
写真家・奈良原一高(1931〜2020)。
氏の初めての写真集となる『ヨーロッパ・静止した時間』は、1967年5月に鹿島研究所出版会より刊行された。
1962〜65年の欧州滞在中に撮影した写真約135点が収録される。
「目の前のヨーロッパを現実の存在としてだけでなく、独自の視点によって日本人の心象風景として捉えた代表作」とされているらしい。
今期(2023/3/17〜5/14)の「MOMATコレクション」展示。
2階9室は、「奈良原一高「ヨーロッパ・静止した時間」」と題し、「ヨーロッパ・静止した時間」より16点が展示されている。
スペイン、フランス、イギリス、
もあるなか、私的好みから、以下では、イタリアで撮影した作品を掲載する。
「ヨーロッパ・静止した時間」より
《塔》


《化石》




《秘密》

《静止した時間》


ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ナポリ、ポンペイを撮影した8点。
プラス、最後の1点のみ、スペイン・トレドである。
写真集『ヨーロッパ・静止した時間』は、2022年10月に復刊ドットコムから新装版が刊行されている。55年ぶりの復活とのこと。
2022年12月に開館70周年を迎えるにあたり、写真コレクションの展示では、昨年5月より、その歴史をふりかえりながら作品を紹介してきました。
最終回となる今期は、近年収蔵した作品から、奈良原一高の「ヨーロッパ・静止した時間」を紹介します。
奈良原の才能が注目されたのは、1956年の初個展「人間の土地」でした。
初期作では、戦後の日本という特異な歴史的状況にとりくんだ奈良原は、62年に渡欧、戦後の日本とはまったく異なる、重厚なヨーロッパ文明と対峙することになります。
3年近い滞在の成果は、67年に出版された写真集に結実しました。
2005年に病により活動を休止した奈良原は、その時点で主要作の多くについてプリント制作の基準となるセットを手元においていました。
その散逸を防ぐため、当館では2008年度より収蔵に着手、約500点に及ぶその作品群は、当館の写真コレクションを代表するものとなっています。
なかでも2020年度受贈の本作は、66年に当館で開催された「現代写真の10人」展の出品作でもあり、そこから半世紀を経てコレクションに加わることとなったのです。