日本公認会計士協会は、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その5)」を、2020年5月8日に公表しました。
会社法の監査意見の形成にあたり、監査意見及び経営者確認書に関する留意点を取りまとめたものです。
監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」、会社法、会社計算規則などを参照しています。
以下のような内容です(全10ページ)。
1.除外事項付意見(監査範囲の制約)に関する留意点
2.経営者確認書に関する留意事項
1では、
・除外事項の判断(重要性と広範性)に関する留意点
(その判断により限定意見か意見不表明となる)
・除外事項付意見を表明する場合の留意点
(除外事項付意見(意見不表明を含む)を表明した場合の会社法上の取扱いや、会社計算規則における会計監査報告の通知期限の定めなど)
・除外事項の記載に当たっての留意点
(2019年の監査基準改訂を参照)
を説明しています。
また、「監査範囲の制約による限定付適正意見」(棚卸資産の実地棚卸の立会が実施できなかった例)と、「監査範囲の制約による意見不表明」(重要な構成単位の財務情報について十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった例)の監査報告書文例を示しています。
2では、「新型コロナウイルス感染症が事業に与える影響とそれらの影響を財務報告においてどのように取り扱ったかについて、経営者に対し書面による陳述を要請することが考えられる」として、追加する文言の例を挙げています。
経営者確認書の入手方法についても、例外的な方法を示しています。
「監査報告書日に署名又は記名捺印のある原本を入手できない場合には、日付と署名又は記名のある経営者確認書を改竄不能な PDF 等で入手し、後日、署名又は記名捺印のある経営者確認書の原本を入手することも考えられる。」
ただし、この場合、「例えば経営者から直接電子メールを受領することや電話での直接確認等の手続が必要となる」としています。
(4ページで「新型コロナウイルス感染症の影響による場合の意見不表明については(上場廃止の)対象外となることが明確化された」とあるのですが、4月の上場規程改正では、債務超過の猶予期間の延長しか規定されていないようです。どこかで見落としているのかもしれませんが...)
当サイトの関連記事(「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」について)
その2(「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その3)」について)
その3(「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」について)
その4(「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その1) 」について)←監査手続(代替手続など)についてふれているのはこれです。
(補足)
(その5)は、5月15日に更新されています。
「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その5)」 の更新について(日本公認会計士協会)
「5月15日付けで「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(法務省令第37号)が公布、同日から施行されたことを踏まえて、5月15日に更新いたしました」
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