リーグ3試合連続3失点と守備崩壊で3連敗。
FC東京にとってはあまり相性が良いイメージがないG大阪とのアウェイ・ゲーム。一時期は最下位に低迷していたＧ大阪が近2戦で連勝と調子を上げてきているなか、ミッドウィークの天皇杯2回戦ではJFLの高知ユナイテッドSC敗戦を喫してジャイアントキリングを喰らうなど、底は脱したとはいえ不安定な要素も付きまとうG大阪だったが、蓋を開けてみればイッサム・ジェバリの2ゴールと移籍後初となる半田のゴールの合計3発を献上。アディショナルタイムに塚川のヘディングシュートが決まって一矢報いたとはいえ、不調時が嘘のように躍動したG大阪の前に脆く崩れ去り、失点を重ねていった。FC東京は上位陣との対決とはいえ、神戸、横浜FMとそれぞれ3失点して連敗し、踏み止まることが必要だったが、G大阪相手にも短い時間の間に失点の連鎖。中盤の要として効果的なパフォーマンスをしていた青木、強靭な肉体とスピードの個の力でゲームを動かす力のあるアダイウトンが負傷交代するなど、後味の悪さを露呈しての3連敗となった。
"ワン・モア・ゴール”を掲げているFC東京だが、あまりに得点を奪わなければならないことに臆病になり過ぎているのか、どうも焦りのなかでプレーしているように見える。アタッキングサードで見方を探しながら選択をするうちにシュートやパスコースを失ったり、一方でコースがないのに強引にプレスをかけてくる相手の前でシュートを放って弾かれたりと、冷静さと視野を欠いた、余裕のないプレーに終始している印象だ。
もちろん技術的なところもあって、自陣からワンタッチでパスを繋ぎ、攻勢をかけて持ち上がる場面もないことはなかった。ただ、中盤から前線へ送るパスの精度が悪かったり、自陣からチャレンジングに縦パスを出して、相手ボールにしてしまうなど、“ここを通せば”という位置からの精度を向上させないと、攻撃のスイッチをかけて全体の重心が前になった時にボールを奪われ、カウンターを喰らうという呪縛からは、なかなか逃れられない。
そして、最も改善が必要なのは、守備だ。近3試合でいずれも3失点、さらに言えば、今季も折り返し地点に来ているが、リーグでは無失点試合が開幕戦の浦和戦、第5節の名古屋戦のみ。名古屋戦はスコアレスドローゆえ、無失点で勝利したのは開幕戦のみだ。複数失点が7試合、そのうち3失点以上が4試合と、守勢に回ると立て続けに失点するクセが治らない。
やはり守備という土台を築かなければ、攻撃にも余裕が生まれない。しっかりとした守備という頼れるものがあれば、自信を失うこともないし、試合中に焦りを生むこともない。焦った場面があったとしても、冷静に戻れるスイッチを入れられるはずだ。
近年は堅守のイメージもあったFC東京だが、それが完全に崩壊。無論、堅守速攻のスタイルからの転換で、さまざまな苦心があり、各ポジションに怪我人も出るなど、チームのスタイル構築における成長や発展期に必ず訪れる、もどかしい時期や段階ではあると思う。だが、以前は自信を持っていた部分にも揺らぎが出てきてしまい、攻撃においても、それぞれのエリアにおける競り合いでも、なにか孤軍奮闘ばかりが目立ってしまい、チームとしての連係や有機的な連動があまり見られなくなっている。ようやく調子を取り戻してきたディエゴ・オリヴェイラがボールを収められるようになっているが、そこへのサポートもまだ薄い。G大阪がディエゴ・オリヴェイラへの対応を厚くし、封じることに成功すると、一気に攻め手を欠き、攻撃の糸口が見えなくなった。
ボールを動かしゴール前へ出ていける渡邊凌磨もやや疲労感が見えるなど、攻撃となると前へ重心をかけることに急ぎ過ぎて、味方同士の距離や連動性を見失っている。それゆえ一つボールを引っかけて、攻守をひっくり返されると、ディフェンス陣が慌てた状態のまま守備を余儀なくされ、冷静な対処が出来ぬまま、失点を奪われてしまう。
そして、失点するとそのショックを引きずってしまうのか、集中力を欠いて自らピンチを招くシーンが少なくない。この試合の2失点目に見られるように、半田のスローインへのプレッシャーがなく、なんなくボールが渡ったダワンからの前線への素早いクロスに守備の準備も出来ず、木本に競り勝ったイッサム・ジェバリが頭で決める場面に繋がってしまった。
リーグを半分の17試合を終えて、5勝4分8敗の勝ち点19で12位。順位は他チームとの相対的なものもあるが、最下位の柏や湘南からは勝ち点7差、前半戦で苦しんでいた横浜FCからは勝ち点6差、G大阪や京都からは同3差と、残留争いに近い位置になった。そのなかでも得点22に対し、失点28、得失点差-6と、失点数が多い。リーグでは横浜FC、G大阪、札幌に続いて（新潟、京都、湘南、柏と同じ）ワースト4位で、ここに歯止めが掛けられないと、万が一ということもありえるところまで見えてきてしまった。
ただ、ここで慌てふためいて安易にスタイルを崩すことは、中途半端な状態を続けることにしかならない。まずは、自信と自分たちの強みが持てるところへ立ち返ることが重要だ。不調な時こそ原点に戻り、改めて一つずつ再確認をしていく作業は、即効性はないかもしれないが、中期的に考えれば、チーム状態の修正と改善に最も有効ではある。不本意な成績に囚われ過ぎて自らを失うことが最も悪手。前半戦は17試合中7試合だったホーム戦も、後半戦は17試合中10試合となる。ホームでの強みが活きるシチュエーションが増えることをプラスとして、2週間後のホーム名古屋戦へ挑みたい。その前にルヴァンカップの京都戦が控えるが、勝たなければグループステージ突破がないという状況は、むしろ余計なことを考えなくてもいい、勝つことに特化出来る状況とポジティヴに捉えて、復活へのきっかけにしたい。
◇◇◇
明治安田生命J1リーグ 第17節
2023年6月11日（日）18:04KO パナソニック スタジアム 吹田
入場者数：19,631人
天候：曇 ／ 気温：24.6℃ ／ 湿度 76％
主審：アンドリュー・マドレイ ／ 副審：浜本祐介、坂本晋悟
第4の審判員：道山悟至
VAR：山本雄大 ／ AVAR：大塚晴弘
Ｇ大阪 3（2-0 / 1-1）1 FC東京
【得点】
Ｇ大阪：イッサム・ジェバリ（25分）、イッサム・ジェバリ（29分）、半田 陸（60分）
FC東京：塚川孝輝（90+2分）
〈試合経過〉
17分 交代 東京 青木拓矢 → 東 慶悟
25分 得点 Ｇ大 イッサム・ジェバリ
29分 得点 Ｇ大 イッサム・ジェバリ
45+3分 警告 Ｇ大 黒川圭介
46分* 交代 東京 長友佑都 → アダイウトン
58分 警告 東京 東 慶悟
60分 得点 Ｇ大 半田 陸
68分 交代 Ｇ大 倉田 秋 → 福田湧矢 ／ ダワン → 石毛秀樹
68分 交代 東京 安部柊斗 → 塚川孝輝 ／ 仲川輝人 → 俵積田晃太
84分 交代 Ｇ大 ファン・アラーノ → 食野亮太郎 ／ 佐藤瑶大 → 三浦弦太
88分 交代 東京 木本恭生 → エンリケ・トレヴィザン ／ アダイウトン → ペロッチ
90+1分 警告 Ｇ大 イッサム・ジェバリ
90+2分 得点 東京 塚川孝輝
90+3分 交代 Ｇ大 黒川圭介 → 柳澤 亘
【FC東京】
〈スターティングメンバー〉
ＧＫ 27 ヤクブ・スウォビィク
ＤＦ 05 長友佑都
ＤＦ 04 木本恭生
ＤＦ 03 森重真人
ＤＦ 17 徳元悠平
ＭＦ 37 小泉 慶
ＭＦ 16 青木拓矢
ＭＦ 08 安部柊斗
ＦＷ 11 渡邊凌磨
ＦＷ 09 ディエゴ・オリヴェイラ
ＦＷ 39 仲川輝人
〈控えメンバー〉
ＧＫ 41 野澤大志ブランドン
ＤＦ 44 エンリケ・トレヴィザン
ＭＦ 10 東 慶悟
ＭＦ 35 塚川孝輝
ＦＷ 15 アダイウトン
ＦＷ 22 ペロッチ
ＦＷ 33 俵積田晃太
〈監督〉
アルベル
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 2023シーズン FC東京試合日程・結果】
第01節 02月18日(土)14:00〇FC東京 2-0 浦 和（Ｈ・味スタ）
第02節 02月26日(日)15:00△FC東京 1-1 柏 （Ａ・三協Ｆ柏）
第03節 03月04日(土)14:00✕FC東京 0-2 京 都（Ａ・サンガＳ）
第04節 03月12日(日)15:00〇FC東京 3-1 横浜FC（Ｈ・味スタ）
第05節 03月18日(土)14:00△FC東京 0-0 名古屋（Ａ・豊田ス）
第06節 04月01日(土)15:00✕FC東京 0-1 鳥 栖（Ａ・駅スタ）
第07節 04月09日(日)15:00△FC東京 2-2 湘 南（Ｈ・味スタ）
第08節 04月15日(土)16:00✕FC東京 1-2 Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）
第09節 04月22日(土)14:00〇FC東京 2-1 広 島（Ａ・Ｅスタ）
第10節 04月29日(土)15:00〇FC東京 2-1 新 潟（Ｈ・味スタ）
第11節 05月03日(水)15:00✕FC東京 0-1 福 岡（Ａ・ベススタ）
第12節 05月06日(土)14:00✕FC東京 1-5 札 幌（Ａ・札幌ド）
第13節 05月12日(金)19:30〇FC東京 2-1 川 崎（Ｈ・国 立）
第14節 05月20日(土)15:00△FC東京 1-1 鹿 島（Ａ・カシマ）
第15節 05月27日(土)14:00✕FC東京 2-3 神 戸（Ａ・ノエスタ）
第16節 06月03日(土)15:00✕FC東京 2-3 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第17節 06月11日(日)18:00✕FC東京 1-3 Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第18節 06月24日(土)19:00 FC東京 ✕ 名古屋（Ｈ・味スタ）
第19節 07月01日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 （Ｈ・味スタ）
第20節 07月08日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和（Ａ・埼 玉）
第21節 07月16日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島（Ｈ・味スタ）
第22節 08月06日(日)19:00 FC東京 ✕ Ｃ大阪（Ａ・ヨドコウ）
第23節 08月12日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都（Ｈ・味スタ）
第24節 08月19日(土)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM（Ａ・日産ス）
第25節 08月26日(土)19:00 FC東京 ✕ 神 戸（Ｈ・国 立）
第26節 09月02日(土)00:00 FC東京 ✕ 福 岡（Ｈ・味スタ）
第27節 09月16日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎（Ａ・等々力）
第28節 09月23日(土)00:00 FC東京 ✕ 鳥 栖（Ｈ・味スタ）
第29節 09月30日(土)00:00 FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ｈ・味スタ）
第30節 10月21日(土)00:00 FC東京 ✕ 横浜FC（Ａ・ニッパツ）
第31節 10月28日(土)00:00 FC東京 ✕ 広 島（Ｈ・味スタ）
第32節 11月11日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟（Ａ・デンカＳ）
第33節 11月25日(土)00:00 FC東京 ✕ 札 幌（Ｈ・味スタ）
第34節 12月03日(日)00:00 FC東京 ✕ 湘 南（Ａ・レモンＳ）
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