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岡上淑子《長い一日》、 「シュルレアリスム100年」 - 2024年12月のMOMATコレクション(東京国立近代美術館)

2024年12月16日 | 東京国立近代美術館常設展
 今期(9/3〜12/22)のMOMATコレクション展。
 後期(11/12〜)から、岡上淑子のフォト・コラージュ作品1点が展示されている。
 
岡上淑子(1928-)
《長い一日》
1951年、28.9×26.2cm
東京国立近代美術館
 
 「シュルレアリスム100年」と題する5室にて、壁面ではなく、部屋内に立つ柱での展示である。
 
 その柱には、反対側に瀧口修造の作品、左側に瑛九の作品、右側にシュルレアリスム年表(上の画像)も。
 
 郊外の住宅地を背景に、上半身が家に置き換えられた女性、花束に置き換えられた女性、窓から顔を出す女性が表される。
 女性の上半身が家になっているというイメージは、早くはルイーズ・ブルジョワが《ファン・メゾン》(1946-47年)として絵画や版画にしており、その後もフェミニスト作家ローリー・シモンズの写真作品《歩く家》(1989年)などに現れて、家庭での役割のみを期待されがちな女性の姿を表現してきた、という(池上裕子「自由と解放のヴィジョン-岡上淑子のフォトコラージュ」(河出書房新社『岡上淑子全作品』所収)より)。
 
 
 
 5室のメインは、シュルレアリスムの代表的な作家マックス・エルンスト(1891-1976)。
 東京国立近代美術館は、エルンストの油彩によるフロッタージュ作品を「新収蔵」、その御披露目でもある。
 
「新収蔵作品」
マックス・エルンスト
《砂漠の花(砂漠のバラ)》
1925年、75.0×59.0cm
東京国立近代美術館
 
 1925年だから、ブルトンが『シュルレアリスム宣言』を発表した翌年の制作。
 フロッタージュとは、凹凸のある物質の上に支持体(紙)を押し当てて、上から擦り出して転写する技法。偶然に現れた形を通して無意識を表出させるのだという。
 本作は、「ブルトンが著した『シュルレアリスムと絵画』(1928)をはじめ、様々な媒体に取り上げられた作品で、シュルレアリスムの絵画を代表する作例の一つと言える」との説明。
 
 あわせて、岡上が影響を受けたというエルンストのコラージュ作品
 
マックス・エルンスト
《マルスリーヌ・マリー(『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』より)》
1929-30年、15.2×12.5cm
東京国立近代美術館
 
1点ほか、既収蔵作品計3点も展示される。
 
 
 
 日本のシュルレアリスム作品も展示される。
 岡上作品もその一つであるが、岡上作品以外は、ほぼ戦前・戦中の制作である。
 以下3選。
 
北脇昇(1901-51)
《独活》
1937年、117.0×74.0cm
東京国立近代美術館
 
 ウドは漢字で書くと「独活」。「真夏頃になると2m以上の大木となり大きな葉を広げ風が吹かなくても動いているように見える」ことから、ひとりでも・動く、ということであるらしい。
 
 
浅原清隆(1915-45)
《郷愁》
1938年、111.1×148.8cm
東京国立近代美術館
 
 静寂で叙情的な作品。
 1930年代後半、画学生たちの前衛運動が活発化するが、浅原はその中心的・象徴的な存在と言えるらしい。
 2度目の出征で、ビルマで行方不明となる。
 
 
飯田操朗(1908-36)
《風景》
1935年、162.5×228.0cm
東京国立近代美術館
 
 鮮やかな色彩が印象的な作品。
 岡上作品と、休憩椅子を挟んで向かい合う形で展示される。
 飯田は、前衛画家として将来を期待されていたが、28歳で結核のため亡くなる。
 
 
 
 岡上淑子のフォト・コラージュ。
 20歳代、1950〜56年の7年間に制作した奇跡のフォト・コラージュ。
 2019年の東京都庭園美術館での個展を見て、虜になってしまった。
 以降今日までの6年間に見た作品は、東京国立近代美術館所蔵の3点にとどまっている。
 その間、2022年の福岡市美術館「藤野一友と岡上淑子」展が開催された。作品リストによると、国内所蔵のコラージュ作品が69点(高知県立美術館32点、東京国立近代美術館18点、東京都写真美術館8点、栃木県立美術館8点、個人蔵3点)が出品されたようだ。
 福岡は遠いと見送ったが、2024年にカラヴァッジョが来たら2度も日帰り遠征している。カラヴァッジョ後だったなら、迷わず遠征しただろう。
 作品をまとめて見る機会が欲しいもの。


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