「天狗像・幽霊像」の公開
2023年3月8日〜3月26日
中野区立歴史民俗資料館
中野区立歴史民俗資料館を初訪問。
お目当ては、かつて哲学堂公園の哲理門に安置されていたという天狗像と幽霊像。
ネットで画像を見て気になったもの。
特別公開期間に滑り込み訪問する。
西武新宿線沼袋駅から北の方向へ徒歩約10分、新青梅街道に面して当資料館がある。入場無料。
お目当ては入館してすぐ目の前に登場、1階の特別展示室の前面スペースに展示されている。
中野区にある哲学堂公園は、哲学者で、東洋大学の創設者である井上円了(1858〜1919)が建設。
1903年に建設が始まり、翌1904年に最初の建物である四聖堂が落成、1918年頃にはほぼ現況に近い形となったという。
なお、私自身は、哲学堂公園に行ったことはない。
哲学堂公園の正門にあたる哲理門に安置されているのが、「天狗像」と「幽霊像」。
井上円了の注文により、彫刻家・田中良雄が1909-10年(明治42-43年)に制作したもの。
哲理門に安置されて以来約110年。
二つの木像は、埃まみれ。
天狗像は、右腕が欠損。
幽霊像は、両手が欠落、片手が歴史民俗資料館に保管。
2018年度(平成30年度)に、中野区は、この二つの木像の復原修理を行う。
解体して洗浄、もとの姿に戻す。
哲理門に安置されて以来、初の修理であったという。
また、修理に際して3Dスキャンデータ撮影と、塗料の化学分析を行い、これを元にして、当時の彩色を施した二代目を制作。
現在、哲理門にはこの二代目が安置され、初代のオリジナルは、歴史民俗資料館に保管される。
《天狗像》
田中良雄(1909-10年製作)
哲理門の右側に納められていた木彫像。
2018年度の修復で、失われていた右腕が復元された。
《幽霊像》
田中良雄(1909-10年製作)
哲理門の左側に納められていた木彫像。
三遊亭円朝ゆかりの全生庵(台東区)と、良雄の弟・百額はつながりがあったことから、幽霊像は、全生庵の幽霊図を参考にしたものかと推測される。
長らく両手が欠落し、片手は当館に保管されていたが、2018年度に修復・復元された。
田中良雄(生没不詳)
四谷荒木町(現新宿区)の鍛治、田中青竜正久の三男に生まれる。
江戸時代から八代続く鍛治の家系で、兄は有栖川宮の相手鍛治を務めた刀工卍政次、弟は仏画師の百嶺。
東京美術学校(現東京芸術大学)を卒業、高村光雲に師事。
哲理門に安置された天狗像・幽霊像をはじめ、哲学堂公園内の石彫り像や石碑の多くを手がけたという。
私的には、幽霊像。
なお、この幽霊像の足。ない、というべきか、着物に隠されている、というべきか。
今回の公開期間は半月強であるが、これまでも修理完了後に公開されているようで、2023年度も、10月21日〜11月5日の公開が予定されている。
コメントありがとうございます。
記事にも書きましたが、今年の秋にも半月ほど公開されるようですので、よろしければ是非。