アンソロジー作品『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』を読みました。
伊坂幸太郎が選んだ至上の短篇アンソロジーです。
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小説のドリームチーム、誕生。
伊坂幸太郎選・至上の短編アンソロジー、赤いカバーのオーシャンラズベリー篇!
編者によるまえがき・あとがき収録。
【小説の惑星 オーシャンラズベリー篇】永井龍男/絲山秋子/阿部和重/中島敦/島村洋子/横光利一/筒井康隆/島田荘司/大江健三郎
子供のころから今まで読んできた小説の中で、本当に面白いと思ったものを集めてみました。
見栄や知ったかぶり、忖度なく、「とびきり良い!」「とてつもなく好き」と感じたものばかりです。
十代で読んだものもあれば、デビュー後に知った作家の作品もあります。
ミステリー小説と純文学が好きだったために、そのいずれかに分類される短編が自然と多くなりましたが、そういった偏りも含め、僕自身が大好きな小説たちです。
(まえがき 小説の惑星について 伊坂幸太郎 より抜粋)
「小説の凄さ」を知りたいけれど、一体何から読めばいいのかわからない。
物語は好きだけれども、小説以外に漫画や映画、アニメ、舞台、数多のエンタメ作品はある――。
そんな人にこそ届けたい、作家・伊坂幸太郎が至高の短編だけを集めた二冊のアンソロジー。
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2021年(令和3年)に刊行された、伊坂幸太郎が「面白い」「大好き」な小説を集めた短編アンソロジーです。
■まえがき 小説の惑星について 伊坂幸太郎
■電報 永井龍男
■恋愛雑用論 絲山秋子
■Geronimo-E,KIA 阿部和重
■悟浄歎異 中島敦
■KISS 島村洋子
■蝿 横光利一
■最後の伝令 筒井康隆
■大根奇聞 島田荘司
■人間の羊 大江健三郎
■編者あとがき―『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』収録作品について 伊坂幸太郎
好みの作品ばかり……というわけではなかったですが、総じて好みに近く愉しめました! そんな中でイチバン印象に残ったは島田荘司の『大根奇聞』でしたね、、、
本書の中では唯一の本格ミステリで、御手洗潔シリーズの一篇……事件の舞台は江戸時代の鹿児島(薩摩)、桜島の噴火で薩摩藩全体が飢饉に陥っていたとき、寂光法師と子どもの矢七が行き倒れとなり、お嘉という老婆に助けられた際の謎を解き明かすという時代ミステリっぽい展開で、弱者に寄り添うような視点、心地よい読後感が印象的でした。
普段は、あまり読まないのですが、恋愛をテーマにした作品もなかなか良かった、、、
画商の波島が京都から東京に向かう列車の食堂車で以前別れた女・駒子に出会い、その後、駒子宛てに列車に届いた電報の内容を知ろうとするが……嫌な感じの男が肩透かしに遭う結末が印象的な永井龍男の『電報』、
私にとって恋愛は雑用と同じだという日下部さんの日常や恋愛観や、職場を訪ねてくる常連で信用金庫につとめる小利口くんとのエピソードに震災を絡めた絲山秋子の『恋愛雑用論』、
人気アイドルはるなと中学時代の同級生だった男子大学生・コウスケの淡い恋愛を描いた胸がキュンとする島村洋子の『KISS』、
それぞれ愉しめました。
一風変わった奇妙な読後感が印象的だったのは、、、
物語の始まりと終わりが蠅の視点で描かれており、崖から転落する馬車を蠅が悠々と飛びながら見ているところで終わる横光利一の『蝿』、
日頃の不摂生や仕事のストレスで体内がボロボロとなり、このままでは確実に死んでしまう……そんな人物の体内で細胞たちが右往左往する中、臓器からの連絡を脳に伝えようとする情報細胞のエピソードを描いた筒井康隆の『最後の伝令』、
バスの中で外国兵に恥ずかしめられた少年がバスから降りると、それを見ていた教員が外国兵のことを警察に訴えろと言う……善意からの親切心が悪意に変わる瞬間、善意の押し付けが招く悲劇を巧く描いた大江健三郎の『人間の羊』、
の3作品……とても興味深く読めましたね。
永井龍男、絲山秋子、中島敦、島村洋子、横光利一、大江健三郎については、初めて読みました……良いきっかけになりましたね……たむらしげるの装画も良かったです。