東を怪我で欠き、エドゥーもベンチ外。代わって鳥栖戦に強いイメージのある渡邉千真、MFとして平山も先発に名を連ねた。そして、大きかったのは前節はベンチ外だった羽生の復帰。セレッソ戦では動きが鈍かっただけに、羽生のフリーランニングはチームを活性化させるのには非常に有効だ。
米本、高橋らが素早いプレッシャーで攻め手を防ぎ、またボールを奪取するなど、東京の時間帯を作り出す。前半はその米本が渡邉のグラウンダーのマイナスのクロスに対して、低い弾道でゴールを決める。
後半は、米本が一度相手DFにアーリークロスを弾かれたが、そのセカンドボールを再び拾って太田に渡すと、太田が直接ゴールへ放り込むようなクロス。相手GKが飛びついたボールはバーへ直撃、その跳ね返りをゴール前へ詰めていた渡邉がきっちりと流し込んで2点目をゲット。その後、フィジカルの強い鳥栖が反撃を試みるも、ゴールを割らせず、首位鳥栖に対して勝利。アウェイでの難しい試合を勝ち点3と無失点という非常に良い結果で終えることが出来た。
平山のゴール前での判断の遅さがやや気になったが、エドゥーを欠きながらも、キレが戻ってきた武藤、リーグ戦では約1年ぶりのゴールを奪った渡邉と攻撃陣も良化。そして、5試合連続無失点の守備も当然ながら評価されていい。
東京サポーターによる鳥栖の名物ミンチ天1000個完売、2対0の無失点勝利、渡邉の今季リーグ初ゴールと、この鳥栖戦は良いこと尽くめで終えた、はずだったが……。
その理由は後述するとして、何度も言っているが、本番はここから。これまで5試合連続無失点といっても、ほとんどが下位チームとの対戦で成し得たもの。上位のチームに果たして同じようなことが出来るのかだ。20日の天皇杯・松本山雅戦を挟んで、次節からは浦和、鹿島、神戸、川崎と上位陣や上位へ食い込んできそうなチームとの連戦だ。今季はこの4戦で決まるといっても過言ではない、非常に重要な4戦だ。ここでどのような結果を残せるのか。そのためには何が必要なのか、何をすべきなのか。今日の鳥栖戦の勝利は忘れて、再度脳と身体をフル回転させて準備怠りなく進んでもらいたい。
◇◇◇
≪J1 第20節≫
【日時】2014/08/16 19:04
【会場】ベストアメニティスタジアム
【観衆】18,100人
【天候】曇、弱風
【気温】26.1度
【湿度】72%
【審判】(主審)山本雄大(副審)大塚晴弘、大川直也
【結果】
鳥栖 0(0-1、0-1)2 FC東京
【得点】
(栖):
(東):米本(5分)、渡邉(52分)
【FC東京メンバー】
GK 20 権田修一
DF 02 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 29 吉本一謙
DF 06 太田宏介
MF 04 高橋秀人
MF 07 米本拓司
MF 22 羽生直剛 → MF 08 三田啓貴(72分)
MF 13 平山相太
FW 14 武藤嘉紀 → MF 18 石川直宏(77分)
FW 09 渡邉千真 → FW 17 河野広貴(88分)
GK 01 塩田仁史
DF 24 カク・ヒジュ
DF 30 カニーニ
DF 50 松田陸
監督 マッシモ・フィッカデンティ
◇◇◇
≪FC東京 2014 J1日程≫
01 03月01日 △FC東京 1-1 柏(A)
02 03月08日 △FC東京 1-1 甲府(H)
03 03月15日 ×FC東京 1-2 神戸(A)
04 03月23日 ×FC東京 0-4 川崎(H)
05 03月29日 ○FC東京 3-1 清水(A)
06 04月06日 ○FC東京 2-1 鳥栖(H)
07 04月12日 ×FC東京 0-1 広島(A)
08 04月19日 ○FC東京 2-0 C大阪(H)
09 04月26日 ○FC東京 1-0 横浜FM(A)
10 04月29日 ×FC東京 0-1 名古屋(H)
11 05月03日 ×FC東京 0-1 浦和(A)
12 05月06日 ×FC東京 0-1 大宮(H)
13 05月10日 △FC東京 0-0 徳島(A)
14 05月17日 ○FC東京 3-0 G大阪(H)
15 07月19日 △FC東京 1-1 鹿島(H)
16 07月23日 ○FC東京 1-0 新潟(A)
17 07月27日 ○FC東京 3-0 仙台(H)
18 08月02日 ○FC東京 4-0 清水(H)
19 08月09日 △FC東京 0-0 C大阪(A)
20 08月16日 ○FC東京 2-0 鳥栖(A)
21 08月23日 FC東京×浦和(H)
22 08月30日 FC東京×鹿島(A)
23 09月13日 FC東京×神戸(H)
24 09月20日 FC東京×川崎(A)
25 09月23日 FC東京×徳島(H)
26 09月27日 FC東京×柏(H)
27 10月05日 FC東京×仙台(A)
28 10月18日 FC東京×大宮(A)
29 10月22日 FC東京×広島(H)
30 10月26日 FC東京×G大阪(A)
31 11月02日 FC東京×名古屋(A)
32 11月22日 FC東京×新潟(H)
33 11月29日 FC東京×甲府(A)
34 12月06日 FC東京×横浜FM(H)
◇◇◇
◇◇◇
良いこと尽くめで終われなかったことは何かというと、FC東京ゴール裏からの鳥栖サポーターにとって不快なコールがあったということだ。
鳥栖は先日、突然監督のユン・ジョンファンを解任。首位でありながら監督交代劇は前代未聞だ。直後の前節広島戦は、荒天により延期となったうえ敗戦。吉田恵新監督のホーム初戦となるこの試合は、鳥栖サポーターにとってはフロントに対して少なからず不信感を持ち、戸惑いながら応援するというデリケートなものであったと思う。
そのような状況の中、プレーの激しさゆえ、両チーム応援席からブーイングもある展開。それはいい。ただそこで、FC東京サポーターがいるアウェイゴール裏から“ユン・ジョンファン”コールがあったというのだ。まず、解任された前監督の名前をコールする意味が良く解からないのだが……。
東京側からする発想で考えてみると、前節のC大阪戦で、これまた中途で監督を解任されたポポヴィッチのコールをした。監督を替えても勝てないセレッソに対して、“前監督のがマシじゃないの?”と煽る意味があったのだろうか。とはいえ、このコールは、ポポヴィッチがC大阪の前にFC東京の監督だった事実があり、その意味でまだ成立するものだった。
だが、今日の“ユン・ジョンファン”コールは相手を逆なですることだけが目的ととられても仕方がないコールだったのではないか。まだ、鳥栖サポーター側も“うう、痛いところ突いてくるなぁ”と多少笑えるものであればマシだったのかもしれないが、笑える要素が一切なし。鳥栖サポーターが少し過敏すぎるのではというきらいも全くないとはいえないが、こういうのはやっていいタイミングと悪いそれがある訳で、その点において、東京ゴール裏側からのコールは、鳥栖サポーターが非常にナイーヴになっている最中ということも考えて、その有益性が感じられないものだ。
こういうことを言うと、生ぬるいとか海外では当たり前だとかいう意見もあろうが、ここは日本。日本の文化のなかで行なわれているサッカーなのだ。これくらいのジョークが解からないのかという人もいるだろうが、そもそもそのジョークの感覚が解からない。外国のジョークがそのまま日本人に通用しないことが多いように、海外だって当たり前の論法がそのまま日本人の気質に合う、または認められるとは限らない。サッカーに限らず、スポーツは相手があって初めて成立するもの。その相手をリスペクトしないような発言や嘲笑や中傷、蔑視するようなコールは、どちらのチームにとっても不利益でしかないし、発した側にとっては一瞬の自己満足以外何物でもない。
一万歩譲って、逆に同等のことを言われても意に介さないというなら、まだいい。だが、東京サポーターは2010年に浦和の応援席から「祝!J2東京ダービー開催!」「うなだれる飛田給」の横断幕を掲げられて、激怒したのではないのか。自分たちの尺度だけで良し悪しが変わるというのは、一番恥ずべきことなのではないか。
口は禍の元というが、昨年の天皇杯・広島戦。PK戦であとゴール1つ決めたら勝利というところで、何を勘違いしたのか、目の前の選手を応援することなく(あるいは相手GKにプレッシャーをかける応援でもよかったのだが)、“もういくつ寝ると、お正月~”と、目の前の試合が終わってないのに、もう勝ってしまったようなチャントを歌って、PK戦に敗れたことを忘れたのか。サポーターはチームを、選手をサポートするからサポーターなのであって、自分たちの自己満足の発散の場でも何でもない。
城福、大熊、ポポヴィッチと経て、フィッカデンティとなり、前から攻める守りや連続無失点など、ようやく“一喜一憂する”サッカーから脱出出来るのかもしれないという兆候が見え始めたかと思ったら、こうやってチームの外野がくだらないことで一体感を乱そうとする。本当にやめてもらいたい。
これまで冗談半分、本気半分で(FC東京ゴール裏応援席を仕切っている)“植田朝日がいる間は、FC東京はJ1リーグで優勝出来ない”と言い続けてきたが、今季の優勝を占う上で最重要な期間に入ってきている時にこういうことをやらかすのだから、閉口してしまう。当初は東京ゴール裏で応援していた自分は、そのゴール裏応援の身勝手さに嫌気がさしてゴール裏を離れて久しいが、その時から何ら成長してないのかと思ってしまう。植田は“真面目ばっかりじゃなくて、面白くないと”とよく言うようだが、自分たちだけで面白がってるのは内輪受け以外の何物でもないし、そもそも不快を与えるのは“笑い”じゃない。センスのなさを自覚すべき。水を差すことしか出来ないなら、自分の家でやってもらいたい。
東京のゴール裏にいる“本当の”サポーターもやり過ぎには異を唱え、嫌悪を表明しなければいけないのかもしれない。植田の功績を全て否定しようとは思わないが、彼がFC東京を応援することの全てではないはずだ。
もう、なんだか次の浦和戦のフラグが立ってしまったようで不安だが、選手たちはしっかりとこのチャンスをものにすべくチャレンジしてもらいたい。