風
<メンバー>
20 GK 権田修一
33 DF 椋原健太 → 17 DF キムヨングン(78分)
06 DF 今野泰幸
03 DF 森重真人
14 DF 中村北斗
02 DF 徳永悠平
07 MF 米本拓司 → 19 MF 大竹洋平(66分)
11 MF 鈴木達也 → 39 FW 大黒将志(59分)
16 MF リカルジーニョ
10 FW 梶山陽平
13 FW 平山相太
01 GK 塩田仁史
08 MF 松下年宏
22 MF 羽生直剛
24 FW 重松健太郎
◇◇◇
大熊監督は試合後のインタヴューで残留争いのプレッシャーはあったかという問いに対して、「メンバー交代も含めて相手が嫌がることを取っておいたりして流れを変えようと。大竹が入って少し流れは変わったのですがそれ以上に気持ちの焦りが超越してしまった」と応えている。対する京都の秋田監督は、「FC東京は立ち上がりからガンガンくると思ったのですが、やはり降格のプレッシャーというものがあって動きがあまり良くなかったので、こちらがいい形でボールを奪ってショートカウンターが多くなった。イメージ通りの展開ができた」と。そして、梶山は「前半は急いで点を取るというよりも、90分間で勝つという気持ちでまずはセイフティに入った」、徳永は「試合前は失点しないようにすれば、きっとチャンスは来ると思っていた」と応えている。
「嫌がることを取っておいた」「まずはセイフティに入った」「失点しないようにすれば」……ここに勝ち点3を奪えなかった結果が端的に示されているのではないか(今野は「今日は引き分けではダメなのはわかっていた」と応えていたが……)。つまり、勝たなければ残留はないという強い意志を持つこと、プライドもスタイルも捨てるくらいでガムシャラにゴールを狙い、奪うこと。これらが出来なかったゆえの結果なのだと思う。
とにもかくにも、来季はJ2での戦いを余儀なくされた東京。だが、その道は決して容易ではない。実際、先に降格が決まり共に来季に同カテゴリで戦う京都に2-0というスコアで負けた、この試合だけを見ても、それは明らかだ。
これからやらなければならないのは、この結果を招いた原因追究と反省、そして戦力の維持および補強だ。年間を通して、勝ち点36、勝利が8、引き分けが12、敗戦が14、得点が36、失点が41。勝利のうちホームの味スタでの勝利が僅か1しかない。そして目立つのが、引き分けの多さだ。これは勝ちきれなかった試合がいかに多いかを物語っているといえよう。
失点をしなければ負けはない……は、確かにそうだ。ただし、得点をしなければ勝ちもない。得失点差をみると東京は-5。それに対して、最後に残留を争った神戸は-8、仙台は-6。山形、大宮、磐田はそれぞれ-13、-6、-11となっており、11~15位までのチームは全て東京よりも得失点差で劣っているのだ。一方、得点は山形を除いてこれらのチームは東京よりも勝っている。その山形(29得点)にしても、負け数こそ東京と同じ14だが、少ない得点でもホームでしっかり勝ち切り、シーズンで11勝を挙げている。これが残留と降格の差の一つであることは、明確だろう。最後の最後で守りきれなかった……今季の東京が象徴する試合の多くがこのような展開であったことは、多くの人が思うところだろう。もちろん、W杯を境にして長友が移籍してしまったことも大きい。しかしながら、それは裏を返せば、得点機に得点を奪えていれば……それが出来なかったことに起因するともいえる。
そう、東京の低迷は、精神的な部分を除くと、攻撃力の低下に多くがあることは否めない事実。リーグで36得点ということは、1試合1.06点しか獲れないということ。つまり、失点した段階で勝ちはなく、1-0での勝利を常に強いられるということだ。
昨年は石川が怪我で離脱するまでは得点王とならん勢いでゴールを量産。今季はそれがなかった。ただし、それは石川の不調ということだけではなく、2009年途中で移籍したカボレの存在が大きかった。それに触発されるように、平山、赤嶺らもゴール数を伸ばした。
この最終節でも、京都に攻め込みながらも、結局焦りから京都のカウンターを食らい、決定力のある外国人選手に一発で決められている。つまりは、決定的な仕事をする点取り屋の獲得および養成が必須だということだ。まずは、この箇所の対策から練ってもらいたい。もちろん、決定的な仕事をする人材であれば、外国人選手でなくとも構わない。
次に、シーズンを通して戦力を維持出来るスタミナだ。選手に怪我やアクシデントはつきもの。それに対して柔軟に対応出来る選手層をキープしなければならない。それは必ずしも有名実力選手でなくてもよく、ヴェテラン、若手、中堅含め、これを機に発奮出来る人材を多く確保することだ。
さらに、現有戦力の維持がどこまで出来るか。日本代表候補となる選手も少なからず抱えている東京だが、それらの選手がJ2のカテゴリに所属していて果たしていいのか、という問題がある。それらの選手はもちろん他チームの補強のターゲットにもなろう。結果はともかく、フロントは誠意ある対応を見せ、選手の判断を待ちたい。その上で、掲げるべきヴィジョンをもとに、効果的な補強とチーム構成力の向上を目指すべきだと考える。
そして、監督について。城福監督更迭の後、急遽野戦病院さながらの状態で大熊監督が引き受けた。その状況は決して明るいものではなく、その中で采配を振るわなければならないことは、相当困難なことであったといえよう。
しかしながら、それを含めて“残留”という命題を完遂する目的で監督を引き継がれた以上、これが成し得なかった今となっては、来季への続投はいかがなものかと考える。百歩譲って、来季もスクランブルでシーズン通して勝つという結果だけで判断する、ということも理由としてあるだろう。だが、昇格が目的となってしまう一喜一憂サッカーでは、たとえ昇格したといえ、その後にまたまた同じような事態に陥る可能性は極めて高い。それ以前に、そのようなスタイルで、今の厳しいJ2を勝ち抜けるとは到底思えない。今季も有力と目されていた千葉は昇格出来なかった。群雄割拠の状態であるJ2で、勝ちきれない病で降格した東京が、ヴィジョンもあいまいのなかで圧倒的な力で勝ち抜けるとは誰も思わないだろう。
ひとまず、東京には天皇杯がある。たとえ優勝したとしてもACLの道はない。だが、新たな東京へのスタートとして、この舞台を意気消沈したままやり過ごしてしまうのは、もったいない。精神力の向上のためにも、早く切り替えをして、元日に国立で今季を締めくくるという、復活への何かを掴む戦いとしてもらいたい。
来季のこの時期に、パワーアップした東京が日の出のごとく躍動するために。
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