東京都美術館で開催中の「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展」。
アルビン・エッガー=リンツの作品が、第4章「クリムトとウィーンの風景画」において、5点出品されている。
アルビン・エッガー=リンツ
《エッソ渓谷の牧歌的風景》
1911年、レオポルド美術館

アルビン・エッガー=リンツ
《祈る少女 聖なる墓、断片II》
1900/01年、レオポルド美術館

私的には初めてその名を認識する画家。
アルビン・エッガー=リンツ(1868〜1926)
東部チロルのリエンツ近郊のシュトリーバハに生まれる。
教会画家だった父から初めて絵の手ほどきを受けた後、1884年から93年までミュンヘン・アカデミーに学ぶ。1899年、ウィーンに移り住むまでミュンヘンに自身のアトリエを構える。
1911年から翌年にかけてはヴァイマールの造形芸術大学で教鞭をとる。以後は南チロルに永住する。
ホドラーなど世紀末美術の影響も受けつつ、歴史的な主題、あるいはチロルの風景、農民などを描く。
アルビン・エッガー=リンツ
《昼食(スープ、ヴァージョンII》
1910年、レオポルド美術館

質素な服装の労働者たちのつつましい食事風景。5人の人物は会話を交わすでも、談笑するでもなく、ただ黙々と食べ、あるいは疲れきったような面持でもの思いにふけっている。
転機は第一次世界大戦。
最初は兵士として、1916年からは従軍画家として赴いた第一次世界大戦は、彼の人生や芸術的発展にとって強烈な体験となる。
この時期の絵には、狂気が時代を超えて表現され、それらは今日に至るまで戦争の記念碑的なドキュメントになっている。
以下、本展非出品の作品。
アルビン・エッガー=リンツ
《フィナーレ》
1918年、レオポルド美術館

一面に、こわばりねじれ歪んだ負傷者あるいな遺体が、無造作に横たわる。
アルビン・エッガー=リンツ
《名もなき者たち》
1916年、ウィーン軍事史博物館

上半身を倒して重々しくゆっくりと前進する無名の一兵卒たちの姿。
アルビン・エッガー=リンツ
《戦下の女たち》
1922-23年、リンツ市立博物館

おそらく戦争やスペイン風邪で夫や息子を奪われた貧しい女性たち。
戦争の悲惨な現実を描くこの3点は、岡田温司氏の著書『反戦と西洋美術』ちくま新書で知る。
私的にはこの画家の、戦争を主題とする作品も実見したいもの。