東京でカラヴァッジョ 日記

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【前期】「江戸絵画お絵かき教室」展(府中市美術館)

2023年03月24日 | 展覧会(日本美術)
春の江戸絵画まつり
江戸絵画お絵かき教室
2023年3月11日〜5月7日
(前期:〜4月9日、後期:4月11日〜)
府中市美術館
 
 府中市美術館の恒例企画「春の江戸絵画まつり」。
 今回が20回目を迎えるという。
 
 今回のテーマは「江戸絵画お絵かき教室」。
 
 展覧会名やメインビジュアル作品の印象から、子ども向けかなあ、いたずら書き風の軽妙なタッチの作品を集めているのかなあ、と勝手に想像していたが、全く違った。
 
 これまで、さまざまな切り口で江戸時代の絵画を紹介してきましたが、どれも「美術史」の視点から作品を眺める展覧会でした。
 本展は「描く」ということに着目した初めての試み。
 画材や技法の基礎知識から描き方のコツまで、さまざまな側面から江戸絵画の「描く」に迫ります。
 
 西洋式のデッサンではなく、江戸絵画を教科書にして絵を学ぶ。
 
 展示作品は、これまでと同様、「春の江戸絵画まつり」らしい、若冲・応挙・蘆雪などの人気絵師の作品を含む「江戸絵画」の優品・佳品が並んでいて、楽しく鑑賞する。
 
 ただ、順路が難解。
 
 
【本展の構成】
 
1 四大テーマに挑戦
(1)動物を描く
(2)人を描く
(3)景色を描く【前期】
 ✳︎    花は【後期】
2 画材・技法・表具
(1)画材
 ・墨/絵具/濃彩と淡彩/金/紙と絹
(2)技法
 ・付け立て/滲み・たらし込み/筋目描き/裏彩色/江戸時代の油絵
(3)表具
3 江戸時代の画家はどうやって学んだのか?
(1)中国に学ぶ
(2)雪舟に学ぶ
(3)応挙に学ぶ
(4)粉本に学ぶ、粉本を作る
(5)オランダ本に学ぶ
4 江戸絵画はヒントの宝庫
(1)国芳に劇画を学ぶ
(2)空を描く
(3)全部を描かない
(4)少ない色でカラフルに見せる
(5)塗り残して表す
(6)ぽつねんと描く
(7)見たままを描かなくてよい
(8)お手本はいらない
 
 
【特に眺めた作品】
 
メインビジュアル&トップバッター
 
長沢蘆雪
《唐子遊図屏風》
 お絵かきで、ふざけて遊ぶ子どもたち、長い巻紙に大作を描く子も。
 
 
応挙の犬「うるうる描法」
 
円山応挙
《雪中狗子図》
 漫画のヒロインのような、ルノワールの描く少女のような、大きくてキラキラしている瞳が、真っ直ぐこちらを見つめている。
 と見えたのは、私の視力の関係らしい。
 至近距離で見ると、黒毛の子犬は、全くこちらを見ていない。前足の下にいる白犬を見ている。
 
 
千葉市美術館「亜欧堂田善」展には非出品の作品2点が登場
 
亜欧堂田善
《墨堤観桜図》府中市美術館寄託
 黒々とした中央の松が印象的とされる本作。
 しかし、その黒々さは、田善が意図したものではなく、絵の具の変色によるものだという。
 確かに、緑であるはずの他のものも、皆黒い。
 本作を正確に模写した作品(写真パネル展示)では、中央の松はきちんと緑色をしている。
 
亜欧堂田善
《甲州猿橋之眺望》府中市美術館
 日本三奇橋の一つ、山梨県大月市にある猿橋。
 実際は木造の橋だが、石の橋として描かれる。
 景観も、実際の狭い渓谷から全く違うものへと変えている。
 
 
中国に学ぶ/雪舟に学ぶ
 
土佐光起
《鶉図》
 うまい。本物の中国絵画のよう。
 
雪舟等揚
《倣夏珪山水図》
 室町時代の雪舟も登場。
 1933年(昭和8年)の非公開の売り立て以来、個人蔵となり行方不明となっていたが、2017年に再発見されたという作品。
 
 
 その他、以下などを楽しむ。
 
伊藤若冲《花鳥魚図押絵貼屏風》
 「筋目描き」
司馬江漢《泥炭堀図》
 「オランダ本に学ぶ」
狩野山楽《竜虎図屏風》
円山応挙《虎皮写生図》
 「虎の研究」
長沢蘆雪《象背戯童図》
 「全部を描かない」
与謝蕪村《田楽茶屋図屏風》
 「お手本はいらない」
 
 
 総出品数は182点。
 大半が前期後期入替えとなるほか、前期の前半後半、後期の前半後半のみの展示もある。
 
 春の江戸絵画まつり恒例、観覧券を購入すると「2度目は半額!」の割引券が付いてくる。


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