ACL第2節は、恐らく予選突破の最大のライヴァルと目される蔚山現代とのホーム国立での対戦。FC東京は渡邉千真が1トップで先発、またボランチには米本が入った。蔚山には家長やイ・グノ、マラニョンなど日本にも馴染みの選手がちらほら。
試合開始直後に渡邉がファーストシュートを放ち、東京ペースで試合が進むと思われたが、蔚山の前線からの速いプレッシャーで主導権が蔚山に移る。長身のキム・シンウクにハイボールを集め、イ・グノが縦に速い動きでタフなキム・スンヨンとともに攻撃を形作る。やや後方からボールを巧みにコントロールするエスチベンが攻守の起点となり、東京の攻撃の波を抑えていた。シュートを打てないままボールを奪われカウンターを食らうなど、30分くらいまでは東京のチャンスらしいチャンスは出来ずに経過。だが、継続的にプレッシャーをかけてきた蔚山の多少運動量が落ち、プレッシャーもややスピードが落ちてくると、石川のショートCKから徳永がドリブルでキープした後、相手DFのプレッシャーを受けながらも絶妙なループシュート。これがGKの頭上を上手くすり抜けゴールが決まって、FC東京が先制して前半を終えた。
後半直後は前半同様のプレッシャーを受けるも、時間が経つにつれ対応が出来ていたため大事には至らず。さらに、一つ上の高さでボールを散らしていたキム・シンウクに代わりマラニョンが入ると、前線での高さの脅威がなくなり、東京がボールを支配する時間帯が多くなっていく。米本に交代し長谷川が入ると、前線への配球がスムースになってくる。右からは石川の飛び出し、左は谷澤と梶山のパス交換から相手ゴールへ迫るなど、チャンスが増えてきた。追加点の匂いがしはじめた80分、相手GKのロングボールに競り負け、スルーパスを出されると、あっさりとキム・スンヨンが抜け出してゴールされる。
ここで落胆せずに、相手陣内へ。中央を攻め込んだ長谷川から石川、長谷川と短いパスを交換して左にいた羽生へ。羽生が中央へ走り込んできた梶山へやわらかいパスを出すと、梶山がシュート。豪快にネットを揺らして勝ち越しに成功した。
だが、これで安心したのか、終了近い88分、攻めあがっていたSB太田の裏へ放り込まれると、マラニョンが前方に出てきていたGK権田の上で綺麗な弧を描くループシュートを放つ。これが決まって同点。その後攻撃を続けるも得点ならず、引き分けで勝点1ずつを分け合った。
まず、反省すべき課題点。タイトな日程で疲れもあるのだろうが、相変わらず判断が遅く、プレッシャーを受けてしまう場面が特に前半に数多く見られた。徳永の後方へのフィードや加賀や森重のハイボールへの処理などは、もう少し球離れを速くしてリスクを回避すべきではないか。疲労感があって身体の動きが鈍いと感じるなら、なおさらのこと。攻撃のときの“タメ”は必要ではあるが、ボールがDFラインにある時に相手を引き付けるなどわざわざリスクを冒してパスの視野を狭くすることはない。やはり、常に前を向いたプレーが大切ではないか。J1でのプレッシャーのスピードはJリーグで体感していると思うが、ACLであればより速くタイトなプレッシャーであることは当然のこと。その意識をしっかりと持たなければ、致命的な失点を受けてしまうことになりかねない。
次に、意識という意味では、失点した2点ともに集中力が欠けていたと思わざるを得ない、つまらない失点だった。エアポケットに入ってしまったかのような速攻で決められてしまったが、攻撃直後のディフェンスの意識が足らなかったように思えた。しっかりと対処していれば防げたと思えるものだったこともあり、悔やまれる失点。勝点2を失ったともいえる結果となってしまった。
攻撃では、やはり点を獲るべき時に獲っておくということだ。パスを繋ぐサッカーというのは解かるが、やはりゴール前で狙うチャンスがあれば、積極的にゴールを狙うべきだと思う。バイタルエリアで巧みに繋いだとしても、それがシュートで終わらなければ、ストレスも溜まるし、相手のカウンターも受けやすくなる。勝ち越したとなれば、その勢いも重ねて、どんどんシュートを放ち、ゴールを奪うべきだった。
2-1と逆転してさらにチャンスが巡ってきたが、そこで突き放せなかったこと、これが相手の同点劇を生む下地となってしまった。そして終盤、ベンチは受けて守り切って試合をクローズさせるのではなく、ルーカスを入れて前からのプレッシャーと攻撃という策を用意した。それに応えられず、攻めるのか守るのか、ポゼッションを高めるのか、そのあたりの意思統一がピッチ上のメンバーでややなされていなかったため、カウンターによる同点劇を作り出してしまった。
一方で、選手交代による活性化はこの試合にも見られた。交代が効果的であったことの証左でもあるが、逆に言えば、前半は自分たちのサッカーをさせてもらえなかったというスロースターターぶりを今回も露呈してしまったということ。公式戦はゼロックススーパーカップから数えて、5戦目。大宮、名古屋戦ともども入りが悪かったことがまだ解消されていない。DFの裏をとられてピンチを招くというシーンも多かった。これらをしっかりと修正したいところだ。
勝点1ずつ分け合ったというより、勝点2を落としたというべき痛恨のドロー決着となったが、修正課題は見えている。対策を講じ、集中力を高めて、次試合以降を戦ってもらいたい。
◇◇◇
<ACL グループF 第2節>
2012/03/20 国立競技場
FC東京 2(1-0、1-2)2 蔚山現代
【得点】
(東):徳永(37分)、梶山(83分)
(蔚):キム・スンヨン(80分)、マラニョン(88分)
観衆:14,110人
天候:晴、弱風
気温:11.4度
≪MEMBER≫
GK 20 権田修一
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 05 加賀健一
DF 06 太田宏介
MF 04 高橋秀人
MF 07 米本拓司 → MF 08 長谷川アーリアジャスール(62分)
MF 10 梶山陽平
MF 18 石川直宏
MF 39 谷澤達也 → MF 22 羽生直剛(69分)
FW 11 渡邉千真 → FW 49 ルーカス(83分)
GK 01 塩田仁史
DF 33 椋原健太
MF 27 田邉草民
FW 13 平山相太
監督 ランコ・ポポヴィッチ
◇◇◇
コンコースにて、人気のドロンパ。
写真を撮る順番がまわってきそうもないので、後ろから。
蔚山ゴール裏。
東京ゴール裏。
“ユルネヴァ”中。
選手整列。
前半開始。
徳永の先制ゴールに沸くスタジアム。
ハーフタイム。ドロンパの不敵な笑み。
後半開始。
梶山の勝ち越しゴール後の“ワッショイ”。
試合終了。
結果は2-2のドロー。
応援席に挨拶する蔚山現代の選手たち。
バックスタンドに挨拶するFC東京の選手たち。
バックスタンド前を通り東京ゴール裏へ。
梶山。