会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

岸田首相の言う「ガバナンス改革強化」は「本気」なのか、海外投資家へのリップサービスなのか(現代ビジネスより)

岸田首相の言う「ガバナンス改革強化」は「本気」なのか、海外投資家へのリップサービスなのか

岸田首相は、ニューヨーク証券取引所でのスピーチで「コーポレートガバナンス改革」を強調しているけれども、就任当初はそんんことはほとんどいっていなかった、本気でやるつもりがあるのかという解説記事。おなじみの磯山記者(今は大学教授)が書いています。

「就任以来、岸田首相の正式な記者会見や国会演説では、「コーポレートガバナンス」それに付随する「株主」という言葉は、まったくと言っていいほど使われて来なかった。就任当初こそ、「株主」について何度か触れたが、これは安倍内閣が進めたガバナンス改革が「株主利益偏重」だったものを見直し、従業員への「分配」を増やすべきだという脈絡で語られていた。...

さらに10月8日所信表明演説でも、「企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要です。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進めます」と語っていた。

ちなみに四半期開示の見直しというのは、四半期決算の開示を企業に求めていることが短期的な業績追求につながっているので、開示を止めるべきだという岸田首相の一部のブレーンの主張に沿っていた。国際的に定着している四半期開示のルールに背を向けるなど、株主や投資家が求める「ガバナンス改革」とはむしろ逆向きに進もうとしていた。」

人的資本ということも言いはじめました。

「「株主利益よりも従業員利益へ」という岸田流ガバナンス改革は影を潜め、2021年末あたりからは、「従業員への分配が株主のためにもなる」という主張に変わった。

2022年1月17日の施政方針演説では、「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します」と述べていたが、それでも「あわせて、四半期開示の見直しを行います」と付け加えていた。」

その後、ロンドンやニューヨークでのスピーチでは、ガバナンス改革を言い出して、たしかに、首相の本心はどこにあるのかと不安になります。話は少しずれますが、非財務情報開示拡充は、気候変動関連を優先するとみられていたのに、急に人的資本開示が強調されるようになるなど、首相の方針の影響はすでに出ています。

ちなみに、先日の金融審議会総会では四半期開示見直しを進めることが報告され、今週開催予定のディスクロージャーワーキング・グループで詳細な検討が始まるようです。見直しとガバナンス強化の間をとって、上場企業に対する中間監査復活などということにならないとよいのですが...。(中間監査は日本独自の制度なので、海外投資家へのアピールにはならないでしょう。やめておいた方がよいと思います。)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事