じゅうのblog

こちらでボチボチ更新していく予定です。

『暗い越流』 若竹七海

2025年01月11日 22時33分11秒 | ■読書
若竹七海のミステリ短篇集『暗い越流』を読みました。
若竹七海の作品は、昨年の6月に読んだ『古書店アゼリアの死体』以来ですね。

-----story-------------
凶悪な死刑囚に届いたファンレター。
差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた!(表題作)
女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり……。(「蠅男」)
先の読めない展開と思いがけない結末――短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。
表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。
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2014年(平成26年)に刊行された短篇集……『蝿男』と『道楽者の金庫』の2篇は葉村晶シリーズの作品です。

 ■蝿男
 ■暗い越流
 ■幸せの家
 ■狂酔
 ■道楽者の金庫
 ■単行本あとがき
 ■解説 近藤史恵

5年前、通りかかった犬に吠えられ飼い主と口論になった末に逆上し車で暴走、死者5名、重軽傷者23名という事件を引き起こした最低の死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた……その差出人・山本優子の素性を調べるよう依頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に失踪し、行方が知れないことをつきとめる、、、

優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家が目と鼻の先であることに気づいた……折しも超大型台風の上陸が迫っていた…(「暗い越流」)。

第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞作『暗い越流』を収録……短篇ミステリの醍醐味と、著者らしいビターな読み味を堪能できる傑作集!!

葉村晶シリーズ2篇にショッキングでダークなオチが用意されたノンシリーズ3篇を挟んだ構成でした。

イチバン印象に残ったのは……ひとりの男性の自己紹介から始まり、そこから一人称で少しずつ情報が開示され、過去の状況、現在の状況、そしてこれから何が起こるのかが徐々に判明する展開の『狂酔』、、、

教会らしき建物に立て籠り、人質らしきシスターらしき人物に話し続けている中で、読み手は時間を遡り恐るべき事件を知る……その中である事件に隠されたゾッとする事実が判明する結末、ママは戻りたいところに戻れたんでしょうねー 最後の1行が強烈な印象を残す作品でした。

その他では、、、

死刑囚にファンレターが届き、ある編集者が死刑囚の弁護士から差出人についての調査を依頼されるという展開の序盤からぐいぐい惹き込まれ、思いがけない結末まで一気に連れていかれ、叙述トリックに心地良く騙されてしまった『暗い越流』、

ある生活雑誌の編集長が行方不明になり、部下の編集者が編集長の行方を捜す……丁寧な暮らしを提唱する生活雑誌の裏にひそむ闇を描き、日々の暮らしの中でのうんざりさや、重要さ、欺瞞のバランスが絶妙に混ざり合っている『幸せの家』、

この2篇は、似たような印象……事件が解決した後に起きることの方が衝撃的で、いやーな、暗い感じの結末が印象的でした。

葉村晶シリーズの2篇は安定の面白さ、、、

本宮波留という女性から亡くなった祖父の家に置きっぱなしの母親の骨壷を取ってきてほしいと依頼され、群馬の伊香保温泉の奥にある建っている崩れかけた洋館に行った葉村晶がトラブルに巻き込まれながらも真相を明らかにする『蝿男』、

こけし収集家で資産家だった後宇多啓介が亡くなり、遺品整理業者と一緒に残された本の選別を任された葉村晶が、貴重品を入れた金庫を開く手がかりのこけしがあるという福島のにある故人の別荘まで探しに行くことを依頼されトラブルに巻き込まれながらも真相を明らかにする『道楽者の金庫』、

似たような展開でしたが……葉村晶が、相も変わらず災難に巻き込まれ、タフで不運な女探偵ぶりを発揮していて愉しめました。

スッキリしなくて後味の悪い結末なんだけど、それが面白いんですよねー 若竹七海らしい巧くて毒のある作風の5篇を愉しめました。
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『阿川佐和子のこの人に会いたい〈9〉』 阿川佐和子

2025年01月06日 20時46分22秒 | ■読書
阿川佐和子の対談集『阿川佐和子のこの人に会いたい〈9〉』を読みました。
阿川佐和子の作品は昨年11月に読んだ『阿川佐和子のこの人に会いたい〈8〉』以来ですね。

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まさにこれこそ、150万部突破のベストセラー『聞く力』の実践編! 
2013年末、ついに1000回を迎える週刊文春の看板連載対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」。
2年に一度刊行されてきた総集編が、初めて電子書籍で登場です。
収録ゲストは糸井重里、稲盛和夫、佐々木則夫、三浦友和、田中慎弥、米長邦雄、瞳みのる、内田裕也、山本富士子、小沢昭一、伊集院静、李登輝、やなせたかしの各氏をはじめとする、まさに多士済々の24人! 
ときにゲストと一緒に笑い、泣き、怒り、そして震災被災地に思いを馳せるアガワ。
ゲストの魅力と、それを引き出すアガワの魅力が詰まった一冊です。
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文藝春秋の発行する週刊誌『週刊文春』連載されている対談『阿川佐和子のこの人に会いたい』の傑作選第9集です……2011年(平成23年)から2012年(平成24年)に掲載された対談の中から選び抜かれた傑作を収録した一冊です。

 ■糸井重里(「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰)
  ~僕らが3、4割余計に頭を使えば、失われたGDPも取り返せるんじゃないかなって思う~
 ■上原ひろみ(ジャズピアニスト)
  ~ライブのとき、私が楽しそうに見えるのは、その瞬間のために闘ってきたからです(笑)~
 ■稲盛和夫(京セラ名誉会長/日本航空名誉会長)
  ~自分で責任を取らない人たちから勝手なことを言われても、私は聞く耳持たない~
 ■佐々木則夫(なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)監督)
  ~今後の課題は、選手たちに、僕が偉大な監督だと認識させることでしょうか(笑)~
 ■是枝裕和(映画監督)
  ~人間、変わらなくたって豊かに生きていける。そう思って映画をつくっている~
 ■小林可夢偉(レーシングドライバー)
  ~今僕がトップチームにいたら絶対表彰台に上れる。ただ、そこにいくのも実力やから~
 ■辰巳芳子(料理研究家・随筆家)
  ~美味しいという感覚は、人間が命を守るために獲得した、一つの能力なんです~
 ■竹内洋岳(プロ登山家)
  ~8000m峰全登頂という目標は、私にとって一つ一つの山の向こうにあったものなんです~
 ■三浦友和(俳優)
  ~(百恵さんに)もう一度歌を歌いたいと言われたら、「どうぞ」と答えるでしょうね~
 ■田中慎弥(作家)
  ~どこかに落ちている筈の次の一行を探してる。一番の理想は、読むように書くことなんです~
 ■米長邦雄(永世棋聖/日本将棋連盟会長)
  ~女房が言ったんです。「あなたは勝てません。若い愛人もいない男が勝てると思いますか」 ~
 ■高橋惠子(女優)
  ~小さいわがままは言わない。でも、大きなわがままはしちゃうんです~
 ■荒井良二(絵本作家・イライストレーター)
  ~絵本を見て、どれだけ想像力を働かせて遊んでもらえるかに命を賭けてるんです~
 ■瞳みのる(音楽・著作家/ザ・タイガース)
  ~解散ライブの後、別れを告げ京都に帰ってから38年間、メンバーの誰とも会いませんでした~
 ■内田裕也(ロックンローラー)
  ~(樹木)希林さんが面会に来たときは、逮捕されたときより怖かったね(笑)~
 ■古賀茂明(元経済産業省官僚)
  ~仙谷さんは、民主党には「政治主導」なんてできないって分かってしまったんだと思う~
 ■山本富士子(女優)
  ~(映画界と訣別した後)市川崑先生に『細雪』のお話をいただいたんです。ところが…~
 ■小沢昭一(俳優)
  ~撮影所の化粧部屋で、川島(雄三)組と黒澤(明)組が一緒になったことがあってね…~
 ■伊集院静(作家) ゲスト相談員 清水ミチコ(タレント)
  ~「じゃあ、ま、君たち素人から答えてみたまえ」(笑)~
 ■二葉百合子(歌手・浪曲師)
  ~(引退を控え)すごく複雑な気持ち。寂しさと安堵と…何て言ったらいいかわからない~
 ■松本允秀(福島県双葉郡葛尾村村長)
  ~村への帰還は今後の環境づくりいかんにかかっている。私は、諦めていません~
 ■李登輝(台湾元総統)
  ~日本人にはいいところがたくさんあるんです。日本人は何一つ自信を失うことなんかない~
 ■やなせたかし(漫画家)
  ~アンパンマンの歌が流れると、被災地の子たちが一斉に歌い出したって。嬉しかったねえ~

連載1000回を迎える『週刊文春』の看板対談『阿川佐和子のこの人に会いたい』傑作選・第9弾……糸井重里、山本富士子、三浦友和、小沢昭一、上原ひろみ、佐々木則夫、やなせたかし―多彩なゲストに、アガワが「聞く力」を発揮!意外な素顔や本音に迫りつつ、震災についても語り合った24篇。

相変わらずですが……錚々たる対談相手に驚きますねー そして、話の引き出し方が巧いんですよねー 阿川佐和子の聞き手としての力量には舌を巻くばかりですね、、、

それぞれの対談者の人生観を垣間見ることができることが本シリーズの特徴ですが……本作は東日本大震災のことについて、多くのコメントが惹き出されていることが特徴に感じましたね。

そんな中でも印象に残ったのは、経営者として尊敬する稲盛和夫や映画監督として好きな是枝裕和、アンパンマンの生みの親・やなせたかし、あとは糸井重里、佐々木則夫、三浦友和かなぁ……このシリーズ、対談者の人生観や価値観がにじみ出てきて、とても興味深いので、機会があれば別な作品も読んでみたいですね。
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『人間の檻―獄医立花登手控え〈4〉』 藤沢周平

2025年01月05日 12時40分34秒 | ■読書
藤沢周平の連作時代小説『人間の檻―獄医立花登手控え〈4〉』を読みました。
『麦屋町昼下がり』、『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』、『風雪の檻―獄医立花登手控え〈2〉』、『新装版 愛憎の檻―獄医立花登手控え〈3〉』に続き、藤沢周平の作品です。

-----story-------------
ドラマ化もされた傑作シリーズ最終巻!
藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の最終巻。

医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。
居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。
死病に憑かれた下駄職人の彦蔵が「30年前に子供をさらった」と告白する。
その時子供を2人殺したという相棒によく似た男を、登は牢で知っていた――。
起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。
『人間の檻』には、「戻って来た罪」「見張り」「待ち伏せ」「影の男」「女の部屋」「別れゆく季節」の6篇を収録。医師としての理想を模索しつつ、難事に挑む登の姿が胸を打つ完結篇。
解説・新見正則(医師)

1982年に中井貴一主演で連続ドラマ化。
そして2016年春に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』の1982年(昭和57年)4月号から1983年(昭和58年)2月号に『青年獄医立花登』というタイトルで連載された後、1983年(昭和58年)に改題して刊行された作品、、、

叔父・小牧玄庵を頼り東北の小藩から江戸へやってきて伝馬町牢屋敷にて獄医を務めることとなった若い医師・立花登が、囚人たちにまつわる事件を得意の柔術と推理で次々に解決していく姿を描く、獄医立花登手控えシリーズの第4作(最終作)です。

 ■戻って来た罪
 ■見張り
 ■待ち伏せ
 ■影の男
 ■女の部屋
 ■別れゆく季節
 ■解説 新見正則

病気の亭主に代って、店を取り仕切る女房おむらに挑みかかった槌屋彦三郎の頸をしめた手代新助は、情状を汲まれて八丈遠島と決まった……新助の身を案ずるおむら、、、

一件落着と見えた事件の裏には、匂うような女の性が(『女の部屋』)……颯爽、柔の冴えで悪に挑む好評シリーズ・獄医立花登手控え、ここに完結!

獄医立花登手控えシリーズの最終巻……第1作から第4作まで、正月休みに一気読みしちゃいましたね。

そんな中でイチバン印象に残ったのは『待ち伏せ』でしたね……立て続けに襲撃され負傷した3人の男のつながりは東の大牢にいたことだった、、、

次に東の大牢から出牢した馬六は出牢直後に襲われ、その場に登が駆けつけたことで軽傷で済んだが、用心して娘の嫁ぎ先である多田屋に移ることになったが、その多田屋で馬六が見たものは……アガサ・クリスティの某名作に近い展開でしたが、ミステリ色が強くて愉しめましたね。

最終話の『別れゆく季節』では、過去の事件(第3作収録の『奈落のおあき』)に絡んで、捕らえられた黒雲の銀次の残党から、登だけでなく、情婦の伊勢蔵を密告し、現在は豆腐屋の女房となったおあきが狙われるという展開……最終話っぽく、シリーズでの主要な登場人物が活躍するエピソードでしたね、、、

事件解決後、獄医を辞し叔父の紹介により蘭医学の勉強のために大坂に向かうことに……ちょーっと、あっさりした幕引きだったかなー 物足りない印象ですが、このさり気なさが藤沢周平作品らしいところかも。

従妹のおちえとの距離は最接近……もう許嫁といっても過言ではないですねー 口やかましい叔母・松江の登に対する態度や扱いの変化もコミカルで面白かったなぁ、、、

これでお終いなのは残念ですね……大坂で修行して帰ってきてからの続篇があってもイイんじゃないかなー と思います。
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『新装版 愛憎の檻―獄医立花登手控え〈3〉』 藤沢周平

2025年01月04日 16時18分19秒 | ■読書
藤沢周平の連作時代小説『新装版 愛憎の檻―獄医立花登手控え〈3〉』を読みました。
『麦屋町昼下がり』、『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』、『風雪の檻―獄医立花登手控え〈2〉』に続き、藤沢周平の作品です。

-----story-------------
娘の病を治したお礼に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢内で殺害される。
悠々と出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆けるが。
藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の3巻目。

医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。
居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。
新しい女囚人おきぬは、顔も身体つきもどこか垢抜けていた。
下男を手なずけ貢がせるしたたかさに、登るは牢に入るきっかけとなる事件を探るが――。
起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。
『愛憎の檻』には、「秋風の女」「白い骨」「みな殺し」「片割れ」「奈落のおあき」「影法師」の6篇を収録。

1982年に中井貴一主演で連続ドラマ化。
そして2016・2017年に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』の1981年(昭和56年)1月号から1982年(昭和57年)1月号に『青年獄医立花登』というタイトルで連載された後、1982年(昭和57年)に改題して刊行された作品、、、

叔父・小牧玄庵を頼り東北の小藩から江戸へやってきて伝馬町牢屋敷にて獄医を務めることとなった若い医師・立花登が、囚人たちにまつわる事件を得意の柔術と推理で次々に解決していく姿を描く、獄医立花登手控えシリーズの第3作です。

 ■秋風の女
 ■白い骨
 ■みな殺し
 ■片割れ
 ■奈落のおあき
 ■影法師
 ■中井貴一インタビュー

柔術と推理で悪に迫る立花登の活躍! 娘の病を治したお礼にと、登に未解決事件の情報を教えてくれた男が牢の中で殺された……大胆な殺しの後、ゆうゆうと出牢した犯人を追い、登は江戸の町を駆ける、、、

家では肩身の狭い居候だが、悪事には敢然と立ち向かう若き牢医師・立花登が、得意の柔術と推理で事件を解き明かす……大人気時代連作第3弾。

本シリーズも3作目、作品の中にどっぷり入り込んで愉しんでいます……本作品では、

女牢に新しく入った性悪女おきぬに骨抜きにされた下男・佐七……登が佐七の危機を救うのですが、結末でおきぬが意外な本心を吐露する展開が印象的な『秋風の女』、

入牢前から家出をしていて長年妻のおむねと離れ離れだった辰平……出牢後におむねの元へ戻るも殺され、骨壺に入った辰平と2人だけの時間を惜しむおむねが健気で、結末後の余韻が心地良い『白い骨』、

登は、稀に見る悪相の男の金瘡を手当てした数日後、小伝馬の牢に夜盗の片割れで金瘡を持つ男が入牢してきたことから、まだ逃げ回っているらしい片割れの夜盗に悪相の男の顔を重ね合わせ不安になるが……登の思い過ごし、ほのぼのとして、ややコミカルな結末が印象的な『片割れ』、

おちせは加賀屋伝助を出刃包丁で刺して入牢したが、刺された本人伝助の嘆願によって軽い刑で済み出牢……牢を出た日、恋仲の杉蔵は現れず、加賀屋の駕籠が現れておちせを押し込めようとして、登はすんでのところでおちせを助けるが、その後おちせの行方が分からなくなる、おちせが母の死に不審を持ったことから始まった事件の意外な結末が愉しめる『影法師』、

あたりが印象に残りましたね……叔父宅での登の存在感も徐々に増してきて、従妹おちえとの関係も良くなってきましたねー 次作が最終巻、どういう結末を迎えるのか愉しみです。
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『風雪の檻―獄医立花登手控え〈2〉』 藤沢周平

2025年01月03日 19時06分08秒 | ■読書
藤沢周平の連作時代小説『風雪の檻―獄医立花登手控え〈2〉』を読みました。
『麦屋町昼下がり』、『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』に続き、藤沢周平の作品です。

-----story-------------
熱血青年獄医が、難事件の数々に挑む・第二弾!
藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の2巻目。

医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。
居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。
ある時、半年以上も牢に入り、今は重い病におかされる老人に「娘と孫を探してほしい」と頼まれる。
登が長屋を訪ねてみると、そこには薄気味悪い男の影が――。
起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。
『風雪の檻』には、「老賊」「幻の女」「押し込み」「化粧する女」「処刑の日」の5篇を収録。
解説・あさのあつこ(作家)

82年に中井貴一主演で連続ドラマ化。
そして2016年春に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』の1980年(昭和55年)4月号から12月号に『青年獄医立花登』というタイトルで連載された後、1981年(昭和56年)に改題して刊行された作品、、、

叔父・小牧玄庵を頼り東北の小藩から江戸へやってきて伝馬町牢屋敷にて獄医を務めることとなった若い医師・立花登が、囚人たちにまつわる事件を得意の柔術と推理で次々に解決していく姿を描く、獄医立花登手控えシリーズの第2作です。

 ■老賊
 ■幻の女
 ■押し込み
 ■化粧する女
 ■処刑の日
 ■解説 あさのあつこ

登と同じ鴨井道場の三羽烏のひとり新谷弥助の身に、いったい何が起こったのか……道場に行くと言って家を出るが、実は深川の地回りの男たちと飲み回っているという、、、

弥助の行方を追う登の前に立ちはだかる悪……その背後に見えかくれする弥助の影──。

獄医立花登が人情味豊かに事件を解く好評シリーズ第2弾。

半年以上も牢に入り、今は重い病におかされる老人に「娘と孫をさがしてくれねえか」と頼まれ、登が長屋を訪ねてみると、そこには薄気味悪い男の影が……一方、柔術仲間の新谷弥助が姿を消し盛り場をさまよっているという噂に、登は半信半疑で行方を追う、、、

登が数々の難事件に挑みつつ、悪の背後に見え隠れする弥助を真っ当な道に戻そうとする展開……前作までは犬猿と思えた従妹・おちえとの関係にも変化があり、今後の2人の関係がどう変わっていくのか気になりますね。

本作品では、登が騙される展開が目立った印象的でした……『老賊』の捨三と『化粧する女』のおつぎにコロリと騙されるんですよねー でも、それに絶望せず、あきらめず、己の迂闊さを恥じながら、落ち込みながらも、一歩ずつ前に進み真実に辿り着こうとする姿に感情移入しちゃいましたね、、、

世に蔓延る矛盾や理不尽と戦いつつ、逃げることなく行動し、救うべき者を救い、罪を犯した者を暗闇から引き摺り出す……『処刑の日』で妾を殺害した罪で死罪となる大津屋助右衛門の無罪を確信した登が処刑を止めようとした姿が印象に残りましたね。

面白いシリーズ物は、読めば読むほど、次が読みたくなりますね……次も、本シリーズの続篇を読んでみようと思います。
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『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』 藤沢周平

2025年01月02日 16時53分05秒 | ■読書
藤沢周平の連作時代小説『春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉』を読みました。
『麦屋町昼下がり』に続き、藤沢周平の作品です。

-----story-------------
TVドラマ化もされた人気時代連作集・第一弾!
藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の1巻目。

医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。
居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。
ある時、島流しの船を待つ囚人に思わぬ頼まれごとをして――。
起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。
『春秋の檻』には、「雨上がり」「善人長屋」「女牢」「返り花」「風の道」「落葉降る」「牢破り」の7篇を収録。
解説・末國善己(時代小説評論家)

1982年に中井貴一主演で連続ドラマ化。
そして2016年春に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』の1979年(昭和54年)1月号から1980年(昭和55年)1月号に『青年獄医立花登』というタイトルで連載された後、1980年(昭和55年)に改題して刊行された作品、、、

叔父・小牧玄庵を頼り東北の小藩から江戸へやってきて伝馬町牢屋敷にて獄医を務めることとなった若い医師・立花登が、囚人たちにまつわる事件を得意の柔術と推理で次々に解決していく姿を描く、獄医立花登手控えシリーズの第1作です。

 ■雨上がり
 ■善人長屋
 ■女牢
 ■返り花
 ■風の道
 ■落葉降る
 ■牢破り
 ■解説 末國善己

江戸小伝馬町の牢獄に勤める青年医師・立花登……居候先の叔父の家で口うるさい叔母と驕慢な娘にこき使われている登は、島送りの船を待つ囚人からの頼みに耳を貸したことから、思わぬ危機に陥った、、、

起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、獄舎に持ちこまれるさまざまな事件を解く……若き青年医師の成長を描く傑作連作集。

島送りになる若者の頼み事……無実を訴える男の正体……御家人毒殺未遂の真相……恋人を刺した女囚の愛憎……等々、さまざまな暗い人間模様が江戸小伝馬町の牢屋に持ちこまれ、心優しい青年獄医・立花登が市井の人情も細やかに、柔術の妙技と推理の冴えを見せて事件を解くシリーズ物で、主人公に気持ちをシンクロさせながら、感情移入できて愉しく読めましたね、、、

そんな中で印象に残ったのは、

不可解な女心、男女の機微が描かれつつ、登場人物の意外な一面が明かされる『雨上がり』と『返り花』、

無関係と思えるエピソードが繋がり邪悪な犯罪計画が浮かび上がる『落葉降る』、

従妹のおちえが誘拐され牢内の登の行動が犯人一味に見抜かれるという窮地からいかにしておちえを救うかという頭脳戦に加え、犯人一味の柔術の達人との対決が愉しめる『牢破り』、

の4篇かな……特に『落葉降る』と『牢破り』はミステリ色も強くて面白かったですね。

次は、本シリーズの続篇を読んでみようと思います。
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『麦屋町昼下がり』 藤沢周平

2025年01月01日 19時15分48秒 | ■読書
藤沢周平の短篇時代小説集『麦屋町昼下がり』を読みました。
藤沢周平の作品は昨年7月に読んだ『未刊行初期短篇 無用の隠密』以来ですね。

-----story-------------
「お助けくださいまし」と夜道を走ってきた女をかばい、片桐敬助は、抜き身の刀をもった男を斬った。
かわせば女が斬られ、受ければ自身が手傷を負ったにちがいない。
しかしその男は、藩内随一、とうたわれる剣の遣い手・弓削新次郎の父だった……。
片桐と弓削、男の闘いの一部始終を、緊密な構成・乾いた抒情で描きだす表題作のほか、「三ノ丸広場下城どき」「山姥橋夜五ツ」「榎屋敷宵の春月」と円熟期の名品を収録。時代小説の味わいを堪能できる贅沢な1冊!
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1987年(昭和62年)から1989年(昭和64年)にかけて連載され、1989年(昭和64年)に刊行された作品で、以下の4篇が収録されています。

 ■麦屋町昼下がり
 ■三ノ丸広場下城どき
 ■山姥橋夜五ツ
 ■榎屋敷宵の春月

不伝流の俊才剣士・片桐敬助は、藩中随一とうたわれる剣の遣い手・弓削新次郎と、奇しき宿命の糸にむすばれ対峙する……男の闘いの一部始終を緊密な構成、乾いた抒情で鮮烈に描き出す表題秀作の他、円熟期をむかえたこの作家の名品を3篇、、、

時代小説の芳醇・多彩な味わいはこれに尽きる……と評された話題の本。

久し振りに時代小説を愉しみました……イチバン好みだったのは『榎屋敷宵の春月』ですね。

万年組頭の寺井家の当主・織之助の妻・田鶴が、自宅の前で襲われていた関根友三郎を助ける……関根は、重役衆に不正があるという親書を携えた江戸屋敷からの使者で、家老の畑中喜兵衛を訪ねるために寺井家を出るが、同行した寺井家の家士・平井重助とともに斬殺される、、、

事件がうやむやになったことを不服に思う田鶴は刺客を探り出すが、次期執政候補となっている織之助は、ごたごたを避けようとして止めるが、田鶴は仇討ちを果すことを誓い、実行に移す……正義感の強い田鶴の思いに共感し、そして、結末のどんでん返しが愉しめる作品でした。

その他に印象に残ったのは『三ノ丸広場下城どき』かな。

次席家老の臼井内蔵助から、密書を携えた使者の護衛を頼まれた粒来重兵衛だったが、それは成功してはならない護衛だった……臼井の目論見通り、護衛は失敗するが、重兵衛は罠にかけられたことを覚る、、、

誰が? 何のために? 真相を探索しつつ、重兵衛は鈍った身体を鍛えなおし始める……その後の重兵衛の活躍と、明るい家庭を築くことが予感できる結末が良かったですね。

藤沢周平の作品は好きですね……次も藤沢周平の作品を読んでみようと思います。
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『裁く眼』 我孫子武丸

2024年12月31日 13時00分32秒 | ■読書
我孫子武丸の長篇ミステリ作品『裁く眼』を読みました。
我孫子武丸の作品は昨年3月に読んだ『探偵映画』以来ですね。

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法廷画家が描いたその絵は危険すぎる――。
美人被告人は残忍な殺人鬼か、それとも聖女なのか?

漫画家になりそこね、路上で似顔絵を描いて生計をたてていた袴田鉄雄。
ある日、テレビ局からの急な依頼を受け、連続殺人事件裁判の「法廷画」を描くことに。
注文通り仕上げた絵が無事に放送に使われた直後、何者かに襲われて怪我を負う。
鉄雄の絵には一体なにが描かれていたのだろうか?
容疑者の美人被告人は残忍な殺人鬼なのか、それとも聖女なのか?
頭の回転の速い姪っ子、警察官、テレビ局、それぞれの思惑と発言が絡み合い、裁判の展開は意外な方向へ。
予測不能、驚愕の法廷サスペンス。
解説・北尾トロ
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2016年(平成28年)に刊行された、連続殺人裁判の進行と法廷画がからみあうサスペンス作品です。

 ■第一章 似顔絵師
 ■第二章 一〇三号法廷
 ■第三章 蘭花
 ■第四章 一〇三号法廷・二日目
 ■第五章 一〇三号法廷・三日目
 ■第六章 一〇三号法廷・四日目
 ■第七章 一〇三号法廷・四日目午後
 ■第八章 判決
 ■解説 北尾トロ

法廷画家の描いた絵が危険を呼び込む! 法廷ミステリー……法廷画家が描いた被告人女性の絵がテレビ放送された直後、彼は何者かに襲われた、、、

絵に描かれた何が危険を呼び込んだのか? 展開の読めない直球・法廷サスペンス。

主人公・袴田鉄雄は、漫画家志望だがうまくいかず、路上で似顔絵を描いている……似顔絵で生活できるほどの稼ぎはないが、本格的に学んでいるため画力はかなり高く、観察力やスピードも似顔絵描きで鍛えられている、、、

そんな鉄雄にテレビ局から法廷画の仕事が舞い込む……いつも頼んでいる画家たちが食中毒で倒れ、画力を見込まれてピンチヒッターに指名されてしまう。

鉄雄も実際に裁判を見るのは初めてだから、知識のない読者でも鉄雄と一緒に法廷に足を踏み入れることで、違和感を抱くことなく、自然に法廷劇に入り込んでいきます……そして、どんな事件なのか? 被告人はどういう人物なのか? 少しでも良い絵を描きたい鉄雄が真剣に考える姿に自然と気持ちがシンクロしていき、とても読みやすい描き方がされていましたね、、、

そんな法廷画を描く羽目になった鉄雄が、法廷での様子を描くだけだったはずの事件そのものに巻き込まれ、姪の蘭花等とともに真相に辿り着こうとするプロセスを感情移入しながら愉しめました……平和な日常を、法廷という非日常が徐々に侵食していくという展開、理由は鉄雄の描いた絵にあるらしいが、本人に思い当たることはないのに、自分だけでなく、法廷で知り合った同じく法廷画を描く聖護院桜(桜田聖子)、そして蘭花に忍び寄る危機! 

理由がわからないだけに怖いですねー 愉しめました……自分も過去に色覚異常と診断されたことがあるので、印象に残る真相でしたね。
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『記憶の中の誘拐 赤い博物館』 大山誠一郎

2024年12月30日 22時36分40秒 | ■読書
大山誠一郎の連作ミステリ作品『記憶の中の誘拐 赤い博物館』を読みました。
『赤い博物館』に続き、大山誠一郎の作品です。

-----story-------------
緋色冴子シリーズ第二弾。文庫オリジナルで登場!
赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、未解決事件に挑むシリーズ第二弾。
文庫オリジナル。
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2016年(平成28年)から2021年(令和3年)にかけて文藝春秋の雑誌『別冊文藝春秋』、『オール讀物』に掲載された後、2022年(令和4年)に刊行された作品、、、

捜査中に大失態を犯してしまい警視庁捜査一課から警視庁付属犯罪資料館・通称「赤い博物館」に左遷された寺田聡巡査部長が、いつも無表情でコミュニケーション能力皆無といういわくつきの美女で、ずば抜けた推理力をもつ赤い博物館館長の緋色冴子とともに、過去の事件の遺留品や資料を元に、未解決事件(コールドケース)の再捜査を行い解決するシリーズの第2作で、以下の5篇が収録されています。

 ■夕暮れの屋上で
 ■連火
 ■死を十で割る
 ■孤独な容疑者
 ■記憶の中の誘拐
 ■解説 佳多山大地

未解決事件などの捜査書類を収蔵する通称“赤い博物館”の館長・緋色冴子……遺留品や手掛りを元に、ずば抜けた推理力で事件を幾つも解決してきた、、、

ある日、部下の寺田から相談されたのは、26年前に起きた奇妙な誘拐事件……犯人と目されたのはその子の親だったようで―表題作他、予測不可能なミステリ全5篇。

本作品も面白かったですねー 正確な観察力や聞き取りが優秀な元警視庁捜査一課の刑事で助手の寺田聡が情報を収集し、優秀なキャリアでありながらエリートコースから外れ犯罪資料館の館長を長年務め類稀な推理力を持つ緋色冴子……このコンビが未解決事件(コールドケース)の真相を暴くという展開が愉しめました、、、

前作では勤務先である犯罪資料館から一歩も出ずに事件を解決する安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)を決め込んでいた緋色冴子が、意外や本作品では“頼れる助手”寺田聡とともに再捜査の聞き込みや容疑者との直接対決の場に赴くなど行動に変化があるのも新鮮でしたね……5篇とも面白かったのですが、あえて言うなら特に印象に残ったのは、

23年前、校舎の屋上で2年生の女子高生が殺害された……彼女は、その直前に「先輩」への募る想いをに告白していたが、彼女を殺した「先輩」とは誰なのかを推理する『夕暮れの屋上で』、

24年前に東京都西部地域で連続して起きた放火事件……神出鬼没の放火魔は、標的にした住宅は跡形なく燃やしても、火をつけてすぐ「火事だ。逃げろ」と電話を掛けて死人は出さないように配慮していたのだが、その目的は何で、放火魔は誰なのかを推理する『連火』、

15年前、赤羽の河川敷で起きた、10個の部位に切断されたバラバラ殺人事件! そして、何の因果か被害者の妻は、夫の死体発見の前日、電車に飛び込んで非業の死を遂げていた……死体をバラバラにした理由探しと殺人犯は誰なのかを推理する『死を十で割る』、

の3篇かな……緋色冴子は証拠品の声を聴き、当時の関係者に新たな問いを放って真相を見抜く展開が愉しめましたね。

過去の事件という枠組みと周到な伏線を活かしつつ、意外な真相を読者に気付かせずに示す技量は抜群でしたねー もっと、もっとシリーズ作品を読みたいところですが、現時点で刊行されている作品は2作品のみのようです……続篇を期待しています。
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『赤い博物館』 大山誠一郎

2024年12月29日 22時22分40秒 | ■読書
大山誠一郎の連作ミステリ作品『赤い博物館』を読みました。
大山誠一郎の作品は今年6月読んだ『『アリバイ崩し承ります』 』以来ですね。

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本格ミステリ大賞受賞作家がミステリ人生のすべてを賭けた警察小説!

超ハイレベルで奇想天外、予測不能なトリック駆使の本格ミステリ!

警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力は皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美女。
そんな冴子の手足となって捜査を行うのは、部下の寺田聡。
過去の事件の遺留品や資料を元に、難事件に挑む二人が立ち向かった先は――。
予測不能なトリック駆使、著者渾身の最高傑作! TVドラマ原作

「読者に対して手がかりを堂々と提示しながらも真相を当てさせない」という
難題を見事にクリアしている。 ――飯城勇三「解説」より
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2013年(平成25年)から2015年(平成27年)にかけて文藝春秋の雑誌『つんどく!』、『オール讀物』に掲載された後、2015年(平成27年)に刊行された作品、、、

捜査中に大失態を犯してしまい警視庁捜査一課から警視庁付属犯罪資料館・通称「赤い博物館」に左遷された寺田聡巡査部長が、いつも無表情でコミュニケーション能力皆無といういわくつきの美女で、ずば抜けた推理力をもつ赤い博物館館長の緋色冴子とともに、過去の事件の遺留品や資料を元に、未解決事件(コールドケース)の再捜査を行い解決するシリーズの第1作で、以下の5篇が収録されています……2016年(平成28年)にTBS系で松下由樹主演によりテレビドラマ化さているらしいですね。

 ■パンの身代金(『赤い博物館』を改題)
 ■復讐日記
 ■死が共犯者を別つまで
 ■炎
 ■死に至る問い
 ■解説 飯城勇三

迷宮入り事件の綻びを探せ! ミステリ巧者の大傑作……『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を射止めた著者がミステリ人生のすべてを賭けて贈る渾身作、、、

キャリアながら《警視庁付属犯罪資料館》の館長に甘んじる謎多き美女と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたい巡査部長……図らずも「迷宮入り、絶対阻止」に向けて共闘することになった2人が挑む難事件とは――。

予測不能の神業トリックが冴え渡る、著者初の本格警察小説!

面白かったですねー 正確な観察力や聞き取りが優秀な元警視庁捜査一課の刑事で助手の寺田聡が情報を収集し、優秀なキャリアでありながらエリートコースから外れ犯罪資料館の館長を長年務め類稀な推理力を持つ緋色冴子……このコンビが未解決事件(コールドケース)の真相を暴くという展開が愉しめました、、、

5篇とも面白かったのですが、特に印象に残ったのは、

犯人が残した日記から浮かび上がった2つの殺人事件の顛末……真犯人たる条件を当てはめて再検討することで事件を様相が一変する『復讐日記』、

交通事故の被害者が死の間際に告白した交換殺人……単純と思われた2つの殺人事件の構図が一変する『死が共犯者を別つまで』、

の2篇ですかね……面白かったので、次は続篇の『記憶の中の誘拐 赤い博物館』を読もうと思います。
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