金融庁は、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)を、2016年12月15日に公表しました。
「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言(2016年3月公表)において、大手上場企業等の監査を担う監査法人の組織的な運営において確保されるべき原則を規定した「監査法人のガバナンス・コード」の策定が盛り込まれたことから、とりまとめられたものです。
適用される監査法人については、以下のように述べています。
「本原則は、大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されているが、それ以外の監査法人において自発的に適用されることも妨げるものではない。」
また、本原則の適用については、コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する)の手法によることが想定されています。
「監査法人のガバナンス・コード」は以下の5つの原則のほか、22の指針から構成されています。
原則1 監査法人は、会計監査を通じて企業の財務情報の信頼性を確保し、資本市場の参加者等の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与する公益的な役割を有している。これを果たすため、監査法人は、法人の構成員による自由闊達な議論と相互啓発を促し、その能力を十分に発揮させ、会計監査の品質を組織として持続的に向上させるべきである。
原則2 監査法人は、会計監査の品質の持続的な向上に向けた法人全体の組織的な運営を実現するため、実効的に経営(マネジメント)機能を発揮すべきである。
原則3 監査法人は、監査法人の経営から独立した立場で経営機能の実効性を監督・評価し、それを通じて、経営の実効性の発揮を支援する機能を確保すべきである。
原則4 監査法人は、組織的な運営を実効的に行うための業務体制を整備すべきである。また、人材の育成・確保を強化し、法人内及び被監査会社等との間において会計監査の品質の向上に向けた意見交換や議論を積極的に行うべきである。
原則5 監査法人は、本原則の適用状況などについて、資本市場の参加者等が適切に評価できるよう、十分な透明性を確保すべきである。また、組織的な運営の改善に向け、法人の取組みに対する内外の評価を活用すべきである。
お手本になっていると思われる英国の監査事務所ガバナンス・コードはこちら(コード本文は右端のリンクから)。
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Revised UK Audit Firm Governance Code sharpens purpose and enhances transparency
英国のコードを見ると、付録1で独立性(independent non-executivesと監査クライアントの間の独立性とindependent non-executivesと監査事務所との間の独立性)についてふれていますが、今回の案では特にふれていない模様です。
これは、今回の案に当てはめると、例えば、監督・評価機関に、監査関与先代表として、監査クライアントの役員(現役役員がだめならOBなど)を迎えていいのかというような問題です。さすがに役員はだめだとしても、監査クライアントの株式を保有していてもいいのか、子弟が監査クライアントに勤務している場合は?など、様々な問題がありえます。
先日の当サイトの記事でも少しふれました。
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